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いま注目されている「オルタナティブスクール」とは? ――自分らしく学び、自らの未来を切り拓く力を育む

一般財団法人 オルタナティブスクール・ジャパンの代表理事であり、オルタナティブスクール「湘南ホクレア学園」の創設者でもある小針一浩さん
この記事のPOINT!
  • 「オルタナティブスクール」とは、子どもの興味や関心、特性、学ぶペースに合わせた「多様な学び」の選択肢の1つ
  • 不登校の増加は「子どもの問題」ではなく、「画一的な教育制度と多様化する子どもたちの間に生じるギャップ」が背景にある
  • 子どもが自分に合った学びを選ぶためには、教育の選択肢を増やすだけでなく、それを支える制度や環境づくりが必要

取材:日本財団ジャーナル編集部

「オルタナティブスクール」をご存知ですか?

現在、「学びの選択肢」を社会全体で考え直そうという動きが広がっています。そのなかの1つが、公立学校でも私立学校でもない「第3の学び場」とされる「オルタナティブスクール」です。スクール独自の教育理念に基づき、子ども一人一人の個性を尊重した多様な学びのスタイルを提供しています。

一般財団法人 オルタナティブスクール・ジャパンの代表理事であり、湘南ホクレア学園(外部リンク)の創設者で理事長も務める小針一浩(こばり・かずひろ)さんは、「優秀な子になるのではなく、最高の自分になる教育」を理念に掲げ、子どもたちが自分らしく未来を切り拓くための学びを実践しています。

さまざまな背景を持つ子どもたちが自分に合った学びを選べる社会にするために、必要なこととは何か。小針さんの取り組みを通して、そのヒントを探ります。

取材時の湘南ホクレア学園では、寄港式(終業式)で行う発表の練習が行われていた

学びの選択肢を広げるオルタナティブスクールの役割

――小中学校の不登校児童生徒数(※1)が過去最多を更新し続ける背景には、どのような要因があると思われますか。

小針さん(以下、敬称略):不登校は「子どもの問題」ではなく、「制度と器の問題」だと考えています。

日本の学校制度は長い間、同じ年齢の子どもが、同じ時間に、同じ教室で、同じ内容を、同じ方法で学ぶことを前提としてきました。しかし、子どもたちの興味関心や特性、学ぶスピード、生き方がこれほど多様になった今、その器のままでは合わない子どもが増えるのは自然なことです。

海外に目を向けると、子どもの幸福度が高いとされるオランダやデンマークでは、公教育とオルタナティブ教育の双方が公的に支援され、子どもの個性や主体性を尊重し、一人一人の関心や能力、学習上のニーズに応じた個別最適な学び(※2)が重視されています。

日本も海外と同じ制度をそのまま取り入れるべきだとは考えていませんが、これらの国々に共通しているのは、「学校に子どもを合わせる」のではなく、「個性を生かす多様な学びをデザインする」という発想が社会に根付いている点だと感じています。

――一般財団法人 オルタナティブスクール・ジャパン(以下、ASJ)の活動内容について教えてください。

小針:私たちは全国にある17校(2026年8月時点)のオルタナティブスクールが加盟するネットワークを運営しており、「一校では届かない社会の課題に、全国の仲間とともに取り組む」という考えのもと、大きく3つの活動を行っています。

1つ目は、加盟校同士が学び合い、高め合うためのネットワークづくりです。各校が建学の精神に基づいた独自の教育を実践する一方で、スクール運営や生徒募集、財務、人材育成などのノウハウを共有し、互いに成長できる環境をつくっています。

2つ目は、多様な学びを社会に広げるための制度づくりです。加盟基準や認証制度の整備を進めるとともに、行政や企業とも連携しながら、オルタナティブスクールが教育の選択肢の1つとして社会に根付くよう取り組んでいます。

3つ目は、社会への発信です。オルタナティブスクール・フェスや講演などを通して、「優秀な子になるのではなく、最高の自分になるための教育」というメッセージを発信しています。

――ASJに相談に来る子どもや保護者の方は、どのような悩みや課題を抱えていることが多いのでしょうか。

小針:保護者の皆さんに共通しているのは、「変化が激しく先の見えない時代に、今の教育のままで本当に子どもは幸せに生きていけるのだろうか」という不安です。また、「このままの教育では何かが違う」と感じている方も少なくありません。

例えば、「AIが瞬時に答えを導き出す時代に、知識を暗記したり、公式を正確に当てはめたりする力を伸ばすことが、本当にこれからの時代を生きる力につながるのだろうか」という疑問です。

私たちの世代は、与えられた課題を速く正確にこなす力が求められてきました。しかし現在は、AIが24時間いつでも答えを返してくれる時代です。だからこそ、これからの教育に求められるのは、正確に「解く力」ではなく、「問う力」だと考えています。

――そもそもオルタナティブスクールとは、どのような学校なのでしょうか。

小針:ASJの定義する「オルタナティブスクール」とは、独自の教育理念(建学の精神)を掲げ、その理念を実現するための教育課程(カリキュラム)を構築し、子ども一人一人の興味や関心を尊重しながら、個性や主体性を育む学びを実践する教育機関の総称です。

教育内容や手法はスクールごとに異なりますが、子どもが持つ豊かな感性や主体性を尊重し、一人一人が自分らしく学べる環境を大切にしている点は共通しています。 ASJでは、こうしたオルタナティブスクールを、国公立・私立学校に続く「第3の学び場」と位置づけています。

オルタナティブスクールについて説明する小針さん
縦軸を「独自性/標準性」、横軸を「画一性/個別性」として、私立学校・国公立学校・オルタナティブスクール・フリースクールの4つを分類した「カリキュラムの独自性」のマトリックス図。オルタナティブスクールは、個別性とカリキュラムの独自性を併せ持った学びの場として位置付けられる。
各教育機関における特徴のポジショニング。オルタナティブスクールは、個別性とカリキュラムの独自性を併せ持った学びの場として位置付けられる (※3)。画像提供:一般財団法人 オルタナティブスクール・ジャパン

子ども自身が学びをデザインする、湘南ホクレア学園の取り組み

――小針さんが理事長を務める「湘南ホクレア学園」はどのような学校ですか。

小針:湘南ホクレア学園では、「どんな世界でもサバイブできる子を育てる!」をミッションに掲げ、子どもたちが自分の意志で人生を切り拓いていくために、「Vision(世界中に仲間をつくる)」「Will(自分で決める)」「Principle(リミッターを外す)」という3つのスタンスを大切にしています。

世界中に仲間をつくる力を持ち、自分の意志で選択し、「できない」と限界を決めずに挑戦する。こうした力が、どんな環境でも自分らしく生きていくための土台になると考えています。

また、湘南ホクレア学園では「先生」という呼称を使っていません。大人は、一方的に知識を教える立場ではなく、子どもたちの航海を支える「キャプテン・ナビゲーター」であり、子どもも大人も同じ船に乗る「クルー」として、互いを一人の人間として尊重しています。

――具体的には、どのような学びの環境やカリキュラムを整えているのでしょうか。

小針:湘南ホクレア学園では、子どもたちの学びを、未知の世界へ進む「航海」に見立てています。

スクール名の「ホクレア」は、ハワイ語で「喜びの星」を意味し、古代ポリネシアの航海者たちが、現在地や進む方向を確かめる手がかりとしてきた星の名前です。その航海で、日々の判断や行動の軸となる「内なるコンパス」が、「STAR」です。

Smile(笑顔で楽しむ)、Try(失敗を恐れず挑戦する)、Autonomy(自分で決めて、自分で責任を取る)、Respect(相手を尊重する)の頭文字から成り、学習だけでなく、遊びや生活を含めたあらゆる場面で大切にしています。

そして、一人一人の航海を支える学びの枠組みとして、「SAILS」「SHIP」「OCEANS」という3つの観点を設けています。

「SAILS」は、船を前へ進める「帆」のように、思考と表現の推進力を育む学びです。湘南ホクレア学園では、日本語、英語、数学を「基本三言語」と定義し、話す(Speak)・書く(Articulate)・読む(Interpret)・聴く(Listen)・解く(Solve)という5つの力を身に付けます。

「SHIP」は、航海を支える「船体」のように、自分と仲間を守り、どんな環境でも学び続け、生き抜くための土台を築く学びです。危険回避力(Safety)、健康管理(Health)、状況を察知して判断する力(Insight)、身体能力(Physical Capability)などを育みます。

「OCEANS」は、広い「海」を旅するように、興味や関心を起点として探究を広げ、起業スキルを磨く学びです。歴史(Origin)、公民(Civic)、地球・自然(Earth)、宇宙・芸術(Astronomy/Art)、地理(Navigation)、科学(Science)といった領域を横断しながら、起業スキルを磨いていきます。

――学年によって、学び方の違いはあるのでしょうか。

小針:小学1~3年生、4~6年生の異なる学年の子どもが1つのクラスで一緒に学ぶ仕組みとなっており、一人一人の興味や成長に合わせながら、自分で学ぶ力を育てています。

1~3年生では、まず英語や言葉に親しみ、学習の土台を育みます。英語を「教科」としてではなく、身近な言語として触れることから始め、算数も英語で学びます。

また、毎朝のサークルタイム(※4)では、6週間ごとにテーマとなる国を決め、その国の言葉であいさつを交わします。さらに、その国の歴史や文化、食について調べて料理づくりにも挑戦し、1つのテーマを入り口に、さまざまな角度から学びを広げていきます。

4~6年生になると、自分の夢や志を軸に探究を深める力を育てていきます。自分は何に興味があり、将来どんなことをしてみたいかを考えながら、自ら学びの方向性を見出していきます。

そのうえで、自分で1週間の学習計画を立て、週末には振り返りを実施。予定通りに進まなかった場合も原因を客観的に分析し、次の計画に生かしていきます。

さらに、その道のプロフェッショナルを「達人先生」として招き、世の中にある多様な職業や生き方に触れ、自分の人生を考えるきっかけにしています。

――ほかにも、特徴的な取り組みがあれば教えてください。

小針:本物の現場に触れ、そこから問いを生み出す学びも大切にしています。その1つが、夏に行う探究合宿です。

2025年は「2050年の日本を考える」をテーマに、能登半島地震や豪雨の被害を受けた石川県輪島市、珠洲市、能登町を訪れ、現地を視察したり、地域の方々からお話を伺ったりすることで、地域の課題や日本の未来について考えました。

その後、「2050年の自分」をテーマに発表会を行ったところ、子どもたちから「私は政治家になっています」「私は建築家になっています」「世界中に友だちをつくっています」といった将来像が次々に語られました。誰かのために何ができるのか、世界とどう関わっていくのかという視点が育っていることを実感しています。

2025年に行った探究合宿の様子。石川県珠洲市大谷町を訪れ、2024年に発生した能登半島地震と豪雨の被災の現状や復興の課題を学ぶ。画像提供:一般社団法人インタナティブ・スクール協会
取材時のホクレア学園。2025年に行った探究合宿の振り返りを行っている様子
スクール内には、これまでに学んできたさまざまな国のあいさつや、「達人先生」たちが話してくれた心に残る言葉が貼られている

すべての子どもが自分に合った学びを選べる社会にしたい

――現在、オルタナティブスクールが抱えている課題はありますか。

小針:一番大きいのは、経済的なハードルです。

自分に合ったオルタナティブスクールで学びたい子どもや通わせたい保護者、さらには、「自分で開校したい」「ここで働きたい」という志を持つ人も少なくありません。しかし、オルタナティブスクールを求める家庭が増える一方で、そのニーズに応えられるだけの学びの場は、まだ十分に増えていません。

理由は、独自の教育課程を持つオルタナティブスクールの運営を支える公的な制度が整っていないからです。公立・私立学校に対するような運営補助や助成金を受けることができず、多くの場合、各家庭からいただく学費だけで運営をまかなわなければなりません。

学費が上がれば、通える家庭は限られますし、経営が安定しなければ新たなスクールも生まれにくくなります。開校したいという教育者がいても、運営を継続できる見通しが立たなければ、最初の一歩を踏み出すことは簡単なことではありません。

ただ、私たちが求めているのは単なる「無償化」ではありません。公的支援に頼り切ることで、経営努力や教育の質を高める緊張感まで失われてしまっては、良い教育にはつながらないと考えるからです。

必要なのは、経営責任を持ちながらも安定した運営を続けられる仕組み。教育の質を高める努力を重ねつつ、既存のスクールが安定して維持でき、新たな学びの場も生まれやすい環境を整えることが、現在の課題だと感じています。

――多様な学びが保障された社会の実現に向けて、ASJが目指すことを教えてください。

小針:私たちが目指しているのは、「子どもが自分の学びを自由に選べる社会をつくる」ことです。

今の日本では、学びの形はまだ限られており、合わない場合は我慢するか、諦めるしかない状況もあります。だからこそ、子どもが自分に合った学びを選べるよう、選択肢を増やしていく必要があると思います。

もちろん、オルタナティブスクールは公教育を否定するものではありません。それぞれの役割や強みを生かしながら、共存していくことが大切だと考えています。変えるべきなのは子どもではなく、子どもが選べる環境や仕組みです。

そのために、ASJでは大きく2つの取り組みを進めています。

1つは、全国のオルタナティブスクールをつなぐネットワークづくりです。各スクールの理念や教育内容を可視化し、互いに学び合いながら、教育の質を高めていく役割を担っています。

もう1つは、制度づくりに向けた提言です。現在、多くのオルタナティブスクールは家庭の学費によって運営されています。この構造を変え、より多くの子どもが自分に合った学びを選べるようにするために、教育のバウチャー制度(※5)を提案したいと考えています。

最終的に、私たちはASJの解散をゴールにしています。オルタナティブスクールが誰にとっても身近な選択肢になり、この団体の役割が必要なくなったとき、それが私たちの目指す社会が実現した証だと思っているからです。

自分に合わない場所で無理に頑張ることが当たり前ではなく、自分に合った学びを選びながら成長できる社会。それが、私たちの目指す未来です。

毎日行うサークルタイムでは、キャプテンのジョナサン・クーパーさん(写真奥・中央)を中心に、その日学んだこと、関心を持ったことなどを発表している
子どもたちが染めた、ろうけつ染め(※6)のフラッグ。同じデザインながら、それぞれの個性が表れている。画像提供:一般社団法人インタナティブ・スクール協会

すべての子どもが「最高の自分」になるために、私たち一人一人にできること

最後に、すべての子どもが「最高の自分」で生きられる社会に向けて、私たち一人一人ができることを小針さんに伺いました。

[1]オルタナティブスクールという「選択肢」を知る

公立・私立学校以外にも、多様な学びの場があることを知ることが重要。「学校に行けないこと」を問題にするのではなく、「その子に合った学び方を選べる」という視点を持つ

[2]「優秀な子」ではなく「最高の自分」を大切にする

子どもを誰かと比べるのではなく、それぞれの個性や特性を認めることが大切。みんなと同じ方法で育てるのではなく、その子らしく力を発揮できる環境を考えることが、学ぶ意欲を育み、可能性を広げていくことにつながる

[3]多様な学びを受け入れる社会をつくる

子どもたちが自分に合った学びを選べるよう、多様な価値観や選択肢を受け入れる姿勢が必要。一人一人の選択を社会全体で尊重していくことが、子どもたちの可能性を広げる社会につながる

編集後記

今回の取材は湘南ホクレア学園に伺い、夏の探究合宿に向けた準備の様子を見学しました。

2026年の探究合宿のテーマは、人口減少が進む千葉県香取市の地域づくりです。「どんなことができると思う?」というキャプテンの問いに対し、子どもたちは「チラシを作る」「SNSで発信する」など、次々に自分なりのアイデアを発表していました。

もちろん、積極的に参加する子どもばかりではありません。それでも大人は、必要な声かけや支援を行いながらも、無理に参加を促すことはせず、それぞれのペースや意思を尊重していました。

当たり前のことですが、全員が同じものに興味を持ったり、同じ速さで成長したりするわけではありません。学校という環境で力を発揮できる子もいれば、別の場所でこそ自分らしく学べる子もいます。

一人一人の「今」を尊重しながら、その子自身が動き出す瞬間を見守ることも、その子の可能性を信じることなのだと感じました。

子どもたちにとって学校が楽しい場所であり、また、「自分に合わない場所で無理に頑張ること」が当たり前ではない社会になってほしい、そう願います。

撮影:佐藤潮

  • 1.令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要|文部科学省(外部リンク/PDF)
  • 2.「個別最適な学び」とは、生徒一人一人の理解度や個性に合わせて学習を進める教育のあり方のこと
  • 3.一般財団法人 オルタナティブスクール・ジャパンでは、建学の精神を掲げ、独自のカリキュラムを持つフリースクールもオルタナティブスクールと位置づけている
  • 4.1日に2回、朝と下校の前に実施。全員の顔を見ることができるように輪になって座り、対話を行う時間
  • 5.国や自治体が子どもや保護者に対し、学校教育や習いごとなど「教育目的」に限定して使用できるクーポンを支給する仕組み
  • 6.熱で溶かしたろうで描き、染料で染まらないように防染する染色技法

小針一浩(こばり・かずひろ)

一般財団法人 オルタナティブスクール・ジャパン代表理事。ビジネスコンサルティングやシステム開発などの会社を起業。息子の大病をきっかけに会社経営の第一線を退き、主夫へ。息子の長期にわたる闘病を経て、学校探しを機に「自分で学校を創ろう」と決意。2022年にオルタナティブスクール「湘南ホクレア学園」を創設。教育の多様化を目指し、2024年に一般財団法人 オルタナティブスクール・ジャパンを設立する。著書に『2050年を生き抜く子を育てる「もうひとつの学校」』(まる出版)がある。

一般財団法人 オルタナティブスクール・ジャパン 公式サイト(外部リンク)

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