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災害は「もしも」から「いつも」へ。災害への備えを自分ごととして行うには? ~18歳意識調査アンケートより~

中央上部に「もしもをいつも!」という文字と循環する矢印があり、日常のアウトドア(左)と災害時(右)の場面を対比したイラスト。どちらの場面でも、同じ女性がランタンの明かりを灯し、カセットコンロやリュックサック、レトルト食品を同様に活用して過ごしている様子を描いている
平時も有事も変わらずに

取材:日本財団ジャーナル編集部

日本は、洪水や土砂災害、地震、津波などの多様な自然災害が発生しやすい、災害大国といわれています。

近年では、南海トラフ地震(静岡県から宮崎県の太平洋沿岸(駿河湾から日向灘)にかけての「南海トラフ」のプレート境界を震源域とする大規模地震)が発生した際に著しい地震や津波災害が生じるおそれが見込まれる地域として、1都2府26県707市町村(令和7年(2025年)1月時点)(外部リンク)が指定され、ニュースなどで取り上げられたのを見聞きした人も多いのではないでしょうか。

政府の発表によれば、今後30年以内に南海トラフ地震が発生する確率は80パーセント程度(令和7年(2025年)1月時点)とされており、いつ発生してもおかしくない状況にあります。

こうした災害への不安は、若者への調査結果からも見て取ることができます。日本財団が、日本を含む6カ国の若者を対象に行った18歳意識調査(別タブで開く)では、日本の場合、自分の国の重要な課題として、「少子化」「高齢化」「経済成長」に次いで「自然災害」が多く選ばれています(6カ国中でもっとも高い)。

別の回の18歳意識調査(別タブで開く)では、日本国内での大規模災害の発生可能性について、「非常に不安を感じる」、または「少し不安を感じる」と回答した人が、大阪圏を除くすべての地域で8割以上を占めています。

質問:日本においては、今後数十年以内に南海トラフ巨大地震、首都直下地震などの大規模災害が発生する可能性が指摘されています。今後の大規模地震の予測について、あなたの考えを教えてください。

18歳意識調査の100%積み上げ横棒グラフ。「今後の大規模地震の予測について、あなたの考えを教えてください」という質問に回答した人の項目別割合(%)。
全体(n=1,000)のうち、「非常に不安を感じる」と回答したのは53.9%。「少し不安を感じる」と回答したのは29.9%。「わからない・どちらでもない」と回答したのは11.3%。「あまり不安は感じない」と回答したのは2.3%。「まったく不安は感じない」と回答したのは2.6%。
東京圏(n=262)のうち、「非常に不安を感じる」と回答したのは56.5%。「少し不安を感じる」と回答したのは29.8%。「わからない・どちらでもない」と回答したのは9.2%。「あまり不安は感じない」と回答したのは1.5%。「まったく不安は感じない」と回答したのは3.1%。
名古屋圏(n=262)のうち、「非常に不安を感じる」と回答したのは56.4%。「少し不安を感じる」と回答したのは28.7%。「わからない・どちらでもない」と回答したのは9.9%。「あまり不安は感じない」と回答したのは1.0%。「まったく不安は感じない」と回答したのは4.0%。
大阪圏(n=262)のうち、「非常に不安を感じる」と回答したのは55.5%。「少し不安を感じる」と回答したのは29.5%。「わからない・どちらでもない」と回答したのは12.1%。「あまり不安は感じない」と回答したのは0.6%。「まったく不安は感じない」と回答したのは2.3%。
その他(n=464)のうち、「非常に不安を感じる」と回答したのは51.3%。「少し不安を感じる」と回答したのは30.4%。「わからない・どちらでもない」と回答したのは12.5%。「あまり不安は感じない」と回答したのは3.7%。「まったく不安は感じない」と回答したのは2.2%
出典:日本財団18歳意識調査 第49回テーマ「防災・減災」

他方、この調査の回答者の約7割は自然災害の影響を自分自身では受けた経験がなく、防災・減災対策を「行っているものはない/わからない」と回答している若者も男女合わせて3割近く存在しています。

特に女性では、「行っているものはない/わからない」を選んだ人がもっとも多くなっています。

質問:あなたやあなたの世帯では、災害発生に備えて、以下のことを行っていますか。行っているものをすべて選択してください。

18歳意識調査の集合横棒グラフ。「あなたやあなたの世帯では、災害発生に備えて、以下のことを行っていますか。行っているものをすべて選択してください」という質問に回答した人の項目別割合(%)。全体の降順で上位10位までの回答と、「行っているものはない/わからない」を抜粋。

「食料・非常食を買い置きしている」を選択したのは、全体(n=1,000)のうち31.4%、男性(n=514)のうち34.6%、女性(n=486)のうち28.0%。
「飲料水を買い置きしている」を選択したのは、全体(n=1,000)のうち28.4%、男性(n=514)のうち32.7%、女性(n=486)のうち23.9%。
「自宅・職場・学校などの避難場所や避難経路を確認している」を選択したのは、全体(n=1,000)のうち25.0%、男性(n=514)のうち28.6%、女性(n=486)のうち21.2%。
「非常用の明かり(懐中電灯、ランタン、ろうそくなど)を用意している」を選択したのは、全体(n=1,000)のうち24.2%、男性(n=514)のうち28.2%、女性(n=486)のうち20.0%。
「非常用の電源(電池、モバイルバッテリーなど)を用意している」を選択したのは、全体(n=1,000)のうち22.2%、男性(n=514)のうち29.4%、女性(n=486)のうち14.2%。
「非常用持ち出し袋を用意している」を選択したのは、全体(n=1,000)のうち16.2%、男性(n=514)のうち17.7%、女性(n=486)のうち14.6%。
「家具の転倒防止(固定、配置場所の工夫など)を行っている」を選択したのは、全体(n=1,000)のうち16.0%、男性(n=514)のうち18.9%、女性(n=486)のうち13.0%。
「非常用の医薬品・衛生用品(薬、消毒液、歯磨き、生理用品など)を用意している」を選択したのは、全体(n=1,000)のうち14.7%、男性(n=514)のうち17.1%、女性(n=486)のうち12.1%。
「非常用のラジオを用意している」を選択したのは、全体(n=1,000)のうち14.4%、男性(n=514)のうち18.1%、女性(n=486)のうち10.5%。
「自分の住む地域のハザードマップ(洪水、土砂災害、津波の被害予測地図)を確認している」を選択したのは、全体(n=1,000)のうち14.1%、男性(n=514)のうち19.6%、女性(n=486)のうち8.2%。
「行っているものはない・わからない」を選択したのは、全体(n=1,000)のうち27.4%、男性(n=514)のうち23.0%、女性(n=486)のうち32.1%
出典:日本財団18歳意識調査 第49回テーマ「防災・減災」。※全体の降順で表示。上位10項目、及び「行っているものはない/わからない」のみを抜粋

起こるかもしれない災害を心配しながらも、防災対策を行っていない(または行っているかわからない)人が一定数いる背景には、災害を自分ごととしては捉えていないことが原因にあるのではないでしょうか。

大規模自然災害のニュースを見聞きすると「もしも自分の近くでも災害が起こったら」と考えても、時間の経過とともにその気持ちが薄れてしまうことは専門家も指摘しています。「もしも」を一歩乗り越え、私たちが防災を自分ごととして日々意識し、備えるためには、どのようなことが効果的なのでしょうか。

今回は、「防災の楽しさを、世界中のみんなに。」をフィロソフィーに防災の普及活動に取り組む、NPO法人プラス・アーツ(以下、プラス・アーツ)の小倉丈佳(おぐら・たけよし)さんにお話を聞きました。プラス・アーツでは、「モシモ」を「イツモ」にするために、さまざまな団体と連携し、防災の普及活動を行っています。

小倉丈佳さん

防災は、もはや「モシモ」ではない

小倉丈佳さん(以下、敬称略): まず「災害」=「モシモ」という捉え方自体を見直す必要があるのではないかと思います。

日本で震度4以上の地震(ある程度大きな地震)が起こらなかった年は、実はこれまでに一度もありません。また、水害は毎年発生しています。つまり、「災害」は「モシモ」のことではなく、毎年当たり前のように起こる「イツモ」のことなのです。

雪国の人々が毎年冬の到来前に冬支度をするのと同じように、災害に備えることを日本に住む上でのマナーだと言えるくらい、当たり前のことにしていく必要があると思っています。

長年活動をしていると、被災地に暮らす人々は防災への関心は高く、震災未経験のエリアの人々は関心が低いということを、肌感覚として感じます。災害が起こると自分の身の回りがどうなるのかを具体的にイメージできている、ということが自分ごと化につながっているのではないかと思います。

不安だけど何をやれば良いか分からないという人は、まずは過去の災害でどんなことが起こったのかを知ることから始めるのが良いと思います。

防災意識を自らアップデートする

小倉:日本財団の18歳意識調査の結果を見ると、「あなたが自身の防災・減災意識を高めるために経験・利用してみたいものを次のなかから3つまで選んでください。」という質問に対し、「応急救護訓練」や「消火器の取扱い訓練」などが上位にあがっており、従来の防災のイメージをアップデートできていない様子が見られます。

実は最近、謎解きやアウトドア、スポーツ競技のような演出を取り入れ、新しい視点を持った防災訓練イベントがたくさん増えてきています。また、防災グッズもデザインが優れていて普段の生活にもなじむようなものがどんどん出てきています。

防災のことを自らアップデートしにいくという意識で、情報収集したり、おもしろそうだと感じるイベントに参加したりといった、個々人の前向きな活動が大切になってくるのではないでしょうか。

質問:あなたが自身の防災・減災意識を高めるために経験・利用してみたいものを次の中から3つまで選んでください。

18歳意識調査の集合横棒グラフ。「あなたが自身の防災・減災意識を高めるために経験・利用してみたいものを次の中から3つまで選んでください」という質問に回答した人の項目別割合(%)。「特にない」を除き、降順で表示。
「応急救護訓練(AEDの取り扱い、心臓マッサージなど)」を選択したのは、22.6%。
「災害時以外にも使える防災グッズ」を選択したのは、22.4%。
「身近にあるものから非常時に役立つものをつくるサバイバル訓練」を選択したのは、20.3%。
「消火器の取り扱い訓練」を選択したのは、17.9%。
「煙の中での避難や、地震の揺れの体験」を選択したのは、17.2%。
「VR等を活用した災害疑似体験」を選択したのは、14.8%。
「防災の知恵が分かりやすくまとまった本・冊子・Webサイト」を選択したのは、14.4%。
「災害報道」を選択したのは、12.0%。
「ゲームの要素を取り入れた防災訓練や防災アプリ」を選択したのは、10.7%。
「おしゃれな防災グッズ」を選択したのは、10.4%。
「被災経験者の体験談共有」を選択したのは、7.5%。
「防災士などの専門家により防災の解説動画」を選択したのは、6.6%。
「その他」を選択したのは、0.1%。
「特にない」を選択したのは、24.7%
出典:日本財団18歳意識調査 第49回テーマ「防災・減災」。※「特にない」を除き、降順で表示

防災を楽しい体験として学ぶ

小倉:日本では、防災について「面白くない」「難しそう」「堅苦しい」というイメージが浸透しているので、そのイメージを打破するような取り組みがたくさん増えていくことが大事だと考えています。

プラス・アーツのプロジェクトは楽しいことを重視しているので、関わった人たちからは、「防災って楽しんでもいいんだ」「防災が楽しめるものだと初めて気づいた」といった声をたくさんもらっています。そんなふうに、ぜひ若い皆さんには、楽しい防災イベントや書籍、グッズ等に触れてみて、まずは上記のような感想を抱いてもらうことが大切だと思っています。

また、私たちは、子どもの頃の経験がとても重要だと考えています。防災のことを「面白くない」「難しそう」と思う人が多いのは、子どもの時に体験した防災訓練がそうだったからだと思いませんか?

もしそうだとすると、子どもの頃に楽しい防災イベントにたくさん参加してもらえれば、防災を楽しいと考える子どもが増え、その後彼らが大人になったときに防災のネガティブなイメージを変えてくれるのではないかと思っています。

その意味で、学校教育はとても重要です。いま小・中学校のなかにどうやって楽しい防災プログラムを取り入れていくか、全国で少しずつモデルをつくっていっているので、引き続き力を入れて取り組んでいきたいと思っています。

おそらく高校生や大学生の多くが、「防災は真面目に取り組まなきゃ」と考えてしまっているのではないかと思います。繰り返しになりますが、これらは小さい頃から経験している避難訓練しか知らないことが原因ではないかと思うので、ぜひさまざまなイベントに積極的に参加して、「楽しい!」と思えるようなものを発見してもらいたいです。

多世代テーマ「防災」を通じた学校と地域の連携

小倉:ここ数年で、学校からの依頼を受けることが多くなってきています。総合的な学習(探究)の時間を活用して防災について積極的に学んでいこうという先生が増えてきているように思います。

また「学校と地域との連携」も重要なキーワードになっているので、「『防災』というテーマで、地域と中学生(高校生)が一緒に活動できる場をつくれないか?」という相談を受けることがあります。結果として、地域の防災訓練に、中学生や高校生がスタッフとして参画するという事例が増えてきています。

実は、地域の防災活動は、運営者も参加者も高齢化が進んでおり、活動をいつまで続けられるかということが全国的に大きな課題となっています。高校生や中学生が地域の防災訓練に関わり、高齢化した防災コミュニティを支えていくという取り組みが、上記課題を解消するきっかけになるのではないかと思い、とても可能性を感じています。

防災を支えるコミュニティ

小倉:阪神・淡路大震災の頃に住民同士の助け合いやボランティア活動が注目され、自助・共助・公助のなかで「共助」が大事だという認識が広がっています。共助はコミュニティがしっかりしていないと成り立たないので、地域の人たち同士が協働できる場を事前につくっていくことが大事だと考えています。

昔は町内会等で地域行事を開催することが多かったので、地域のさまざまな立場の人が一緒に何かをするという機会がありましたが、最近はそのような行事自体が減ってきています。「防災」はどの世代においても重要なテーマであるため多世代が関わりやすく、防災イベントを地域行事のように実施していくことが、コミュニティを維持、強化するためのポイントなのではないかと考えています。

プラス・アーツの「イザ!カエルキャラバン!」は、地域の人たちが運営を担うことを条件として展開しています。全国の開催事例を見ると、「自主防災組織」や「消防団」といった地域の防災関連団体だけで開催するというケースはあまりなく、PTAや子ども会、スポーツクラブや大学のボランティアサークルなど、防災以外のさまざまな団体が集まり、和気あいあいと開催している地域がたくさんあります。まさに「防災のお祭り」として実施されているプログラムではないかと思います。

カエルキャラバンには高校生や大学生といった若い人たちもスタッフとしてたくさん参加してくれているので、もし「地域の人たちと顔見知りになりたい」「地域に貢献したい」と考えているなら、ぜひ主催者に連絡を取り参加してみてください。とても楽しいですし、地域の人たちも若者とつながりたいと思っているので、大歓迎されるはずです。

また、もし参加することのハードルが高ければ、そういった面白そうな防災の取り組みや役に立つ情報などをSNSなどで発信するということも、若い人たちだからこそできる社会貢献ではないかと考えています。自分と同じ世代の人が発信したもののほうが、いいね! と共感できますよね。

若者発で防災のイメージが変わっていくと素晴らしいと思います。いま日本財団のSNSで、イラストを活用した分かりやすい情報配信を行っているので、よかったらシェアして広げてもらえると嬉しいです。

防災に取り組むことが企業価値向上につながる

小倉:自治体や民間企業、日本財団のようなさまざまな業種との連携プロジェクトがいま急に増えてきており、その背景には2つあると考えています。

1つ目は、昨年、能登半島地震や南海トラフ地震臨時情報の発表といった出来事が連続的に発生したことにより、全体的に危機意識が高まっていることです。

2つ目は、防災にしっかり取り組むことが企業価値の向上につながる、と認識され始めていることです。特に、マンションやインフラ系の企業においては、防災にしっかり取り組んでいる、ということがその企業が選ばれる理由の一つになっています。防災に取り組むことで、消費者からの会社の商品、サービスに対する信頼が高まっていると考えられます。

ただし、連携プロジェクトの数は時期により波があり、災害から一定期間が過ぎると急激に関心が下がってきます。もっともっと防災を一般化し、関心の高低に関わらず防災に取り組む企業が増え続けていくよう、活動していきたいと思っています。

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