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人工肛門(ストーマ)を保有するオストメイトの生活とは? 暮らしの制限や、工夫について支援団体に聞く

ストーマはお腹に造設する人工の排せつ口。排せつ物はパウチ状の袋の中にためられる
この記事のPOINT!
  • ストーマとは、腹部につくられる人工肛門や人工膀胱。国内の保有者は約23万人
  • オストメイトに仕事や旅行などに大きな制限はない一方、周囲の理解不足や装具の費用などの課題に直面することがある
  • ストーマについて正しく知り、外見だけで人の事情を判断しないことが、オストメイトが安心して暮らせる社会をつくる第一歩となる

取材:日本財団ジャーナル編集部

公共施設や商業施設のトイレで、次のようなマークを見かけたことはないでしょうか。

このマークは、オストメイト対応設備があることを示しています。オストメイトとは、ストーマ(人工肛門・人工膀胱)を保有する人のことです。駅や商業施設などに設置されているオストメイト対応トイレには、ストーマ装具にたまった排せつ物を立ったまま処理できる汚物流しや、装具の交換に使える設備が備えられています。

オストメイトマーク

国内に、約23万人いるといわれているオストメイト。しかし、ストーマを保有していることは外見から分かりにくく、日常生活でどのような困難に直面し、どんな準備や工夫をしながら暮らしているのかは、広く知られていません。

今回は、NPO法人ストーマ・イメージアップ・プロジェクト(以下、SIUP)(外部リンク)のメンバーであり、ストーマケアを専門とする看護師の片岡ひとみ(かたおか・ひとみ)さんに、ストーマの仕組みやオストメイトが直面する困難、安心して暮らせる社会のために必要なことを伺いました。

お話を伺った片岡さん

ストーマを造設しても、仕事や旅行、スポーツに支障はない

――改めて、ストーマとはどのようなものなのか、排せつの仕組みやストーマ装具の使い方を教えてください。

片岡さん(以下、敬称略):ストーマとは、病気や事故などによって通常の排せつが難しくなった際、腸や膀胱の一部を腹部の外に出してつくる人工の排せつ口です。

腸の一部をお腹から外に出したストーマ。ストーマ自体に痛覚はないという

片岡:人工肛門と人工膀胱があり、肛門や尿道のように括約筋(かつやくきん:収縮によって便や尿の排出を調節する筋肉)で締めることができないため、自分の意思で排せつをコントロールできません。

そのため、皮膚に密着させる面板(めんいた)と、便や尿をためる採便・採尿袋からなる専用のストーマ装具を腹部に装着し、袋に排せつ物がある程度たまったらトイレで排出する仕組みになっています。装具自体は数日に一度交換し、装具を貼っている周囲の皮膚のケアも必要です。

このような人工肛門や人工膀胱を保有している人を「オストメイト」と呼びます。

ストーマ装具を取り付けている模様。排せつ物がある程度たまったらトイレに流して処理をする

――どのような病気や治療をきっかけに、オストメイトになるのでしょうか。

片岡:人工肛門を造設する主なきっかけとしては、直腸がんを中心とする大腸がん、潰瘍性大腸炎、先天性疾患や、事故による消化管の損傷などが挙げられます。最近ですとダウンタウンの松本人志さんが大腸がんにより、人工肛門を造設したことを公表し、話題になりました。

また、直腸がんなどの手術後、腸をつないだ部分に便が流れないようにして治癒を促すため、一時的な人工肛門を造設することもあります。

一方、人工膀胱は、膀胱がんをきっかけに造設されるケースが多いです。

よく誤解されるのですが、大腸がんや膀胱がんになった人が必ずストーマを造設するわけではありません。また、ストーマを造設したからといって、がんが末期であるということでもないということも、ぜひ知っておいていただきたい事実です。

――ストーマを造設すると、生活に支障は出ますか。

片岡:装具を適切に管理すれば、仕事や旅行、スポーツなど、基本的には手術前に近い生活を送ることが可能です。実際に、スキューバダイビングやサーフィン、バスケットボール、剣道、日本舞踊などを続けている人もいます。

ただし、術後しばらくは、腹筋に強い力がかかる重い物の持ち上げや、腹部が激しく接触するスポーツを控える場合があります。

――SIUPの設立目的はなんでしょう。

片岡:ストーマについて正しい情報を伝え、社会の理解を広げることを目的に、2006年にストーマケアを専門とする看護師6~7人を中心に、活動を始めました。2016年11月にNPO法人へ移行しています。

活動のきっかけは、ストーマ外来を訪れる患者さんから、「プールに入ることを断られた」、「温泉でストーマのある人は入浴できないと言われた」などの声を数多く聞いたことでした。

医療者は、ストーマ装具は適切に管理すれば入浴や水泳が可能だと理解しています。しかし、当時はストーマが社会的にほとんど知られておらず、「汚い」「施設を汚す」といった誤解が、利用拒否や差別につながっていました。

こうした誤解や偏見をなくし、オストメイトが安心して社会生活を送れるよう、現在も啓発活動を続けています。

漏れへの不安、温泉、費用負担。オストメイトが直面する日常の壁

――基本的な行動制限はないとのことですが、準備や工夫が必要となる場面はありますか。

片岡:はい。行動そのものに大きな制限はありませんが、手術前とまったく同じ生活に戻れるわけではありません。排せつ物が自分の意思に関係なく出てくるため、一人一人が自分の生活に合わせて工夫しています。

食事に一律の制限はありませんが、人前に出る予定に合わせて、ガスやにおいが生じやすい食品を避けたり、食べる時間を調整する人もいます。

外出時には、オストメイト対応設備のあるトイレを事前に調べたり、予備の装具を持参したりします。人工膀胱の場合は、長時間の移動や就寝に備え、容量の大きな蓄尿袋をつなぐこともあります。

――オストメイト対応トイレの整備状況や、利用する際の課題について教えてください。

片岡:駅や商業施設などでは、オストメイト対応トイレの整備が進んでいます。一方、ストーマを保有していることは外見から分からないため、利用時に周囲から厳しい視線を向けられることがあるというのはよく聞く話です。そのため、本来はオストメイト対応トイレを必要としているにもかかわらず、周囲の目を気にして、一般トイレの列に並ぶ人がいるのが現状です。

オストメイトの排せつ方法。SIUPではイラスト入りでオストメイトの生活を解説している。画像提供:NPO法人ストーマ・イメージアップ・プロジェクト
オストメイト対応トイレ
オストメイト対応トイレには洗浄しやすいよう、腰の高さの位置にシャワーや蛇口があり、洗い場が設置されている

――ストーマ装具にかかる費用は、どれくらいなのでしょうか。

片岡:使用する製品や交換頻度、公的給付の有無によって大きく異なります。実態調査では、公的給付を受けている永久ストーマの人でも、月に3,000円程度から1万円程度を自己負担していました。

原則として身体障害者手帳の対象にならない一時的ストーマの人は、月8,000~1万円程度を負担するケースが多く、高い人では月5万円ほどかかっていました。自治体によって給付額に大きな差があることも課題です。

――SIUPのこれまでの実態調査では、オストメイトがどのような困難に直面していることが分かりましたか。

片岡:実態調査では、ストーマ管理、日常生活、社会生活の3つの側面から調査を行いました。

ストーマ管理では、排せつ物の漏れや、それに伴う皮膚のかぶれ・ただれ、ガスによる袋の膨らみが多く挙げられました。装具には防臭加工が施されていますが、汗や体の動きなどで皮膚との間に隙間ができると、漏れやにおいが生じることがあります。こうした経験から、人前に出ることが怖くなる人もいます。

日常生活では、「温泉に行けなくなった」という回答が最も多く、約6割に上りました。装具を見られる恥ずかしさや漏れへの不安、施設から利用を断られた経験などが背景にあります。

社会生活では、装具の購入に伴う経済的負担のほか、以前と同じように働けないことによる収入の減少、周囲や家族への気兼ねなどが挙げられました。

温泉
温泉への入浴は可能だが、周囲からの視線など、さまざまな不安から抵抗を感じるオストメイトは多いという

片岡:また、2022年に行った最新の調査では、排せつ物の漏れを経験した人が若干減っていました。装具の性能向上に加え、皮膚・排せつケア認定看護師やストーマ外来が増えたこと、手術前から医師や看護師らが管理しやすいストーマの位置を検討する体制が広がったことなどが背景にあると考えられます。

ただし、皮膚のかぶれやただれ、においへの不安、温泉に行きづらいという問題は、依然として残っています。

――オストメイトが安心して暮らしていくために、社会はどのように変わる必要がありますか。

片岡:まず必要なのは、ストーマについて正しく知る機会を増やすことです。オストメイトは、お腹から便や尿が出るからといって、「汚い」存在ではありません。また、ストーマによる排せつ機能の障害は、外見からは分かりにくい内部障害の1つです。その存在や暮らしについて、広く知ってもらう必要があると考えています。

学校教育やメディアを通じて、ストーマや内部障害について学ぶ機会をつくるとともに、オストメイトマークや対応トイレの意味を周知することも重要です。

また、ストーマ装具の費用負担、加齢や認知症によって自分で装具を管理できなくなった場合の支援、災害時の対策も大きな課題です。装具に対する給付額には自治体によって差があり、一時的なストーマは支援の対象外になる場合もあります。

オストメイトやストーマの実情を正しく理解する人を増やし、国や自治体が公的支援を整えてほしいと思います。

オストメイトへの理解を深めるために、一人一人ができること

最後に、オストメイトへの理解を深めるために、私たちができることを片岡さんに伺いました。

[1]ストーマやオストメイトについて知り、話題にする

記事やニュースをきっかけに、ストーマやオストメイトについて知り、家族や身近な人と話すことが理解への第一歩。社会にある誤解や偏見を減らすことにつながります。

[2]他人を外見だけで判断しない

ストーマの有無は、外見から判断できません。オストメイト対応トイレや多目的トイレを利用している人を見ても、「必要がないのでは?」と決めつけたり、厳しい視線を向けたりせず、見た目では分からない事情があるかもしれないと想像する感覚を持ってください。

取材後記

駅や商業施設などでオストメイト対応トイレを見かける機会は増えましたが、当事者の方々がどのような生活を送り、どんな困難を抱えているのかは、まだ十分に知られていません。その実情を知りたいと思い、今回の取材を申し込みました。

ストーマについてご存じない方にとっては、お腹から赤く出っ張っている部分があり、しかもそれが腸の一部だということ自体、大きな驚きを伴うかもしれません。この記事を通じて、正しい理解が広がることを願います。

また、ストーマを保有していることは、外見からはほとんど分かりません。身近な誰かにも、外見からは分からない事情があるかもしれない。そう想像し、相手に思いを寄せることが、誰もが安心して暮らせる社会への第一歩になるのではないでしょうか。

NPO法人ストーマ・イメージアップ・プロジェクト 公式サイト(外部リンク)

  • ※ 掲載情報は記事作成当時のものとなります。
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