未来のために何ができる?が見つかるメディア
地域共創のパートナーとして、若者を巻き込むためには?~日本財団18歳意識調査アンケートより~
日本財団は、2026年5月、「地方創生(地域間比較調査)」をテーマに81回目の18歳意識調査(外部リンク)を実施しました。有識者に印象に残った調査結果についてインタビューを通してお考えをお聞きしています。
人口について「増えた方が良い」は、男女ともに地方圏周辺部で高く(男性46.7パーセント、女性42.9パーセント)、三大都市圏中心部で低くなりました(男性21.8パーセント、女性15.2パーセント)。
質問:現在お住まいの地域の人口に関するあなたの考えを教えてください。(単一回答)

継続居住意向を尋ねた質問では、「住み続けたい」「どちらかといえば住み続けたい」の合計は、三大都市圏中心部の女性が79.8パーセントと突出して高く、同じ地域の男性の65.5パーセントを14ポイント以上上回りました。地方圏では男女とも6割前後です。
質問:あなたは、現在お住まいの地域に住み続けたいと思いますか(現在の地域を一度出て、戻ってきて住むことも含む)(単一回答)

地域における取組の重要度と満足度を聴取し、そのギャップの大きい都道府県(上位3位)を一覧にしています。「子育て世帯に選ばれる地域を目指した、保育拠点の整備やこどもの居場所づくり等(取組4)」や「被害が深刻化・頻発化する自然災害に備える、事前防災及びインフラの予防保全の徹底(取組15)」で、特にギャップが目立ちました。
質問:あなたがくらす地域において、以下の取り組みは重要だと思いますか/その取り組みに満足していますか。(それぞれ単一回答)(n=100/各都道府県)

これらの結果について、関東学院大学法学部地域創生学科の牧瀬稔(まきせ・みのる)先生にお話を聞きました。牧瀬先生は自治体の政策形成やシティプロモーションを専門とし、徳島県鳴門市、愛媛県西条市、広島県三原市議会、兵庫県太子町議会をはじめ全国の自治体・議会でアドバイザーを務めています。

地方の若者が求めているのは「人口増」ではなく「持続可能な地域」
今回の調査では、都市に比べて地方の若者の方が、「人口が増えた方が良い」との回答割合が高い結果になっていますが、これにはいくつかの要因があると思います。
一つは、地方の若者は、「人口が多いこと=まちが便利になる」という認識を持っている、ということです。若者に話を聞くと、「ショッピングモールが欲しい」や「スタバが欲しい」と言います。それらは全て、人口が多い都市圏に存在するため、人口が増えればそうした施設が充実する、と若者は考えているのだと思います。
また、特に地方の若者は、ずっと右肩下がりのまちで生きてきています。スーパーやコンビニの閉店、バスや鉄道の減便・廃止、学校の統廃合、アルバイト先や就職先の不足など、人口減少に伴う地域活力の縮小を直接体験しています。
私がアドバイザーとして関わっている徳島県鳴門市も駅前が寂しくなっており、5、6年前には百貨店がなくなりました。そのような状態を見てしまうと、「人口は維持したい」という気持ちになるのだと思います。
なお、鳴門市に限らず、地方都市の現状は似たり寄ったりです。人口減少や少子高齢化が進む中で、商業機能や公共交通、教育環境、雇用の場などを従来と同じ規模で維持することが難しくなっている地域は少なくありません。
一時期、「消滅可能性都市」が流行ったこともあり、若者は「人口が減れば地域そのものが維持できなくなる」という危機感も背景にあると感じます。つまり、地方の若者にとって人口は数字ではなく、自らの生活を支える要素なのです。
地方の若者は「人口を増やしてほしい」という感情ではなく、「地域が持続可能であってほしい」と捉えていると考えます。この観点に立つと、人口が減っても、地域の持続性が担保されるのならば、人口増を求める割合は減少するかもしれません。
一方で、三大都市圏の若者、特に女性は人口増をそれほど望んでいません。地方から出てきた若者にとって、「地方は人口が減って寂しすぎた」という実感があり、サービスが充実した都市の生活に満足しているという面があります。
また、これは若者に限りませんが、都市圏では既に、電車は混雑し、受験競争は過熱し、住宅価格は高騰しており、「人口が多いことによる不便」を実体験しています。関東学院大学の学生(神奈川県内のキャンパスに通学)に聞いても、東京での就職や活動を敬遠する人が一定数います。理由を聞くと、「満員電車が嫌だ」と言います。
東京は1,400万人を超え、過度な集中による弊害が出ています。既に生活関連サービスは充実しているため、「人口が増えればサービスが良くなる」というよりも、「これ以上増えなくてもよい。ただし、これ以下は望ましくない」という発想になっているのだと考えます。
流出の原因は「愛着不足」ではなく「選択肢の不足」
継続居住意向に関する質問の結果をみると、地方の若者も一定数は定住を望んでいるように見えます。にもかかわらず、実際の流出は止まりません。これは、地方における選択肢の圧倒的な少なさが要因です。
若者を惹きつけるのは「選択肢の多さ」であり、地方では「進学」「就職」といった人生の選択肢が限定されてしまうのが現状です。特に、希望する職種や企業が少ない、という雇用の多様性不足が最大の流出要因だと考えています。
2010年頃に青森県の下北半島の活性化に関わっていましたが、高校生の8割が「住み続けたい」と回答していたにもかかわらず、結果的には流出していました。一次産業と観光しかないため、出ていってしまうのです。すなわち、地方からの人口流出は「地域への愛着不足」ではなく、「人生の選択肢の不足(=自己実現の機会の不足)」によって生じていると考えます。
では、若者、特に若年女性に選ばれる地域をつくるには何が必要なのでしょうか。
人口が増えているところに共通するのは「良質な雇用」「働き続けられる環境」「居場所の充実」の3点だと考えます。良質な雇用の「質」とは、賃金よりも多様性です。働き続けられる環境は、柔軟な勤務制度や育児との両立支援を指します。居場所の充実は、カフェやコワーキングスペース、サークル活動など、人と人が交流する機会のことです。
また、シビックプライド(都市に対する市民の誇り)が高いほど将来地域に戻る可能性も高くなりますが、それだけでは戻りません。仕事の確保、暮らしの充実、将来設計の見える化が重要であり、これらを合わせて提供することで、Uターンや若者に選ばれる地域になるのです。
「戻ってくるな」と言っているのは、実は親世代
消滅可能性都市という言葉が繰り返し報道されたことで、若者の中に「どうせ自分のまちは消えるんだ」という諦めが生まれているのではないか、という見方もあります。ところが、今の若者は新聞等をあまり見ないため、その情報には疎いのが実情です。ちなみに一人暮らしの学生の多くはテレビを置いていません。
そうではなく、実際に言っているのは親世代です。親世代はニュースを見るため、「うちの地域は望みがないから戻ってくるな」と言います。私のゼミ生にも、地元に戻りたいのに親に相談したところ「戻ってくるな」と言われ、東京に就職した学生がいます。親世代の意識や発信のあり方にも、若者を呼び戻す上での課題が潜んでいるのではないかと考えています。
ウェルビーイング指標には客観指標と主観指標がありますが、人口が増えている地域は、客観的なデータよりも主観データが良い場合が多いです。
例えば兵庫県明石市の子育てサービスは、客観データでは偏差値50程度(全国平均並み)であるのに対し、市民の主観的な満足度は偏差値80(極めて高い状態)になっています。広報紙が充実しているなど、インナープロモーションが上手いのでしょう。その親が子どもたちに「うちのまちはすごい」と伝えるため、子どもたちが一度地域を出ても再び戻ってきます。
逆に、私が関わっていたある県は、客観データは平均並みでしたが主観データが下位でした。政策的には悪いことをしていないにもかかわらず、それが伝わっていないため人口流出が激しいのです。つまり、親世代を含めた市民の意識を変えるには、インナープロモーションが重要だと思います。
行政は「制度」を提供し、若者は「体験」を評価する
若者が重視しているにもかかわらず満足度が低い、つまり、ギャップの大きい取組がいくつかありました。これは「行政目線」と「消費者目線」の違いだと考えます。行政は施策を実施することが目的化していますが、若者は恩恵を得ることが重要です。「施策を実施していること」と「若者が恩恵を実感していること」は別物なのです。
例えば子育て支援では、多くの自治体が保育料無償化や医療費助成などを実施しています。しかし若者、とりわけ結婚前・子育て前の世代からすると、「将来役に立つ制度」ではあっても、「そもそも結婚しないかもしれない」「今の自分には関係ない」と受け止められがちです。地域交通も、自治体が路線維持に懸命に取り組んでいても、「行きたい場所へ自由に行ける」「夜も安心して移動できる」という若者目線の希望を実現できなければ、満足度にはつながりません。
自治体は「制度」を提供していますが、若者は「体験」を評価しています。この視点の違いが、大きなミスマッチになっていると考えます。つまり、プロダクトアウト思考ではなく、対象者目線のマーケットイン思考が求められているのだと感じます。
また、伝え方も重要です。「施策を売ること」ではなく、「施策を対象者に伝わる形に編集し、発信すること」がポイントです。自治体は「これだけ事業をしています」と説明しがちですが、それは説明であってアピールではありません。若者が知りたいのは、「その施策により自分の生活がどう変わるのか」です。行政言葉を市民の言葉に置き換えなければ伝わらないのです。
人口が減っても、活動人口が増えればまちは元気になる
地方創生は、これまで「人口の維持、あるいは増加」が目的になりがちでした。しかしこれからは、「この地域で暮らして良かった」と感じる人を一人でも増やすことが重要だと考えています。地域のファンをつくる、ということです。
私は地方創生の鍵は「活動人口」にあると考えています。前提として、関係人口にも「良い関係人口」と「悪い関係人口」があると考えています。世の中は「関係人口は基本的に善である」という関係人口性善説に立っているように感じますが、必ずしもそうではないというのが私の考えです。
行政との関係が強く、地域にとってメリットになっている人を、私は「活動人口」と呼んでいます(以下「関係人口の4類型」の図を参照)。地域に対する誇りや自負心を持ち、地域づくりに活動する人たちです。
寄付はするものの訪れることはないという人は「関心人口」です。関係はあるもののデメリットになっているのは「問題人口」、いわゆるクレーマーですが、クレーマーは関心があるからこそ意見を述べに来るため、「活動人口」に転換できる可能性があります。自治体は漠然と関係人口の獲得を目指すのではなく、どの関係人口を狙うのかを明確にすべきでしょう。

人口が減っても「活動人口」が増えていけば、そのまちは元気になると考えます。「活動人口」を生み出すには、共有・共感・共創がポイントです。まずは自治体と住民等の「共有」から始めることで、共有が「共感」につながり、共感の積み重ねが「共創」へ変化していきます。
共創が「活動人口」の一つの形態です。データ上、イベントが多い自治体ほどシビックプライドが高まっていますが、イベントを実施すること自体よりも、そのイベントを作り上げる過程で、人がつながっていくことに意味があります。これが「活動人口」を増やすポイントだと考えています。
若者を「支援される存在」ではなく、「ともにつくるパートナー」に
行政や政治家は、本音では若者をあまり重要視していません。若者は票に繋がりにくいため、結局、高齢者向けの「シルバーデモクラシー」になってしまっています。
この状況を打破するためには、自治体、あるいは地域社会が、若者を「支援される存在」としてではなく、「地域をともにつくるパートナー」として迎える姿勢が大切です。意見を聞くだけではなく、実際に企画や運営に参画してもらうことが、将来の地域の担い手を育てることにつながると考えます。
徳島県鳴門市の市長は、今期から若者施策に本格的に着手しています。その一つが若者条例です。若者のまちづくり等への参加促進を目的に、自治体が独自に定める条例であり、日本では現状10程度の自治体しか取り組んでいません。若者が「このようなことをやりたい」と提案すれば市長が検討し、必要なものは事業化することになります。若者の意思が運営に反映されていると実感してもらうことが重要であり、狙いです。
今回の調査結果を見て改めて感じたのは、「若者は決して地域に無関心ではない」ということです。地方の若者も「住み続けたい」と考えている割合は決して低くありません。子育て支援や交通、防災など、地域の将来に関わる施策への関心も非常に高いことが分かりました。若者は「地域に関心がある」のです。
重要度と満足度の間には大きなギャップがありますが、これは若者が自治体に期待していないということではなく、「もっと良くなってほしい」という期待の表れともいえます。この思いを反映させなければ、自治体(地域)は見捨てられてしまうのではないでしょうか。
だからこそ、若者の関心を丁寧に掘り起こすことが行政の役割です。若者自身も、主体的に地域のために動くことが重要です。ただし、行政がその舞台を用意できていないのが現状です。行政が舞台を用意し、若者を地域のパートナーにしていく、その発想が地方創生において重要だと考えています。
以上
- ※ 掲載情報は記事作成当時のものとなります。