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家族とともに、ミャンマーの地で
— 担当するプロジェクトは?
ミャンマー・ヤンゴンの駐在員事務所に勤務しており、学校の建設事業や、紛争によって避難を余儀なくされた人々が元の村に戻るためのシェルター建設など、主に教育と生活再建に関わる事業を担当しています。
— ミャンマー駐在をする上で面白いこと、大変なことは?
駐在を始めて2年が経ち、家族と一緒にミャンマーで生活しています。
家族ぐるみで現地の文化や人々と関われることは、ミャンマー駐在の大きな魅力の一つです。
ミャンマーの人々は仏教徒が多く、穏やかで控えめな気質は日本人にも似ており、日常生活の中でも、助け合いを大切にする姿勢に触れる場面が多く、とても親しみを感じています。

花を売る子どもたち
——350万人の国内避難民
一方で、厳しい現実も日常的に目にします。空港から自宅へ向かう道中や信号待ちの際、花を売りに来る子どもたちに声をかけられることがあります。いわゆるストリートチルドレンみたいな子どもがいっぱいいて……。背景には大人による搾取の構造があることを理解しているため、安易にお金を渡すことが子どもたちのためにならないことも理解していますが、自分の子どもと同じ年頃の子どもが働く姿を見るのは、胸が痛みます。
首都であるヤンゴンでもこのような状況ですから、地方ではさらに厳しい環境に置かれている子どもたちが多く、この国が抱える課題の深さを日々実感しています。
ミャンマーは長年にわたり内戦が続いており、特に山岳地帯や国境地域では深刻な貧困状態が続いています。現在、国内避難民は約350万人とされ、その半数は子どもです。
紛争によって村を追われた家庭では、教育よりもまず生きることが最優先になります。子どもたちは農作業を手伝ったり、都市部では物売りをしたりして家族を支えています。仏教文化の影響もあり、子ども自身が「親のために働くことは良いことだ」と受け止めているケースも多く、状況は非常に複雑です。
ミャンマーで持続可能に運営できる学校を
— 地域参加型の学校建設事業とは?
現在取り組んでいるのが、地域参加型の学校建設事業です。従来の国際協力では、学校を建てて終わりとなり、十分に活用・維持されないケースも少なくありませんでした。
本事業では、建設前から村の人々と話し合い、学校づくりに参加してもらいます。地域が主体的に関わることで、学校を「自分たちのもの」として守り、運営していく意識を育てることを目的としています。
学校の建設費用は日本財団が全額負担しますが、持続可能性を確保するため、建設費の一部を住民側が基金として拠出することを条件としています。拠出方法は、現金を出し合う方法と、建設作業への労働参加による方法の二つがあり、地域の状況に応じて選択されます。
この基金は、農業や畜産などの生計活動に活用され、その収益が学校の補修や教員の給与に充てられます。地域が学校をつくり、守り、育てていく仕組みを通じて、長く地域に根付く教育環境の実現を目指しています。
— 仕事をする上で大切にしていることは?
お預かりした資金を使って事業を行う以上、事業終了後も10年、20年と地域に根づき、支援を受けた人たちが自分たちのものとして活かし続けてもらうよう、そういうプロジェクトになるようにということを一番大切に考えて働いています。

一人ひとりに届く支援の積み重ね
— 日本財団の仕事のやりがいは?
日本財団で仕事をしていると、さまざまな国からたくさんの支援の要請が寄せられます。
私が関わるミャンマーの状況も、残念ながら一向に良くなっているとは言えず、正直に言えば徒労感を覚えることもあります。
それでも、1つ1つのプロジェクトに関わるなかで、学校や手洗い場が完成し、学校で元気に迎えてくれる子どもたちや、支援によって栄養改善が進む姿を見ると、自分の仕事が確かに誰かの人生に届いていると実感でき、それが大きな救いになっています。
すべての人を救うことはできなくても、一人ひとりにとって意味のある支援を積み重ねていくことに、やりがいを感じています。
また、この事業を通じて強く感じるのは、ミャンマーの人々の自立心の強さです。
「ぜひ、うちの村で学校を作ってほしい」と声をかけてくださる村の人たちは、行政や国に頼るだけでなく、自分たちの子どもの教育は自分たちの手で守りたい、自分たちで良い学校を作ってあげたい、という強い思いを持っています。
実際にプロジェクトを進めるなかでも、村の人たち自身が資金を出し合い、協力しながら学校づくりに参加してくれます。日本財団はその取り組みを支える立場として関わり、学校が完成した後も、基金を活用して教員の宿舎を整備したり、学校運営を続けたりする様子が、毎年報告として届きます。
ただ学校を「作って終わり」にするのではなく、地域の人たちが自分たちの力で学校を守り、続けていける仕組みを一緒につくっていく。
そのプロセスに伴走できること、そして村の人たちの「やりたい」という思いに応えられることに、大きなやりがいを感じながら仕事をしています。

— 今後の目標はありますか?
今後の目標は、これまで「プロジェクトを任される側」だった立場から、「自分で事業をつくる側」になることです。
日本財団で働き始めてからは、「このプロジェクトを担当してほしい」「この事業をやってほしい」という形で、プロジェクトを任され、現場に行って事業を担当することが多くありました。様々な事業に関わるなかで、自分自身、「このタイプの支援はうまくいったな」「これは意味があるな」と感じるものも、だんだんわかってくるようになってきました。
これまでは、用意されたプロジェクトを一生懸命やることが中心でしたが、これからは、そうした経験を踏まえて、自分がこれまで培ってきた経験やネットワークを活かし、本当に自分がやりたい支援をゼロから構想し、自分の手で形にしていくことが次の目標です。将来、「あれは栗林が作った事業だよね」と言ってもらえるような仕事を残せたらと考えています。
子どもたちに届けたい未来
どんな環境にあっても、子どもが自分の将来を悩み、選べる世界を。
— 自身の仕事・プロジェクトを通じて子どもたちにどんな未来を届けたいですか?
子どもたち一人ひとりが、自分の人生をかけがえのないものとして捉え、将来について悩み、選び取っていける未来を届けたいと考えています。
その思いの原点にあるのが、「唯我独尊」という言葉です。中学生の頃、授業でこの言葉の本来の意味が、「すべての人間が唯一無二で、尊い存在である」という人間の尊厳を表したものであると教わりました。その話は、今でも強く心に残っています。
思春期だった当時の私は、将来や生き方について悩みながら過ごしていました。その中で、周囲の人もまた同じように悩み、自分の人生を大切に思いながら生きていることを知り、驚いた記憶があります。
現在、ミャンマー各地の国内避難民キャンプで子どもたちと関わる中で、ここにいる子どもたち一人ひとりの人生もまた、たった一度きりのかけがえのないものだと実感しています。厳しい環境に置かれ、将来の選択肢が多いとは言えない現実がある中でも、子どもたちは皆、幸せに生きたいと願いながら日々を過ごしています。
現地の子どもたちにも、自分の将来について悩み、「何を目指したいのか」「どんな人になりたいのか」を考えられる時間と余地を持ってほしい。そのための土台づくりとして、私たちの教育支援が少しでも力になれたらと考えています。
