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沖縄合同旅行レポート【交流編】食う、寝る、遊ぶ。新しい仲間と共に過ごし成長した子どもたちの夏

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最終日、朝の集いで宿舎前の丘に集合した「第三の居場所」各拠点の子どもたちとスタッフ
この記事のPOINT!
  • 2泊3日の沖縄旅行に、西日本10拠点の「第三の居場所」から約80人の子どもたちが参加
  • 人への思いやりや気遣いが、子どもたちの交流の輪を広げていく
  • 普段と違う環境や新たな出会いが、子どもたちをたくましく成長させる

取材:日本財団ジャーナル編集部

子どもたちの成長に欠かせない、教育や体験の機会。しかし、それと同じくらい大切なのは人との「出会い」やそこから得られる「学び」ではないだろうか。一緒にいて安心できる大人が近くにいること、そして楽しさや悲しさを分かち合える仲間が隣にいることで、子どもは健やかに成長していける。

日本財団が行政や民間のパートナーと協働し、全国100カ所の設置を目指して取り組む「第三の居場所」。そこでは、専門的な研修を受けたスタッフや地域のボランティアが、日々の関わりを通じて教育や体験機会を提供し、子どもたちにとって将来の自立に必要な力を育んでいる。

そこに通う子どもたちが、2泊3日の沖縄旅行へ出かけた。向かうは、沖縄県の離島・渡嘉敷(とかしき)島。果たして、どんな出会いが待っていたのだろ。今回は、子どもたちの「出会い」をテーマに3日間のレポートをお届けする。

渡嘉敷島に集まった、西日本10拠点の子どもたち

西日本にある10拠点に通う子どもたちが、夏の思い出づくりに沖縄県の離島・渡嘉敷島に集合した。下は5歳から上は12歳まで年齢もさまざま。もちろん育った環境も違えば、背景も違う。初日は拠点ごとに到着し、そこから船でケラマブルーの美しい海で有名な渡嘉敷島へと渡った。

飛行機と船の旅を経て、渡嘉敷島に到着した子どもたち

[沖縄旅行に参加した拠点]

子どもたちが、他拠点の子どもたちとちゃんと顔合わせをしたのは1日目の夜。夕ごはんを食べた後の夕べの集いの時だ。

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夕べの集いの様子。子どもたちや拠点スタッフたちはお揃いのTシャツを着用。カラーは拠点ごとに別けられ、ピンクやブルー、グリーンなど全10色

「こんばんは!日本財団のもっくんです。今回は、全国10カ所の拠点のみんなに集まってもらいました。全国合同旅行、渡嘉敷島、1日目の集いを始めたいと思います」

日本財団の本山勝寛(もとやま・かつひろ)さんの挨拶で始まった夕べの集い。宿舎での注意事項の説明や、引率のスタッフ紹介などが終わると、各拠点の交流を深めるためのゲームが始まった。

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各拠点から集まった子どもたちに挨拶をする、日本財団の本山さん

近くにいる人とジャンケンをして、負けた方が勝った方の肩に手を置き後に付いていくといったゲームや、チームで新聞紙をいかに細く長くちぎっていくか競うゲームなど、ルールはいずれも簡単で分かりやすいものばかりだ。

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ジャンケンを楽しむ子どもたち
写真:ジャンケンゲームにより、長い列を組んで部屋の中を移動する大勢の大人や子どもたち
ジャンケンゲームの結果、こんなに長い行列が
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どうすれば効率的に新聞紙をちぎれるのか相談中の子どもたち
写真:新聞紙ちぎりに夢中になって取り組む子ども
各班の結果発表、一番長くちぎれたのは…?

最初は少し緊張気味だった子どもたちも、ゲームを通してリラックスモードに。ジャンケンで出来た長い列に笑い合ったり、新聞ちぎりに熱中したりしているうちに、始めはきっちり別れていたTシャツのカラーも自然と入り混じり、和やかな雰囲気の中で1日目は終了した。

一度遊べば、もう友達。お互いを伸ばし合う子どもたち

一夜明けた2日目。この日は、海と陸、両方のアクティビティを午前、午後の入れ替えで楽しんだ。海は近くにある「阿波連(あはれん)ビーチ」でカヌーや自由水泳などを体験。陸は屋内での球技や卓球、貝殻クラフト作り、テーブルゲームなどさまざまな選択肢の中から好きなものを選ぶことができた。

陸のアクティビティを子どもたちがどのように楽しんだのか。まずは、体育館をのぞいてみよう。そこにはアクティビティが始まる前から、バスケットボールで汗を流す子どもたちの姿が。やがて複数の拠点の子どもたちが一緒になって、体育館は競技に興じる子どもたちの明るい声で満たされた。

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広々とした体育館を目いっぱい使って、バスケットボールや鬼ごっこを楽しむ子どもたち

初対面時にあるぎこちなさはほとんど感じられない。お互いがどれだけシュートを決められるか競う子どもや、下級生の子どもに「このボールは固いからこっちでやってみたら?」と柔らかいボールを渡す上級生など、それぞれがお互いを気遣いながら遊びを楽しんでいた。

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シュートを楽しむ子どもたち。互いのシュートに「惜しい!」といった声掛けも
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夢中で鬼ごっこをする子どもたち。遊びを共にすれば初対面など関係ない

「このアクティビティの前に子どもたちと、どうやって他拠点の子どもたちと仲良くなれるか話をしたんです。『恥ずかしいから話せないかも』『どのように話しかけたらいいか分からない』という声もあり、『沖縄の田場から来た、○○です』と挨拶をしよう!と決めたのですが、全くの杞憂でしたね(笑)」

そう語るのは、沖縄県・田場拠点のマネージャー・平林勇太(ひらばやし・ゆうた)さん。実際、子どもたちはすんなりと他拠点の子どもと仲良くなっていた。

「ちょっとやんちゃで短気な一面を持っている子どもが、他拠点の子どものことを気遣いながら、楽しそうに卓球をしている姿に、これまで知らなかった一面を知ることができました」とうれしそうに語った。

テーブルゲームや貝殻クラフト作りでも同様の光景が。ルールを知らない子どもに対し分かりやすく教えてあげる子どもや、「一緒にやろう!」とテーブルゲームに誘う子ども。道具や席が限られている貝殻クラフト作りでは、スタッフに手伝ってもらいながら、道具や材料をきちんとシェアするなど、他人を思いやりつつ取り組んでいた。どんな遊びでも友達と楽しさを分かち合えば、より面白くなるものだ。

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色とりどりの貝殻クラフト作りの材料
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オリジナルの写真立てを組み立てる子ども。「家族へのお土産にする」といった声が多かった
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貝殻を彩る際に使ったきれいなビーズ
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オセロゲームを楽しむ子どもたち

2日目の感想を発表し合った夕べの集いでは、上級生がしっかり発表する様子を見て、緊張しつつも自分の意見をしっかり伝えようとする下級生の姿も。子どもたちにとって、一番身近にいる先生は、同じ子どもなのかもしれない。

子どもたちが着るカラフルなTシャツのように、違いがあるから面白い

気が付けば、もう最後の朝。海の見える丘へ行き、子どもたちは日課の体操をした。気持ちのいい朝陽に包まれながら、長年の友達のようにリラックスした表情で語り合う子どもたち。出会ってからまだ2日しか経っていないのに、その適応力の高さに驚かされた。

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朝陽を浴びながらみんなで朝の集いを行う子どもたちと、スタッフ一同

宿舎を後にする前には、みんなで協力して清掃。スタッフに助けられながら、ほうき役やちりとり役などきちんと役割分担しながら、お世話になった場所をきれいにしていった。

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2日間宿泊した自分の部屋を隅々まできれいにする子ども

たくさんの思い出を胸に、一行は那覇市へと向かった。帰りの飛行機に乗る前に「おきなわワールド文化王国・玉泉洞」で最後のごはん。「ソーキそば」や「タコライス」といった沖縄を代表するメニューの他にも、「サトウキビご飯」や「クーブイリチー(昆布と豚肉を使った沖縄の伝統料理)」、南国らしいカラフルなフルーツなど現地でしか食べられない料理をみんなで堪能した。

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おきなわワールドにて、沖縄の南大東島発祥の「大東寿司」。サワラやマグロなどを甘いみりん醤油に漬けた沖縄ならではの料理
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子どもたちに一番人気があったチョコレートフォンデュ

自然と自分たちが通う学校の給食の話になり、「そんなメニューもあるの?」といった、暮らす場所の違いで盛り上がる姿も。みんな違うバックグラウンドを持っているからこそ、それぞれの良さを引き立て合うことができるのかもしれない。

普段と違う環境や出会いが、子どもたちの成長につながる

「子どもたちが積極的に交流してくれたおかげで、お互いに良い刺激があり、普段知らない一面を垣間見ることができました。旅行の経験などない子どももいましたが、『帰りたい』という子どもは一人もいなかったのが印象的でしたね」。そう語るのは、尾道拠点のマネージャーである山田克芳(やまだ・かつよし)さん。

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尾道拠点マネージャーの山田さん

阪神尼崎拠点スタッフの柳田舜平(やなぎた・しゅんぺい)さんも同意見で、「社会に出るにあたって大切な集団行動。初対面の子どもたちと、それを体験できた今回の沖縄旅行は、子どもたちにとっても大きな成長につながったと思います」と語った。

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阪神尼崎拠点スタッフの柳田さん

楽しい時間は、あっという間に過ぎ去り、拠点ごとに帰路に着く子どもたち。沖縄旅行の感想を聞くと「楽しかった」「海がきれいだった」という声や「新しい友達ができた」という声も。3日前、那覇空港で見た緊張しつつも期待にあふれていた顔が、新しい仲間と共に充実した時間を過ごしたことで、たくましい顔つきに変わっている気がした。

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目に見えるもの、見えないもの。たくさんの「お土産」を持って帰路に着く子どもたち

撮影:永西永実

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