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学校に通いたくても通えない子どもがいるのはなぜ?

イラスト:学校に通う子どもたちと、親と一緒に働く子どもたち
世界には学校へ通いたくても、さまざまな理由で通えない子どもがたくさんいる

小学生のためのSDGs入門記事。第3回は、目標(もくひょう)14「質(しつ)の高い教育をみんなに」について考えてみましょう。

学校は、子どもたちにふだんの生活の中で使う読み書きや計算を教えるほか、一人一人が持っている力を伸(の)ばすために欠(か)かせない場所です。しかし世界中には、学校に通いたくても通えず、教育を受けられない子どもたちがたくさんいます。

どうして学校に通えないのでしょうか?

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さまざまな理由で学校に行けない、世界の子どもたち

学校に通いたくても通えない子どもたち(6~17才)は、世界に約(やく)2億(おく)4,400万人(2021年)もいます。

そのうち、小学校にも行けない子どもたち(6~11才)の数は約(やく)6,700万人で、多くは開発途上国(かいはつとじょうこく)と呼(よ)ばれる貧(まず)しい国に集中しています。

子どもたちが学校に通えないのには、次のような理由があります。

●家が貧(まず)しく、子どものうちから働(はたら)かなくてはいけない

生活のために、子どもも農業や牧畜(ぼくちく)など家の仕事を手伝(てつだ)ったり、外に働(はたら)きに出たりしなければいけないことがあります。このことを児童労働(じどうろうどう)と言います。

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●親が学校に行かせない

親の中には、子どもを学校に通わせるよりは働(はたら)いてもらったほうがいい、と考える人もいます。また、女性は結婚(けっこん)して子どもを産(う)み、家事をするものだから、女の子は勉強しなくていい、と考えて男の子だけを学校に行かせる親もいます。

●戦争(せんそう)や災害(さいがい)が起こった

戦争(せんそう)や災害(さいがい)で家がこわれ、地域(ちいき)全体がボロボロになってしまっている国もあります。戦争(せんそう)が続(つづ)いて、子どもを兵士(へいし)として戦(たたか)わせている国や地域(ちいき)もあります。

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国民の総所得が低い国の10人のうち7人が十分な教育を受けることができず、10才までに簡単な文章を読むことができない。
左のイラスト:7人の働く子ども
右のイラスト:3人の勉強する子ども
世界には十分な教育が受けられず、簡単(かんたん)な文章を読むことができない人がたくさんいる
  • 会社からもらう給料(きゅうりょう)などの収入(しゅうにゅう)から仕事を行うために必要なお金を引いた合計金額(きんがく)

日本にも学校に通えない子どもたちがいる

日本には、全ての子どもに小中学校で教育を受けさせなければいけない、という法律(ほうりつ)があり、それを義務教育(ぎむきょういく)と言います。ほとんどの子どもたちが学校に通えていますが、それでもまだ学校に行けない子どもがゼロになったわけではありません。

日本には、どんな問題があるのでしょうか。

●貧困(ひんこん)の問題

日本では7人に1人の子どもが貧困状態(ひんこんじょうたい)にあります。小中学校の義務教育(ぎむきょういく)が終わった後、高校や大学には進学できず、働(はたら)いて家の生活を支(ささ)えなくてはいけない場合があります。

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●不登校(ふとうこう)の問題

日本では学校に行かない不登校(ふとうこう)の子どもが24万人以上(2022年)もいます。その理由は心の問題やいじめなどさまざまですが、学校に行かないことで勉強についていけなくなったり、友だちができなかったりして、ますます学校に行きづらくなる子どももいます。

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●ヤングケアラーの問題

親の代わりに家事や家族のお世話をしている子どものことを、ヤングケアラーと言います。ヤングケアラーになると、自分の時間が持てずに宿題ができない、友だちと過(す)ごす時間がない、家族のケアをするために学校を休まなくてはいけない、などの問題が起こります。

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貧困などを理由に一部の子どもに十分な教育が行き届いておらず、子どもたちの間に教育の不平等が生まれている。

イラスト:勉強がわからずに苦しむ子ども
日本でも貧困(ひんこん)や家族の世話で十分な教育を受けられない子どもがたくさんいる

教育が受けられないと、なぜ困(こま)るの?

学校に通えず、教育が受けられないことでいろいろな問題が起こります。

●文字の読み書きができない

本を読んだり、メールを送ったりすることができなくなります。ほかにも「注意」「毒(どく)」「立ち入り禁止(きんし)」などの文字が読めずにけがをするなど、危険(きけん)な目にあうことがあります。

●計算ができない

もらったお給料(きゅうりょう)の中で生活していく、といったお金の管理(かんり)ができなくなります。また、買い物の代金や、おつりがいくらになるのかも分からないので、人にだまされることがあります。

●仕事を選(えら)ぶことができない

将来(しょうらい)やってみたい仕事があっても、そのために何をすればいいのかが分からりづらくなります。また、仕事に必要な技術(ぎじゅつ)や能力(のうりょく)を身につけられないので、収入(しゅうにゅう)が安定した仕事につきづらくなります。

●社会に参加(さんか)しにくい

自分の名前や住所を書くことができないと、国や地域(ちいき)などの公共(こうきょう)サービスが受けられない、選挙(せんきょ)で投票(とうひょう)できない、といったことがあります。

教育は、子どもが健康(けんこう)に生活し、夢(ゆめ)や希望(きぼう)を持って将来(しょうらい)に向かっていくために欠(か)かせないもの。また、生きていく中で出会う、いろいろな問題を解決(かいけつ)していく力を伸(の)ばすことにもつながっているのです。

世界の15才のうち7.6億人が読み書きできない。
そのうち3分の2が女性。

左のイラスト:読み書きができない子ども
右のイラスト:3分の2が女性、3分の1が男性を示す円グラフ
世界には読み書きができず、質(しつ)の高い教育を受けることや、安定した仕事につくことが難(むずか)しい人がたくさんいる。そのほとんどが女性である

日本財団(にっぽんざいだん)の取り組み

日本財団(にっぽんざいだん)では、学校に通えない子どもたちをサポートするための取り組みを行っています。

子ども第三の居場所(いばしょ)(別タブで開く) 

困難(こんなん)をかかえる子どもたちが、家庭や学校以外で信頼(しんらい)できる大人や友だちと安心して過(す)ごせる居場所(いばしょ)をつくり、生きぬく力を育(はぐく)みます。

日本財団(にっぽんざいだん)ヤングケアラーと家族を支えるプログラム(別タブで開く) 

子どもたちが子どもらしい時間を過(す)ごし、その家族も安心して暮(く)らせる社会を実現(じつげん)するため、ヤングケアラーとその家族に対する支援(しえん)をしています。

日本財団(にっぽんざいだん)夢(ゆめ)の奨学金(しょうがくきん)(別タブで開く)

事情(じじょう)があって、血のつながった家族と離(はな)れて暮(く)らしている子どもたちを対象(たいしょう)にした奨学金(しょうがくきん※)です。悩(なや)み事(ごと)の相談にのるサポートも行います。

  • お金の心配なく学生が学校に通うために、お金を支援(しえん)する制度(せいど)

学校に通えない子どもの問題について私(わたし)たち一人一人ができることは何でしょう?

その答えは、ぜひ自分で調べて、考えて、自分にできることから取り組んでみてください。

本や図書館、インターネットで調べてみよう!

  • 世界で起こっている学校に通えない子どもの問題や、その国でなぜ問題が起きているのかを調べてみよう
  • 子どもが学校に通えないことが、私(わたし)たちの生活やその国の未来(みらい)にどのような影響(えいきょう)をあたえているか調べてみよう
  • 学校に通えない子どもの問題をなくすために、どのような取り組みが行われているか調べてみよう

「学校に通えない子どもの問題」について学べるおすすめの本

出版(しゅっぱん):合同出版(ごうどうしゅっぱん) 著(ちょ):白木朋子(しらき・ともこ)

『子どもたちにしあわせを運ぶチョコレート 世界から児童労働(じどうろうどう)をなくす方法』(外部リンク)

カカオ豆はおいしいチョコレートになっていきますが、カカオ畑では、たくさんの子どもたちが働(はたら)かされています。子どもたちを働(はたら)かせない「しあわせを運ぶチョコレート」が発売されるまでの物語。

出版(しゅっぱん):合同出版(ごうどうしゅっぱん) 著(ちょ):鬼丸昌也(おにまる・まさや)、小川真吾(おがわ・しんご)

『ぼくは13歳(さい) 職業(しょくぎょう)、兵士(へいし)。』(外部リンク)

毎年50万人、毎分1人の命が小型(こがた)の武器(ぶき)によってうばわれています。それらを持たされ、兵士(へいし)として戦(たたか)わされてきたのは子ども兵(へい)です。その問題の現状(げんじょう)と、私たちにできることが書かれています。

まわりの人に話を聞いてみよう!

  • お父さんやお母さん、近所のおじさん、おばさん、おじいさん、おばあさんに子どものころの学校がどうだったか、学校に通えない子どもの問題について何ができるか意見を聞いてみよう
  • いろんな人の意見を聞いたら、自分に何ができるか考えてみよう

自分にできることからやってみよう!

  • 調べたこと、聞いたこと、考えたことをノートにまとめて家族、友だちに発表してみよう
  • 学校に通えない子どもの問題を支援(しえん)する団体(だんたい)とつながる、児童労働(じどうろうどう)と関(かか)わっていない食べ物や服を選(えら)ぶなど、できることはたくさんあるはず

自分で解決(かいけつ)方法を見つけるのにおすすめ!

日本ユニセフ協会(きょうかい)(外部リンク)

世界中の子どもたちの命と健康(けんこう)を守るために、世界の約(やく)190の国と地域(ちいき)で活動しています。世界の子どもたちがかかえている問題について、国やテーマごとに調べることができるほか、寄付(きふ)をすることもできます。

ワールド・ビジョン・ジャパン(外部リンク)

子どもたちを守り、健(すこ)やかな成長を助けるための支援(しえん)活動を行っています。貧困(ひんこん)、紛争(ふんそう)、災害(さいがい)といった、子どもたちが暮(く)らしの中でかかえている国際(こくさい)問題を知ることができ、募金(ぼきん)も受け付けています。

イラスト:KIKO

[参考文献]

日本ユニセフ協会「ユニセフの主な活動分野|教育」(外部リンク)

JICA(国際協力機構)「世界が抱える様々な課題|教育の問題」(外部リン/PDF)

文部科学省「令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」(外部リンク/PDF)

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