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毎日笑顔で過ごしたい! 「ウェルビーイング」ってなんだろう?
執筆:日本財団ジャーナル
10代の今だからこそ読んでほしいトピックをお届けする「ジャーナル@ソーシャルグッドラボ」。皆さんは、「ウェルビーイング」という言葉を聞いたことがありますか?
「ウェルビーイング(Well-being) 」とは、「体や心、生活が満たされ、“幸せだ”と実感できる状態」のことをいいます。1900年代初めごろに生まれた考え方で、1946年にWHO(世界保健機関)が提唱し、世界に広がりました。
皆さんや皆さんのご家族、お友だちはいま、「ウェルビーイング」でしょうか。悩んでいたり、良い状態になかったりしていませんか?
今回は、皆さんの人生に欠かせない「ウェルビーイング」の考え方を解説し、皆さんの「ウェルビーイング」を高める取り組みや、皆さんが今日からできることを紹介します。
この記事のPOINT!
- 「ウェルビーイング」は体と心、社会の健康によって実現するもの
- 日本の子どもたちは、幸福度を示す指標のアンバランスさが目立つ状態にある
- 一人一人の意識や取り組みによって、「ウェルビーイング」になれる
「ウェルビーイング」をつくる3つの要素
「ウェルビーイング」は互いに関連する3つの要素からできています。
1.体の健康
病気やけががなく、睡眠と栄養が十分で、元気に過ごせている。「心の健康」「社会の健康」の土台になる要素
2.心の健康
不安やストレスなどに悩むことなく、気持ちが安定しており、ポジティブに生活できている。毎日、充実感や満足感がある
3.社会の健康
良い人間関係を築けている。自分が誰かのために役立つという実感を持ちながら、自分らしく過ごせている
この3つが揃うと心と体の両方が満たされ、「最高のウェルビーイング」が実現します。

なぜいま「ウェルビーイング」が注目されているの?
「ウェルビーイング」が注目を集める背景には、現代ならではの事情があります。一緒に「ウェルビーイング」の大切さを考えてみましょう。
●お金があるだけでは、心は満たされない
かつて日本人は、経済的な豊かさ(良い会社に就職し、多くの給料を手にできる状態)を追い求めていました。
でも、現代は将来に希望を持てない人が増えています。社会が複雑になり、ストレスにさらされ続け、悩みや不安、心に病を抱える人が増えています。
生活できるお金があって衣食住に困っていなくても、「心は満たされはしない」と、人々は気づき始めました。
心と体が健康で、社会と自分がつながり、役立っているという実感こそ必要だとの考えから、「ウェルビーイング」に注目が集まっています。
●「ウェルビーイング」が世界共通の目標になった
SDGs(持続可能な開発目標)を知っていますか? 国連が決めた、「世界の課題を解決し、誰一人取り残さないより良い世界をつくろう」という目標です。
全部で17項目あり、「ウェルビーイング」は3番目の「すべての人に健康と福祉を」として加えられています。
「すべての人に健康と福祉を」の、“健康”は「ウェルビーイング」の考え方そのもの。“福祉”という言葉には、健康で満たされた生活ができる社会環境を整えよう、との意味が込められています。
世界各国がSDGsの達成に向け動いていることも、「ウェルビーイング」が注目を集める理由です。
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●学校教育でも「ウェルビーイング」を向上させる方針が立てられた
社会構造の変化や価値観の変化などにより、学校は多くの困難に直面しています。不登校生や無気力な子どもの増加、いじめなどは、困難が形になって現れたものです。
学校生活の充実は、子どもの「ウェルビーイング」の実現にとても重要です。一人一人の可能性を引き出す教育や、ペースを合わせた学習の実現などの方針が、文部科学省の「教育振興基本計画(※)」でも触れられています。
学校もまさに、「ウェルビーイング」の実現に動いている最中なのです。
- ※ 文部科学省が作成した「教育振興基本計画」では、2006年に改正された教育基本法に基づき、政府が策定する教育に関する総合計画。今後5年間の国の教育政策全体の方向性や目標、施策などを定めている
日本の子どもの幸福度は36カ国中14位
ここで、世界に目を向けてみましょう。
ユニセフによる「子どもの幸福度ランキング(※)」ともいうべき調査があります。最新の調査結果(2025)から、日本の子どもには両極端な要素が見られることが分かりました。
- ※ ユニセフ「レポートカード 19: 予測できない世界における子どもたちのウェルビーイング」(2025年5月発表)
●体の健康は世界トップ
日本の子どもは、身体的健康の調査結果で第1位です。
子ども(5~14歳)の死亡率は調査対象となった国の中で最も低く、過体重(肥満)も他国と比べて低いスコアを出しています。
医療体制や健康保険制度が整備され治療を受けやすいこと、良好な食生活や衛生事情によって健康な体を維持しやすいことが、良い結果につながっていると考えられます。
●精神的な幸福度は32位
精神的幸福度の順位は調査対象36カ国中、32位でした。
精神的な幸福度は、生活の満足度と自殺率の2つで構成されています。日本は、生活の満足度は他国をわずかに上回るものの、自殺率が極めて高く出ています。

日本には「生活に不満はなく体も健康、しかし心は悲鳴を上げている」、そんな子どもが多いといえます。
心と体の幸福度のつり合いがとれていない状態を解消することが、日本が解決すべき課題といえます。
●学力・社会的スキルは12位
学力と社会性を指標とする「スキル」は、36カ国中12位でした。
日本の子どもの学力的スキル(数学、読解力など)、は対象国全体と比べても高い水準です。ただし、家庭の経済力の差が学力差につながっている点が心配されています。実際、経済的要因による学力格差の指標で、日本は上から8番目に位置します。
社会的スキルは、「すぐに友だちができる」といった人間関係のスキルです。日本の子どもは他国に比べて社会的スキルが低めで41カ国中29位でした。

専門家によると、日本の現状には3つの要因があるといいます。
●自己肯定感の低さ
日本の子どもは、自分を無条件で「かけがえのない存在」と認める気持ち(自己肯定感)が低い傾向がある
●人間関係の課題
日本の子どもは、身近な人との精神的なつながりが弱く、コミュニケーション不足の傾向がある
●競争とプレッシャー
勉強や受験競争などのプレッシャーが大きい。常にストレスにさらされ、満足度が低下する
日本の子どもの自己肯定感の低さは、こども家庭庁の調査でも、同じ結果が出ています。
子どもの心と体の健康は、社会全体で考えるべきテーマ。まずは、私たち自身が「ウェルビーイング」についてくわしくなりましょう。そして、身近な大人に伝え理解してもらい、社会全体の変化につなげていきませんか。
子どもの「ウェルビーイング」を向上させる取り組みの例
各地で、子どもの「ウェルビーイング」を高める取り組みが実践されています。北海道と東京での実例を見てみましょう。
●北海道・中頓別町(なかとんべつちょう)「人生100年学びの拠点・中頓別学園」
北海道・中頓別町では、幼少中一貫の義務教育学校「中頓別学園」を2026年4月に開校予定。保育から教育へ、子どもたちが安心して学び続けられる学校としてだけでなく、あらゆる世代を対象とした「人生100の学びの拠点」を目指し、教育委員会、学校、地域が一体となって取り組んでいます。
・教育に特化したウェルビーイングの実践事例を、自治体同士で共有
中頓別町は、東京学芸大学と5つの自治体が連携する「教育ウェルビーイング研究開発プロジェクト」に参画。各自治体の教育施策や現場に即した独自のウェルビーイング指標の開発に注力しています。
・地域が一体となり、子どもが主体となって学び、成長できる環境づくり
中頓別学園の開校に向けて月に1度、「新しい学校づくり授業」を実施。地域の人たちも参加し子どもたちと対話を深めながら、子どもの自ら学ぶ力や、社会を生きるための力を育んでいます。
・学びの選択肢を増やす仕組みを取り入れ、一人一人の可能性を伸ばす
子どもたちが、自ら選び、調べ、学び合うUDL(学びのユニバーサルデザイン)の視点を導入。一人一人の可能性を伸ばす授業の実践を始めています。子どもたちが「公平」に学び、成長できることを大切にしています。


●東京学芸大学附属竹早中学校「生徒が主体となった未来型の学習空間づくり」
パソコン室のリニューアル計画には、生徒(使う人)が設計から参加しています。計画を大人(企業・学校・教員)任せにせず、生徒の声を取り入れた結果、使いやすく愛着が湧く空間となりました。
子どもと大人が協力し合って、素晴らしい空間が生み出された例です。
・生徒の「やりたい」を形にできる空間へ
計画の進行時期は、コロナ禍でした。活動が制限される中、「もっといろいろやってみたい」という生徒の思いを形にできるよう、多様な学習を支え創造力を刺激する空間へと改修しました。
・型にはまった考え方にとらわれない、家具メーカーを交えたワークショップ
「学校」「教室」などの枠にとらわれず、「リラックスして新しいアイデアを生み出す場」にしたいと、家具メーカーと力を合わせました。生徒も会議や改修作業に参加しています。
・多様な工夫により、授業での活用が拡大
ワークショップから生まれた多様なスペースや家具が、探究学習といった授業に活気を生み出しています。通常教室とは異なる個性的な空間に向かう生徒の足取りも軽いそうです。


「ウェルビーイング」を高めるために、何ができる?
皆さんが自分自身の「ウェルビーイング」を高めるために、今日からできることはなんでしょうか。
●安心できる人間関係をつくってみよう
「ウェルビーイング」には、安全で安心できる環境と、健全で親しみある人間関係が重要です。
まずは、友だちの話を否定せず、じっくり耳を傾けてみてください。友だちや親に、自分の正直な感情を言葉にして伝え、気持ちの交流を試みるのも良いアプローチです。交流は、やがて信頼関係につながります。
失敗しても大丈夫です。失敗はダメなことではなく、次の挑戦への土台。挑戦を歓迎し、互いに認め合える仲間を増やしていきましょう。
●自分で選ぶ機会を増やしてみよう
自己効力感(「自分はできる」という感覚)は、物事の選択で育まれます。日常生活で、意思を持って選択する機会を増やしてみてください。
「宿題を進める順番を決める」「自主学習のテーマを自分で決める」などは、今日からできる取り組みです。学校の係決めも他人任せにせず、自分が貢献できそうな係を選択するようにしましょう。
小さな選択を積み重ねるうちに、自己効力感が高まり、自信が持てるようになってきます。
●結果も大切だけど、「プロセスの良さ」も振り返ってみよう
テストやスポーツの大会など、皆さんの生活は結果(点数・勝敗)に注目が集まりがちです。
ただ、「ウェルビーイング」には、結果に至るまでの努力や挑戦の承認が大切です。まわりの大人にも、「結果より過程を見てほしい」と伝えてみてください。
工夫したポイントや、くじけそうなときに踏ん張った気持ちなど、自分の取り組みを丁寧に振り返るうちに、自己肯定感が高まっていくことでしょう。
●心と体の健康を整える習慣をつくってみよう
「ウェルビーイング」の土台は、心と体の健康です。自分自身を健やかに保つ習慣も大切にしましょう。
十分な睡眠と食事は、生活の基本です。そして適度な運動は、心のリフレッシュに役立ちます。
ゲームやスマホはルールを決め、自律心を持って使います。悩みや不安は早めに周囲に相談し、一人で抱え込まないことも重要です。
生活が整うと気持ちが安定し、心を保つ自己調整力も向上します。
●学校、習い事、地域など、自分にとって「居心地の良い居場所」をつくろう
家庭以外に、自分らしくいられる居場所(サードプレイス)をつくりましょう。心地よくいられる空間がいくつかあると、精神的な安定度が高まります。
学校は、教室以外に図書室や保健室も居場所になります。習い事や児童館、クラブチームなどもサードプレイスに適しています。
オンラインのコミュニティも良いでしょう。ただし、オンラインコミュニティは安全性に懸念が残るため、親や信頼できる大人と一緒に探すようにしましょう。
![子どもと信頼関係を結べる大人の存在が重要
子どもを中心に次の存在が重なる
[親・家族]
・毎日の生活の基盤であり
・子どもの心身の幸福度の土台
[教職員]
・学校や塾、放課後の時間
[地域の人々]
・好きなこと・つながり ・ 居場所](/wp-content/uploads/2026/01/SGL11_10.jpg)
心も体も満たされた、良い状態を指す「ウェルビーイング」。社会の変化が必要なものもあれば、私たちの心がけで実現するものもあります。いま自分ができることから、取り組んでいきませんか。
イラスト:白鳥みち子
参考資料:
ベネッセ ウェルビーイングLab「ウェルビーイング(Well-being)とは? 意味・注目される背景や取り組みをわかりやすく解説」(外部リンク)
文部科学省「【資料8】ウェルビーイングの向上について(次期教育振興基本計画における方向性)」(外部リンク/PDF)
文部科学省「第4期(令和5年度~令和9年度)教育振興基本計画」(外部リンク/PDF)
ユニセフ「レポートカード19 先進国の子どものウェルビーイング コロナ禍後、急激に悪化」(外部リンク)
ユニセフ「イノチェンティ研究所レポートカード19ハイライト~日本の子どものウェルビーイング~」(外部リンク)
こども家庭蝶「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査(令和5年度)|こども家庭庁」(外部リンク/PDF)
文部科学省「ウェルビーイング向上のための学校施設づくりのアイディア集」(外部リンク/PDF)
- ※ 掲載情報は記事作成当時のものとなります。