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給食から探究する「食品ロス」。中高生ができることって?【ワークシート付き】

世界的問題となっている「食品ロス」。身近な学校給食から解決の糸口を、井出留美さんと探ります
この記事のPOINT!
  • 日本では2024年度に約461万トンの食品ロスが発生し、その損失は約3.8兆円に上る
  • 捨てられる食べ物の多くは燃やされており、その処理には私たちの税金が使われている
  • 一人一人が食品ロスを減らすための第一歩は、自分が食べられる適量を知っておくこと

※【巻末特典】探究学習で使える「ワークシート」を無料でダウンロードできます

取材:日本財団ジャーナル編集部

中高生が専門家の知見を借りながら、身近な社会課題について自ら調べ、考えることを助ける連載企画「探究ジャーナル」。第4回のテーマは「食品ロス」です。

給食の時間が終わったとき、返却される食缶のなかにまだ残っているおかずやご飯。残菜バケツに捨てられる食べ残し。それらは決して珍しい光景ではありません。

食材として生産された後、飲食店や家庭など、食べられるまでのあらゆる段階で、まだ食べられるにもかかわらず捨てられてしまう食べ物のことを「食品ロス」と言います。

農林水産省と環境省の推計によると、日本では2024年度に約461万トンもの食品ロスが発生しました。その損失をお金に換算すると、約3.8兆円に上ります(※1)。

給食の食べ残しは、一人一人の好き嫌いの問題にとどまらず、食を取り巻く仕組みの問題でもあります。なぜ食べ残しが起きるのか、残った給食はどこへ行くのかをたどると、私たちに何ができるのかが見えてきます。

今回は、食品ロス問題に詳しいジャーナリストの井出留美(いで・るみ)さんにお話を聞きました。

学校給食は、大量の食品ロスを出している

給食の「食品ロス」は、なぜ起きるのか

——学校給食では、どれくらいの食べ物が捨てられているのでしょうか。

井出さん(以下、敬称略):環境省の推計では、学校給食から出る食品廃棄物は、児童・生徒1人当たり年間約17.2キロ(2013年度)です。そのうち約7.1キロが食べ残しです(※2)。

この調査結果から推計すると、日本全国の学校給食から出る食品ロスは年間約5万トンにも上るといわれています。

調理残さ/5.6キロ
食べ残し/7.1キロ
そのほか/4.5キロ
合計17.2キロ
児童・生徒1人あたりの年間の食品廃棄物の発生量。出典:平成26年度 学校給食センターからの食品廃棄物の発生量・処理状況調査結果|環境省

井出:そもそも食品ロスが起こる理由は「必要な量」「用意した量」「実際に食べた量」に差が生まれ、余った部分が捨てられることです。これは、お店でも家庭でも同じです。

例えばホテルや飲食店であれば、予約制でない限り、お客さまが何人来るか分からず、用意した分が売れ残ることがありますよね。家庭なら、冷蔵庫に入れっぱなしにしてダメにしてしまうこともあるでしょう。

しかし給食の調理場は、野菜の皮など、むかなければいけないものを除き、ロスがほとんど出ない仕組みになっています。食べる人数もあらかじめ決められており、食品の衛生管理に厳しいルールがあるため、すべての食材はその日に納品され、その日のうちに使い切らなくてはいけません。そう考えると、食べ残しの影響がとても大きいのです。

食品ロスが起こる原因について話す井出さん
 

——給食の食べ残しがそんなに多いのは、「好き嫌い」が原因でしょうか。

井出:野菜や魚など、子どもたちが苦手な食べ物は残りがちな傾向があるため、好き嫌いの影響は大きいですね。でも、もっと細かく見ていくと、好き嫌い以外にも次のような理由があります。

食べる時間の短さ:給食の時間は、配膳も含んで40~45分ほどの学校が多い。前の時間に体育などで教室を移動しているとさらに短くなることがある。
・体格の違い:同学年だとしても生まれ月によって1年近い差があるため、体格は人それぞれ。食べられる量も違う。
・気候や体調の変化:近年の猛暑や厳しい寒さなどで体調を崩す、食欲が湧かないなどのケースもある。

井出:食べきれない人の分を食べたい人にあげれば良い、という考えもあります。しかし、給食の献立は1食で必要な栄養を確保するように作られているため、栄養バランスが偏るという課題もあるんです。

食べ物を、捨ててはいけない理由

——そもそも、どうして食品ロスが問題なのでしょうか。

井出:食べ物を廃棄することは「環境・お金・社会」それぞれに損失をもたらすからです。

損失:環境
何が失われるか/燃やすときに出る二酸化炭素など、温室効果ガスの排出	
どれくらいの損失か/世界の温室効果ガスのうち、食品ロス由来は8〜10%(※3)

損失:お金
何が失われるか/捨てられた食べ物の価値。他のごみと一緒に燃やす処理の費用
どれくらいの損失か/食べ物の価値、約3.8兆円(※1)。ごみ処理全体で年間2兆4,489億円(※4)

損失:社会
何が失われるか/そのお金で本来できたはずの、教育・医療・福祉・雇用への投資
どれくらいの損失か/ごみ処理費だけで、国から国立大学に配られる運営費交付金の倍以上(※5)

井出:「環境」の面では、ごみを燃やすと温室効果ガスの一つである二酸化炭素が排出されます。これは気温の上昇にもつながります。その量は、航空業界の排出量のほぼ5倍に当たるとされています。誰もが食べますから、食の与える影響は大きいんです。

「お金」の面では、まだ食べられるものを捨てる損失に加え、ほかのごみと一緒に処理するためのお金もかかります。日本の場合、ごみはほとんど燃やされますが、その焼却費用は私たちの税金から支払われています。

「社会」の面では、教育や奨学金、医療や福祉、雇用など、もっと社会の役に立つことに使えたはずのお金が、食品ロスによって失われています。例えば、国立大学86校と4つの法人に国から配分される運営費交付金は、1年間で1兆1,000億円未満ですが、これはごみ処理にかかる費用の約半分です。

——食品ロスは、飲食店や家庭から出るものがほとんどですか。

井出:畑や農場で廃棄されているものもたくさんあります。例えば、大きさが不揃いだったり、傷があったりするなどの理由で、出荷の規格に合わない野菜や果物。また、サイズが小さい、採れた量が少ないなどの理由で、市場では価値が付かない未利用魚です。

こういった出荷前に廃棄されてしまう食物について、日本では食品ロスの集計に含まれていません。世界でも、畑や農場で発生するロスが見過ごされていることが問題視されています。

畑に放置された廃棄野菜

捨てられた給食は、どこに行くのか

——先ほど、食べ残した給食はほかのごみと一緒に燃やされてしまうと聞きました。燃やすしか方法はないのでしょうか。

井出:自治体によって異なりますが、全国で見ると多くが焼却されています。なかにはリサイクルに取り組んでいるところもあり、2022年に行われた文部科学省の委託調査では、回答した866の自治体のうち40.0パーセントが、給食から出た食品廃棄物の再生利用に取り組んでいました。

最も多いのは、肥料にする「肥料化」で26.1パーセント、次に家畜のえさにする「飼料化」で12.3パーセントです(※6)。

[愛知県小牧市の事例]
愛知県小牧市では、市内すべての給食センターで残食などを肥料にし、地域の農家に無償で配っています。その肥料で育てられた野菜を買い入れ、学校給食に使うことで資源を循環させているのです。

ただ、リサイクルしたいと思っても、処理機を設置する場所がない、機械の維持にお金がかかる、せっかく堆肥や飼料を作っても近くに使ってくれる農家がいない、といった課題があり、実現できないことがあります。

——食べ物が捨てられると、作ってくれた人が悲しむかもしれませんね。

井出:日本の食料自給率はカロリーベースで37パーセントと過去最低水準で、食べ物の6割以上を輸入に頼っています(※7)。国内の生産を支える人たちには高齢者も多く、最近は猛暑や豪雨などの気候変動もあり、飼料や燃料の値段も上がっています。そんななかで生産を続けるのは、とても大変なことなんです。

給食で考えると、食品衛生上、給食作りはその日のうちに調理して食材を使い切らなければならない、とお話ししました。前日から仕込みをすることができないため、給食の調理員さんにかかる負担は、飲食店や家庭よりも大きいはずです。

そんなふうに、農家さんや調理員さんがいろいろ工夫して作ってくれたものを捨てるのは、本当に忍びないことです。

日々、自然と向き合い農作物を育てる農家さんたち
朝早くから給食の準備をする調理員さんたち

学校でできる、食品ロスを減らす取り組み

——一人一人が食べ残しを減らすために、まず学校給食ではどんなことができるでしょうか。

井出:体の大きさや食べる量は一人一人違いますし、運動量が多い場合は消費するエネルギーも多くなります。よそう量を一律にするのではなく、その子その子に合った量を配膳できるとよいですね。

[神奈川県横須賀市の事例]
神奈川県横須賀市では、「真の残食ゼロ」という考え方を掲げています。食缶の中身を人数で均等に分ける配膳を基本にしながらも、完食を無理強いすることはせず、食に関する指導を通じて「必要量」と「自分がどのくらいの量を食べられるのか」を知り、児童一人一人が「自分の適量」を理解できるようにする取り組みです。

自分の適量を知ることは学校給食以外の場面でも役立ちます。お家ではもちろん、外食をするときでも、あらかじめ「ご飯はお茶碗半分にしてください」などと食べきれる量を伝えることができれば、食品ロスを減らせます。

井出:自由研究などを利用して、身の回りの食べ物の賞味期限の表示を調べてみるのがおすすめです。

賞味期限には、「2026年10月28日」のように日付まで書くものと、「2026年10月」のように年月だけを書くものがあります。作ってから賞味期限までが3カ月を超える食品は、年月だけで表示してもいいことになっています。年月表示にするとお店や倉庫で商品を日付ごとに細かく管理しなくてよくなり、食品ロスを減らせるとされています。

つまり、年月だけで表示している食品は、その企業が食品ロスを減らす工夫をしている一つの目安になるのです。

それでも、日付まで入っている食品はまだたくさんあります。調べてみて気になったら、その企業のウェブサイトにある問い合わせフォームから、「なぜ日付まで入れているのですか」と聞いてみてください。お客さんの声がきっかけで、企業が表示を見直すこともあります。

商品のパッケージにある賞味期限。年月のみが記載されている

家でできる、食べ物を無駄にしない工夫

——学校だけでなく、家でもできる取り組みも教えてください。

井出:シンプルな方法として、スーパーなどに食材を買いに行くときは、お茶を飲んだり、軽くご飯を食べたりして、お腹を落ち着かせていくのがおすすめです。お腹が空いていると、つい余計なものまで買ってしまい、食べきれずに捨てることにつながりやすいからです。

——食べきれない食品があるときは、捨てる以外にどんな方法があるのでしょうか。

井出:家庭で余っている食品を持ち寄って集める「フードドライブ」という取り組みが、全国各地で行われています。集められた食品は「フードバンク(寄付された食品を集めて管理し、必要なところに配布する団体)」などを通じて、食べ物を必要としている人のもとへ支援として届けられます。

自治体や公民館がフードドライブを行っていることもありますし、ショッピングモールやスーパー、コンビニエンスストアが窓口になっていることもあるので、まずは自宅や学校の近くに回収窓口があるか探してみてください。団体によっては、郵送での寄付も受け付けています。

——賞味期限が過ぎた食品は、捨てなければいけないのでしょうか。

[Aさんの事例]
冷蔵庫の奥から、賞味期限が2日過ぎたヨーグルトが出てきました。色や匂いを確認するためにふたを開けてみましたが、悪くなっている様子はありません。家族は「もう捨てちゃおう」と言いますが、食べられるものかもしれないと思うと、捨てるべきか迷ってしまいました。

※実際に起こりうる場面を想定し作成

冷蔵庫から出した賞味期限切れのヨーグルトを捨てようか悩んでいる中学生の女の子
賞味期限は切れているが見た目や匂いに変化なく判断に迷うことはよくある

井出:「消費期限」と「賞味期限」の違いを知っておきましょう。

賞味期限は、品質を保てる期間に「安全係数」(安全性を確保するための余裕)をかけて、短めに設定されています。2025年のガイドライン改正で、安全係数はできるだけ1に近づけるよう見直されましたが、以前は0.8以上が目安とされていました。例えば10カ月おいしく食べられるカップ麺なら「賞味期限8カ月」と表示されていました。

賞味期限を過ぎたからといって、すぐに食べられなくなるわけではない、と覚えておくといいですね。

・消費期限:安全に食べられる期限。お寿司や生クリームのケーキ、お弁当など、品質が急に下がっていく食品に付いている。期限を守ったほうがいい
・賞味期限:指定された方法で、開封せずに保存した場合に「おいしく」食べられる期限。缶詰やレトルト食品、飲料水など、比較的長く保存できる食品に付いている

取材から学んだこと

食品ロスは、私たちのとても身近なところで起こっています。それなのに、生産者の人たちの苦労や、処理にかかるお金のことなどは、どこか遠くの出来事のように感じがちです。

「食べ物を捨てる」ことが何を引き起こしているのかを学び、私たち一人一人の食べ方が、社会全体の課題につながっているのだと改めて意識するようになりました。

中高生のみなさんへ

  • 好き嫌いを減らすために、どんな工夫ができそうですか?
  • 自分に合った給食の量を、どう見つけてみますか?
  • 冷蔵庫や納戸のなかに、期限が切れそうな食べ物はありますか?
  • 食べきれない食材を、あなたならどのように活用しますか?

無償でダウンロードできるワークシート(外部リンク)を活用して、友だちとも意見を交わしながら、身の回りの食べ残しや食品の表示などを調べ、「食品ロスを減らすルール」を作ってみましょう。

撮影:十河英三郎

※1.出典:食品ロスによる経済損失及び温室効果ガス排出量の推計結果|消費者庁(外部リンク/PDF)

※2.出典:平成26年度 学校給食センターからの食品廃棄物の発生量・処理状況調査結果|環境省(外部リンク/PDF)

※3.出典:Food Waste Index Report 2024|UN Environment Programme(外部リンク)

※4.出典:一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和6年度)について |環境省(外部リンク/PDF)

※5.出典:国立大学法人運営費交付金等についての文部科学省の基本的考え方|文部科学省(外部リンク/PDF)

※6.出典:学校給食における食品ロス削減に関する調査研究〜|環境省(外部リンク/PDF)

※7.出典:令和7年度食料自給率を公表します|農林水産省(外部リンク)

井出留美(いで・るみ)

ジャーナリスト。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、JICA海外協力隊を経て、日本ケロッグ広報室長に就任。2011年、自身の誕生日に起きた東日本大震災の食料支援で、食べ物の廃棄に直面したことを機に株式会社office 3.11を設立。以来、執筆や講演を通じて食品ロス問題を発信し、「食品ロスの削減の推進に関する法律」の成立にも協力。令和2年度食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞などを受賞。著書に『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎)、『SDGs時代の食べ方 世界が飢えるのはなぜ?』(筑摩書房)などがある。

井出留美 公式サイト(外部リンク)

  • ※ 掲載情報は記事作成当時のものとなります。
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