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日本の資源・食料に関する社会課題

『資源・食料に関する社会課題』と題されたインフォグラフィック。水産資源の減少、食品ロス、資源の枯渇、そして『かう・つかう・わける・まわす』のサイクルを示すサーキュラーエコノミーの概念がイラストで描かれています。
限りある地球の資源をどのように活用していくかが、いま試されている

私たちの毎日の生活を支える「食」や「エネルギー」の基盤は、今、かつてないほど不安定な状況に置かれています。

輸入に依存し続ける食料供給の脆弱性や、飽食の影で進む大量の食品ロス、海や陸で失われつつある天然資源、そして一次産業の担い手の減少など、日本の持続可能性を揺るがす課題は私たちのすぐそばに広がっています。

次世代に豊かな食卓と安心できる社会を引き継ぐために、今どのような危機が迫り、どのような解決への道筋が描かれているのでしょうか。

日本の「資源・食料」にまつわる5つの重要な社会課題について、現状を正しく理解し、私たちにできることを考えていきましょう。

目次

●食品ロス

●食料自給率の低さ

●資源の枯渇

●水産資源の減少

●一次産業の後継者不足

食品ロス

食品ロスとは、まだ食べられるのに廃棄されてしまう食品のことで、メーカーや飲食店から発生する「事業系」と、家庭での食べ残しや期限切れによる「家庭系」に二分されます。

環境省の「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和5年度)」(外部リンク)によれば、国内の年間発生量は約464万トンに上り、これは国民一人一人が毎日おにぎり約1個分(約102グラム)を捨てている計算になります。

日本では2015年の国際連合総会で採択された持続可能な開発目標「SDGs」に端を発し、2000年度比で2030年度までに食品ロスを半減させるという政府目標を掲げ、食品ロスの削減に取り組んできました。

「事業系」はすでに目標を達成し、2000年度比で2030年度までに60パーセント削減させる目標を新たに設定しましたが、「家庭系」は依然として削減が必要な状況です。廃棄に伴う二酸化炭素の排出や膨大な処分費用は、環境、経済の両面で深刻な負荷となっています。

世界で排出される1年分のCO2のうち、その10%(10分の1)が食品ロスから排出されていることを示す比較図。この量は、アメリカとイギリスのすべての自動車から排出されるCO2の2年分に相当することが、国旗と車のイラストを用いて視覚的に表現されています。
世界で排出されるCO2の10分の1が、食品ロス由来といわれている

解決に向け行政や企業は「賞味期限」の年月表示への変更や、未利用食品を福祉施設へ寄付する「フードバンク」の支援などを進めています。

未来の環境を守るためには、私たち消費者の行動変容が不可欠です。購入してすぐ食べる場合は棚の手前から取る「てまえどり」の実践や、食材の使い切り、賞味期限の正しい理解など、日常生活での小さな積み重ね、持続可能な社会を実現していきましょう。

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食料自給率の低さ

食料自給率とは、国内の食料消費が国産でどの程度賄えているかを示す指標です。

農林水産省の資料(外部リンク)によると、日本の自給率はカロリーベースで38パーセント、生産額ベースで64パーセントに留まり、諸外国と比較しても極めて低い水準にあります。

2022年の日本と諸外国の食料自給率を比較した棒グラフ。カロリーベースと生産額ベースの2つの指標が示されており、カナダやオーストラリアが高い数値を示す一方、日本はカロリーベースで38%、生産額ベースで64%と、比較対象国の中で最も低い水準にあることが示されています。
日本は諸外国と比べ、食料自給が低い。出典:世界の食料自給率:農林水産省(外部リンク)

背景には米の消費減と、輸入依存度の高い小麦や油脂類、肉類の需要増という食生活の変化が影響しているほか、畜産物の飼料や肥料の多くを海外に頼っている現状に加え、農業従事者の高齢化や担い手不足による国内生産力の減退も自給率低下の大きな要因となっています。

この状況が招く深刻な課題が「食料安全保障」のリスクです。国際的な紛争や不作、輸出規制などにより物流が停滞すれば、必要な食料を安定確保できなくなる恐れがあります。また、世界的な需要増や円安による価格高騰の影響をダイレクトに受けやすく、私たちの生活を脅かす要因になり得ます。

不測の事態に備え日本の食卓を守るためには、国内生産基盤の強化が不可欠です。食の背景に関心を持ち、社会全体で支える仕組みづくりが急務となっています。

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資源の枯渇

現在、世界では「大量生産・大量消費・大量廃棄」を前提とした、一方通行型の経済が主流です。国連環境計画の報告によると、世界の天然資源の採取量は過去50年間で3倍以上に増え、現在も年平均2.3パーセント以上のペースで増加しており、このままでは資源が枯渇してしまうかもしれません。

石油のドラム缶の上に立った人物が、上昇する矢印が描かれた青いブロックを積み上げているイラスト。エネルギー価格の上昇や資源に関連する経済的な成長を表現しています。

天然資源の過剰な採取や加工は、環境悪化の大きな要因でもあります。具体的には、地球全体の温室効果ガスを排出させる要因の55パーセント以上、加えて陸域における生物多様性損失の原因の90パーセント以上を、これらが占める結果となっています。

日本においては、エネルギー資源の約8割以上、鉱物資源のほぼ100パーセントを海外に依存しているため、国際的な獲得競争や価格高騰の煽りを受けやすく、影響を受けた電気代や物価の高騰により、私たちの生活や産業が直接的な打撃を受ける可能性がとても高いです。

今後は、資源を効率的に使い続ける「循環経済(サーキュラーエコノミー)」への移行が不可欠です。製品を長く使うサービスの普及や、使われなくなった家電や電子機器から有用な金属を回収する「都市鉱山」の活用、再生可能エネルギーへの転換などを通じ、輸入資源に頼り過ぎない強靭な社会の仕組みづくりが急務となっています。

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水産資源の減少

水産資源の減少とは、本来であれば卵を産んで増えるはずの魚が、将来的に食べられなくなるほど海から減ってしまう状態を指します。

国内の漁獲量は1984年のピーク時から約3分の1以下にまで減少しました。現在、日本の水産資源の49パーセントが「枯渇状態」にあるとされており、かつては大衆魚の代名詞だったサンマやサケも激減し、私たちの食卓から遠のきつつあります。

漁師たちが空の漁網を引き揚げている様子

この危機を招いた主な要因は2つ。1つは「取り過ぎ(過剰漁獲)」です。魚が育ち、増えるスピードを超えて捕獲し続けたことで、自然の再生サイクルが崩れています。もう1つは「地球温暖化」による海水温の上昇です。魚の生息域や回遊ルートが変わり、稚魚が成長しにくい環境へと変化していることが大きな打撃となっています。

資源の減少は、魚の価格が高騰するだけでなく、日本の伝統的な魚食文化の消滅や深刻な食糧危機にも直結します。現状では、資源の回復を待っている間に漁業の担い手が離れてしまう二次的なリスクも懸念され始めました。

未来の海を守るため、全国で漁獲制限や藻場の再生といった管理が進められており、私たち消費者にも「サステナブル・シーフード」の選択が求められます。「海のいま」を知り、日々の買い物で賢い選択をすることが、次世代へ豊かな海を繋ぐ確かな一歩になるでしょう。

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一次産業の後継者不足

一次産業の後継者不足とは、農業、林業、漁業においてリタイアする担い手の後を継ぐ人が不足し、産業の基盤が急速に縮小している状態を指します。

農林水産省の2025年農林業センサス結果の概要(概数値)(外部リンク/PDF)によると、2025年時点で農林業経営体数が5年前から23.2パーセント減少し、個人経営体の農業従事者の平均年齢は67.6歳に達しました。

このように一次産業の担い手が不足することは、単なる産業の衰退に留まりません。国内生産力の低下による「食料安全保障」へのリスクに加え、森林の保水力低下による土砂災害の増加など、多面的な機能の喪失を招きます。また、地域コミュニティーの維持が困難になり、長年培われた伝統技術や知恵が途絶えることも深刻な損失です。

この危機に対し、現在は法人化の促進やスマート技術の導入による省力化が進められています。また、新規就業者への資金交付や漁船のリース支援、専門家による「経営継承計画」の策定支援など、若者や就職氷河期世代が挑戦しやすい環境づくりも強化されています。

私たちが享受している「食」と「環境」を次世代へ引き継ぐため、一次産業を社会全体で支える仕組みへの転換が急がれます。

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[参考資料]

農林水産省「食品ロスとは?」(外部リンク)

消費者庁「食品ロスについて知る・学ぶ」(外部リンク)

農林水産省「令和4年度の事業系食品ロス量が削減目標を達成!(外部リンク/PDF)

農林水産省「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」(外部リンク/PDF)

農林水産省「事業系食品ロス量(2023年推計値)を公表」(外部リンク)

農林水産省「商慣習検討」(外部リンク)

農林水産省「世界の食料自給率」(外部リンク)

つながる世界と日本「食料を外国からの輸入に頼っていると、どんな困ることがある?」(外部リンク)

農林水産省我が国の食料事情について(外部リンク/PDF)

資源エネルギー「成長志向の資源循環経済システム『サーキュラーエコノミー』(前編)どんな課題を解決するの?」(外部リンク)

環境省「循環型社会形成推進基本計画~循環経済を国家戦略に~」(外部リンク/PDF)

環境省「令和7年版環境・循環型社会・生物多様性白書」(外部リンク/PDF)

資源エネルギー庁「2024―日本が抱えているエネルギー問題(前編)」(外部リンク)

農林水産省「漁獲量、消費量ともに減少している原因とは!? 知りたい!魚の今」(外部リンク)

農林水産省「2025年農林業センサス結果の概要(概数値)」(外部リンク/PDF)

農林水産省「農業労働力に関する統計基幹的農業従事者(個人経営体)」(外部リンク)

農林水産省「令和6年度食料・農業・農村白書全文」(外部リンク/PDF)

林野庁「令和6年度森林・林業白書(令和7年6月3日公表)」(外部リンク/PDF)

水産庁「令和6年度水産白書」(外部リンク/PDF)

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