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【スポーツマンガ100選】マンガ『モンキーターン』を軸に、トップボートレーサーと有識者がひもとくボートレースの魅力

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左からBOAT RACE振興会でボートレースアンバサダーを務める植木さん、ボートレーサーの寺田選手、日高選手、スポーツマンガ100選の選出にも参加したまんがたりの前田さん、ミリアッシュの竹谷さん
この記事のPOINT!
  • ボートレースの魅力は、年間を通して繰り広げられる熱い人間ドラマにある
  • 『モンキーターン』はボートレースのドラマ性と、ルールや用語も自然と理解できる名作
  • スポーツマンガは人生の選択肢を増やし、自分の世界を豊かにしてくれる

取材:日本財団ジャーナル編集部

日本財団と一般社団法人マンガナイト(外部リンク)が取り組む、「学び」につながるマンガを選出し、世界に向けて発信する「これも学習マンガだ!〜世界発見プロジェクト〜」(外部リンク)。同プロジェクトではスポーツの面白さや、普段知る機会の少ない競技の魅力を伝えることを目的に「2021年夏 スポーツを100倍楽しむ マンガ100選」(外部リンク)を選書した。

画像:「2021年夏 スポーツを100倍楽しむ マンガ100選」公式サイトのトップページ
「2021年夏 スポーツを100倍楽しむ マンガ100選」公式サイト

今回メインで取り上げる作品は、週刊少年サンデーにて1996年から2005年まで連載され、アニメ化やゲーム化までされたボートレースマンガの金字塔『モンキーターン』(小学館)(外部リンク)。

同作の推薦者の一人である、株式会社まんがたり(外部リンク)代表の前田雄太(まえだ・ゆうた)さん、株式会社ミリアッシュ(外部リンク)代表の竹谷彰人(たけや・あきと)さんを進行役に、『モンキーターン』の登場人物たちのモデルになったとも言われる、ボートレーサーの日高逸子(ひだか・いつこ)選手、寺田千恵(てらだ・ちえ)選手、元ボートレーサーで現在は一般財団法人BOAT RACE振興会(外部リンク)でボートレースアンバサダーを務める植木通彦(うえき・みちひこ)さんにご登場いただき、ボートレースの魅力と、スポーツマンガが秘めた可能性について語ってもらった。

画像:『モンキーターン』1巻の表紙
ボートレースの世界へようこそ!切磋琢磨しながらトップを目指す『モンキーターン』©︎河合克敏/小学館

1年を通した人間ドラマが楽しめる

前田さん(以下、敬称略):初めまして、まんがたりの前田です。私の会社では、企業の商品やサービスを、マンガを通して消費者に伝える広告マンガ事業や、一般の方向けの連載マンガ事業を展開しています。

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まんがたり代表の前田さん

竹谷さん(以下、敬称略):ミリアッシュの竹谷です。ゲームのイラストや背景デザインを制作する事業に携わっています。私は大のマンガ好きが高じてレビューのお仕事をいただくようになり、こうして皆さんとお話する機会まで設けていただけることになりました。

もともと前田さんとは知り合いなのですが、偶然にも今回のスポーツマンガ100選で『モンキーターン』をお互い選んでいたのには驚きました(笑)。

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ミリアッシュ代表の竹谷さん

前田:今回皆さんには、ボートレースやスポーツマンガの魅力についてお話を伺いたいのですが、まずはボートレーサーになろうと思ったきっかけから教えていただけますか。

日高さん(以下、敬称略):私は、テレビコマーシャルを見たのがきっかけです。もともとスポーツや体を動かすことが好きだったのと、「ボートに乗って年収1千万円」というキャッチコピーにも惹かれて(笑)。

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拠点とする福岡からオンラインで取材に参加した日高選手

寺田さん(以下、敬称略):私は、実家がボートレース場に近かったこともあり親族がボートレース好きだったことと、父に「体が小さく負けん気も強いのだからレーサーを目指してはどうか」と後押しされたことがきっかけで、ボートレーサーを志しました。

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拠点とする岡山からオンラインで取材に参加した寺田選手

植木さん(以下、敬称略):私はお2人の理由を合わせた感じかな。父が経営していた会社が傾いたのがきっかけで、高校2年生の秋に在学したままボートレーサーの養成所に通い始めました。とはいえ、ボートレースのことは何も知らなかった。しかし、訓練が始まると負けず嫌いな性格だったこともあり、どんどんのめり込みましたね。

竹谷:植木さんは、現在アンバサダーとしてボートレースの普及にも務められていますが、その魅力はどこにあると思いますか。

植木:やはり人間ドラマでしょう。現在1,600名ほどのボートレーサーがいるのですが、その全員が、年末のグランプリ(※1)に向けて、また女子はクイーンズクライマックス(※2)に向けてしのぎを削る、1年を通して繰り広げられる熱いドラマは見応えがあると思いますよ。

  • 1. 毎年末に行われる、その年の獲得賞金上位18位までのレーサーが出場でき、優勝者には賞金1億円が贈呈されるボートレース界の最高峰のSG競走。全レーサーは、このグランプリへの出場資格を獲得し、そこで優勝して、念願の賞金王になることを最大の目標としている。ちなみにボートレースは、上から順にSG、GⅠ、GⅡ、GⅢ、一般戦の5つのグレード(格付け)に分かれ1年間を通してレースが展開される
  • 2. 女子レーサーのナンバーワンを決めるプレミアムGⅠ競走。当該年の1月1日からチャレンジカップ及び、レディースチャレンジカップが終了する日までの獲得賞金上位12名の女子レーサーが出場。優勝賞金1,500万円を巡り、熱い戦いが繰り広げられる
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ボートレースの魅力について語る植木さん

植木:そういったボートレースの魅力を多くの人に知ってもらうという意味では、今回前田さん、竹谷さんに選んでいただいた『モンキーターン』の影響も大きいんじゃないでしょうか。舟券(※)の当たり外れに注目されがちなボートレースを、主人公たちのレーサーとしての成長や、ライバルたちとせめぎ合うレースシーンを丁寧に描くことで、スポーツとして広く認知してもらえるようになったと思います。

  • 正式名称は「勝舟投票券」。レースの着順を予想して投票(購入)し、結果に即した配当を得るための券。舟券には「単勝式」、「複勝式」、「2連勝複式」、「2連勝単式」、「拡連複」、「3連勝複式」、「3連勝単式」の7種類がある

ボートレースを身近な存在にした『モンキーターン』

前田:まさにそうですね。私がスポーツマンガ100選に『モンキーターン』を推薦したのも、レースの中での登場人物たちの駆け引きやプレッシャーがある中で切磋琢磨する姿、アスリートとして挑戦し続ける姿の描き方が素晴らしいと感じたところが大きかった。

竹谷:私は普段はあまりスポーツマンガを読まないのですが、「距離感が近くなる」作品が好きで、『モンキーターン』はボートレースの世界をぐっと身近にしてくれました。読むまでは賭け事のイメージが強かったのですが、読み終わった後に専門用語やルールも自然に身に付いていて、実際のレースをこの目で見たくてレース場に足を運んだりもしました。

前田:悪役がいないところや、かわいい女子レーサーが出てくるところ、登場人物たちのモデルになった選手が実在すると言われているところも、読んでいて面白いですよね。日高さんと寺田さんは、『モンキーターン』を読まれたことはありますか。

寺田:自分が櫛田千秋(くしだ・ちあき※)のモデルになっていると聞いて読んだのですが、少し恥ずかしかったですね。これが私?と衝撃的だった(笑)。

  • 「最強の女子選手」として全国の女子ボートレーサーが憧れる、SG競走に初優出を決めた強豪レーサー
写真:レース出場前の気合の入った寺田選手
女子選手として初のSG優勝戦に出場し、20代、30代、40代と各年代で優勝を飾るなど女子トップ選手として走り続ける寺田選手

植木:誰がどのモデルになっているのかというのも、最初は明確じゃなかったんですよね。後になって言われ出したというか。僕も榎木祐介(えのき・ゆうすけ※)という素晴らしい選手のモデルになったと言われているんですけど、初めて聞いた時は戸惑いました。

  • 自他共に認めるボートレース界のトップレーサーで「艇王」の異名を持つ、主人公・波多野憲二(はたの・けんじ)が超えようとしている選手の1人
写真:レース中の現役時代の植木さん
18歳でデビューし39歳で引退するまで生涯獲得賞金総額22億6,000万円を超える、ボートレース界のレジェンドとして知られる植木さん

日高:私もファンの方から「青島優子(あおしま・ゆうこ※)は日高さんじゃないの?」って言われましたけど、こんなに肌の色黒かったっけ?とびっくりしました。

  • 主人公・波多野憲二の研修所時代の同期生。褐色の肌をした美少女で、女子の中ではトップ選手であるという実力も持っている

寺田:けど、ボートレーサーとしての一生懸命さは日高さんに似ているかも(笑)。

写真:レース場でボートの上で歓談する日高選手
獲得賞金が女子最高の累計10億円を超え、「ボートレースの女王」「グレートマザー」と呼ばれる日高選手

前田:いずれにしても、マンガで活躍するキャラクターのモデルになっているというのは、羨ましい気はします(笑)。ところで皆さんは、子どもの頃に夢中になったマンガってありますか。

日高:『スラムダンク』(集英社)(外部リンク)は読んでいましたね。後、兄が週刊少年チャンピオンという少年誌をずっと買っていたので、それに連載されていた『ドカベン』(秋田書店)もずっと読んでいました。

寺田:私は中学、高校とテニスをしていたので、『エースをねらえ!』(ホーム社漫画文庫)(外部リンク)の影響を受けたところは大きいですね。ライバルのお蝶夫人に憧れて、あの髪型に挑戦したことも(笑)。

日高:『アタックNo.1』(ホーム社漫画文庫)とかも友達の間で人気でしたね!スポーツマンガの魅力って一言で言えば「諦めない」「壁にぶつかっても立ち上がる」ところだと思うんですよ。たとえ負けても、そこに何かが残るみたいな。

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子どもの頃好きだったマンガの話で盛り上がる寺田選手(左)と日高選手

寺田:お互いにセレクトが古い(笑)。植木さんはどうですか。

植木:僕はほとんどマンガを読まない子どもだったのですが、唯一自分のお金で買って読んだのが『キャプテン』(集英社)(外部リンク)という野球マンガでした。

前田:『キャプテン』は僕も好きで、実はスポーツマンガ100選に推薦した1冊の中に入っているんです。恋愛もなければ魔球とかも出てこない、当時としては珍しい野球マンガだったんですが、負けても挑戦し続ける少年たちの姿が描かれた名作だと思います。

竹谷:スポーツマンガの魅力って、そのスポーツの面白さだけに留まりませんよね。実は僕も『ハイキュー‼︎』(集英社)(外部リンク)というマンガを読んで、会社をつくったみたいなところがあるんです。「好きという気持ちとの距離を縮められる」というか、目標に向かって努力していく姿を目にすることで、普段の生活にも良い変化が起きる気がします。

前田:確かに。リアルとの結び付きが強く、「ボートレースのマンガを読んでボートレースに行ったらハマった」「テニスマンガを読んで、テニスを始めました」みたいに、人生の選択肢を増やしてくれるというか、自分の世界をより豊かにしてくれる気がします。

勝利の喜び、終わりのない挑戦が魅力

前田:皆さんは、長く競技に関わり続けている中でさまざまな変化があったかと思うのですが、一番大きな変化って何ですか。

日高:ボートレースの世界で、ここまで女子レースの人気が出るとは思いもしませんでした。昔は女子レースって「テクニックが下手」「フライングが多い」といったイメージを抱かれることも多かったのですが、今では売上は記念レース(※)クラスだし、人気もすごいですよね。そこには、女子レーサーの努力に加えて、やはり『モンキーターン』の影響力もあったのかもしれません。

  • 基本的にGⅠ以上の競走のことをいう。現在、年間50回程度開催されている

寺田:今ではアイドルのように写真集まで出るようになりましたし。

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ボートレースの公式サイトでは、「女子レーサー名鑑」をはじめ、女子レーサーの魅力を伝える「レディースインフォメーション」(外部リンク)も展開

植木:確かに女子レースの人気は、男子だけのレースと比べてもすごいなと思います。今後は、引退後にもスポットを当ててもらえるようになると良いかもしれませんね。

竹谷:ボートレースって獲得賞金も大きな反面、フライングによるペナルティ(※)や、レース中の事故などリスクも大きいと思うんです。そういった中で、どのような思いや覚悟を持って競技に臨まれているのでしょうか。

  • ボートレースは、スタートラインの手前から助走して、決められたタイミングにスタートラインを一斉に通過する「フライングスタート方式」を採用。スタートラインを他艇より早く通過すれば有利になるが、大時計が0秒を示す前に通過すると「フライング(F)」、1秒以上遅れて通過すると「出遅れ(L)」となり欠場となる。その際、欠場艇に関する舟券は全て払戻し(返還)される他、選手にも一定期間レースに出場できなくなる、賞典レース(優勝戦や選抜戦などの賞金が高いレース)に出場できなくなるなどの罰則が与えられる

日高:私は一度、ボートにひかれたことがあるんです。気絶したせいか、そんなに記憶はありませんが。その時は、幸い大きなけがはしませんでしたが、いつも危険と隣り合わせだということは覚悟して臨んでいます。

寺田:ずっと選手として続けられるのは、単純に「負けたら悔しい」という気持ちがあるから。そして勝ち続けるためには、日々自分をアップデートしなければいけない。終わりがないんです。だからこそ、素晴らしいレースができた時の喜びは大きい。

日高:一着を取った時の達成感を一度味わうと辞められないですね。つらいことや、悔しいことも全て忘れてしまいます。

寺田:そう、賞金は二の次。もらえてラッキー!みたいな(笑)。

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レースで接戦を繰り広げる日高選手(手前)、寺田選手(奥)

植木:日高さんも寺田さんもレースについて語る時は、生き生きとしていらっしゃる。勝利した時の喜びや、終わりがないところがボートレース、ひいてはスポーツの魅力と言えるのではないでしょうか。

前田:魅力がよく伝わってきました。最後に皆さんの今後の目標についてお聞かせください。

日高:いつも同じことを言っているのですが、女子の最年長レーサーでい続けることですね。鵜飼菜穂子(うかい・なほこ※)さんの61歳を抜いてみたいです。こんな年齢でも諦めずに努力している姿を多くの方に観ていただけたら。

  • ボートレースのレディースチャンピオンを3連覇するなど、1981年から2020年まで長きにわたって活躍した女子レーサーのパイオニア

寺田:私はまだ、ティアラ(クイーンズクライマックスの優勝)を獲っていないので、それが大きな目標ですね。一歩一歩進んで行きたいと思います。

植木:現在、現役のボートレーサーは1,600名、ボートレーサー全体では引退された方も含めて5,000名ほどの選手がいますが、僕はアンバサダーとして、ボートレースの魅力はもちろん、彼らのストーリーを伝えていきたいと思っています。ファンの皆さまのおかげで社会貢献できていることや、日常生活で役立つかもしれないボートレース用語についてももっと浸透させていきたいですね。

ボートレースの奥深い魅力と共に、ボートレーサーの皆さんの競技にかける想いについて触れることができた今回の対談企画。マンガ『モンキーターン』から入るもよし、すぐさまボートレース場に足を運ぶもよし。2021年の賞金王が決定する年末まで残り4カ月。少しでも興味を抱いたら、水上で繰り広げられる熱い人間ドラマを目撃しに出かけよう。

撮影:十河英三郎

「2021年夏!あなたの推しキャラ選手権~スポーツ編~」開催中!

スポーツマンガは、現実のアスリートの活躍やスポーツ大会と同じように熱狂を生み、強い感動と同時に新しい世界との出合いをもたらします。

あなたが応援したい、あなたの心を揺さぶる、あなたが目指したいと思うマンガの中のアスリート(キャラクター)をSNS投稿(#スポマン推しキャラ)で教えてください。ランキング上位に入賞したキャラクターの登場作品は、日本財団が全国で展開する「子ども第三の居場所」(外部リンク)に寄贈され、子どもたちのスポーツへの興味関心を高めるために役立てられます。

画像:「2021年夏!あなたの推しキャラ選手権~スポーツ編~」のイメージイラスト
2021年夏!あなたの推しキャラ選手権~スポーツ編~

また、Twitter上では、選書に参加したアスリートらの寄せ書きサインが当たるプレゼント企画も実施いたします。いずれも募集期間は、2021年9月5日(日)まで。投稿方法や応募条件等の詳細は公式サイト(外部リンク)をご確認ください。

〈プロフィール〉

日高逸子(ひだか・いつこ)

宮崎県出身、福岡県在住のボートレース選手。デビューは1985年で、数多くのレースで優勝し、2015年に女子として2人目となる通算2 ,000勝を達成。生涯獲得賞金は10億円を超える。ニックネームは「グレートマザー」。2021年現在、ボートレースの現役女子選手としては最年長。

寺田千恵(てらだ・ちえ)

山口県生まれの福岡県育ちで岡山県在住のボートレース選手。デビューは1989年で、2001年6月にボートレース唐津で開催されたSG競走「グランドチャンピオン決定戦競走」にて、女子選手として初のSG優出を果たす。生涯獲得賞金は9億円超え。「てらっち」の愛称で親しまれている。

植木通彦(うえき・みちひこ)

福岡県北九州市出身。元ボートレーサー。 現在は一般財団法人BOAT RACE振興会でボートレースアンバサダーを務める。18歳でデビューし39歳で引退するまでの約21年間の選手生活において通算74回優勝、生涯獲得賞金総額は22億6,000万円を超える。現役引退後は、ボートレーサー養成所の所長として後進の指導に当たり、2018年から現職に。
植木通彦オフィシャルブログ(外部リンク)
一般財団法人BOAT RACE振興会 公式サイト(外部リンク)
ボートレース 公式サイト(外部リンク)

特集【スポーツマンガ100選】