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「地球温暖化」の時代はもう終わる? 「地球沸騰化」を食い止めるために、私たちには何ができる?

イラスト:二酸化炭素の増加により、気温が上がり苦しむ地球
地球沸騰化を抑えるための企業の取り組みや一人一人ができることを紹介

執筆:日本財団ジャーナル編集部

10代の今だからこそ読んでほしいトピックをお届けする「ジャーナル@ソーシャルグッドラボ」。今回は、「地球温暖化」を通り越して、「地球沸騰化」とまでいわれ始めている気候変動について紹介します。

「気候変動」と聞くと難しそうなイメージがあるかもしれませんが、みなさんも周りの大人から「昔の夏はこれほど暑くなかった」「こんな大雨は経験したことがない」といった声を聞いたことがあるのではないでしょうか。こんなふうに、気温や雨などが、長い目で見たときに大きく変わることを「気候変動」といいます。

こうした「気候変動」が続くと、熱中症になりやすくなる、クーラーの電気代が増える、といった身のまわりの変化だけでなく、大雨による被害が増えたり、暑さでお米や野菜が育たなくなったりと、社会全体に悪い影響をもたらすことになります。

この記事では、「地球温暖化」が進み、「地球沸騰化」という深刻な気候変動がなぜ起こるのか、その仕組みを解説するとともに、企業による対策事例についても紹介します。あわせて、自分たちにできることについても考えてみましょう。

この記事のPOINT!

  • 近年、「地球温暖化」による気候変動が進み、「地球沸騰化」といわれるほど深刻化している
  • 「地球温暖化」の原因とされるのが、二酸化炭素(CO2)やメタンガスなど「温室効果ガス」の増加である
  • 「地球温暖化」を完全に止めることは難しい。国や企業だけでなく、一人一人の取り組みで地球の未来が変わる可能性が高まる

「地球温暖化」のいま

●地球が温暖化しているってどういうこと?

「今年の夏は去年よりも暑くない?」と、毎年のように感じている人は多いのではないでしょうか。

実際、世界の平均気温を調べてみると、2023年、2024年と2年連続で過去最高を記録しています。その影響もあって、台風や大雨、山火事などの自然災害が世界中で増えており、ニュースで見た人も少なくないでしょう。

また身近なところでは、暑さで米や野菜が育ちにくくなったり、海の温度が高くなって魚の獲れる量が減少したりと、みなさんの毎日の食卓にも少なからず影響を及ぼしています。

最近、よく耳にする「地球温暖化」は、このように地球全体で気温が上がっている状態のことです。とくにここ数年は、温暖化のスピードが早まり、被害も広がっていることから、地球温暖化を通り越して「地球沸騰化」とまでいわれています。

ちなみに「地球沸騰化」は、実際に地球が沸騰しているわけではなく、2023年に国連のリーダーである事務総長、アントニオ・グテーレス氏が地球の危機的な状況を世界に伝えるために使った言葉で、「地球温暖化」がさらに加速し、異常気象や自然災害が頻発する、より深刻な状況を表現しました。

図:世界の年平均気温偏差(※1)の順位(上位10位まで)

表組:
1位 2024年+0.62度
2位 2023年+0.54
3位 2016年+0.35
4位 2020年+0.34
5位 2019年+0.31
6位 2015年+0.30
7位 2017年+0.26
8位 2022年+0.24
9位 2021年+0.22
10位 2018年+0.16
2024年はプラス0.62度となり、 統計を開始した1891 年以降、最も高い値(温度差)となる見込み。引用:気象庁 「2024 年(令和6年)の世界の年平均気温1(速報)」(外部リンク/PDF)
  • 1.1991〜2020年の30年間の平均気温と、各年の平均気温との差を表す指標
  • 2.2024年の値は1~11月までの観測データによる速報値

図:全国のアメダス(※)による1時間あたり50ミリメートル以上を記録した降水量の年間発生回数

縦棒グラフ:
1976年286ミリメートル
1977年220ミリメートル
1978年189ミリメートル
1979年293ミリメートル
1980年203ミリメートル
1981年182ミリメートル
1982年299ミリメートル
1983年241ミリメートル
1984年143ミリメートル
1985年204ミリメートル
1986年134ミリメートル
1987年245ミリメートル
1988年326ミリメートル
1989年247ミリメートル
1990年383ミリメートル
1991年203ミリメートル
1992年146ミリメートル
1993年333ミリメートル
1994年171ミリメートル
1995年206ミリメートル
1996年123ミリメートル
1997年230ミリメートル
1998年430ミリメートル
1999年357ミリメートル
2000年318ミリメートル
2001年268ミリメートル
2002年225ミリメートル
2003年236ミリメートル
2004年463ミリメートル
2005年252ミリメートル
2006年309ミリメートル
2007年252ミリメートル
2008年330ミリメートル
2009年220ミリメートル
2010年272ミリメートル
2011年358ミリメートル
2012年367ミリメートル
2013年308ミリメートル
2014年309ミリメートル
2015年269ミリメートル
2016年334ミリメートル
2017年327ミリメートル
2018年350ミリメートル
2019年377ミリメートル
2020年345ミリメートル
2021年279ミリメートル
2022年382ミリメートル
2023年326ミリメートル
2024年346ミリメートル
1時間あたり50ミリメートル以上の大雨の特徴は「滝のように雨が降る」「マンホールから水が溢れ出す」「地下鉄や地下街に水が入り込む危険性がある」などが挙げられる。出典:気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」(外部リンク)
  • 地域気象観測システム。降水量を観測する観測所は全国に約1,300か所ある

関連記事:世界中で深刻な自然災害が頻発。史上最も暑い2023年の異常気象は、地球温暖化が原因?(別タブで開く)

●地球温暖化の原因は?

「地球温暖化」の原因と考えられているのが「温室効果ガス」の増え過ぎによるもの。もともと地球には、太陽の熱で温められると余った熱は宇宙へ放出し、私たちが暮らしやすい温度に保ってくれる機能があります。

ところが、空気中の二酸化炭素(CO2)やメタンガス、フロンといった「温室効果ガス」が増え過ぎたせいで、熱をうまく放出できなくなり、「地球温暖化」を引き起こしていると考えられています。

イラスト:
温室効果ガスと地球温暖化メカニズム

・約200年前の地球 現在の地球
太陽からの光→大気(温室効果ガス)、熱を吸収→熱の放出
産業革命の始まった頃の二酸化炭素の濃度は約280ppmでした。

・現在の地球
太陽からの光→大気(温室効果ガス)、熱をもっと吸収→熱の放出
二酸化炭素の濃度は2021年には415ppmを超えてしまいました。
地球温暖化の仕組み。温室効果ガスが多くなり過ぎると太陽で温まった余分な熱が宇宙に放出されず地球の気温が上昇する。出典:全国地球温暖化防止活動推進センター

温室効果ガスの中でもとくに発生量が多いのが二酸化炭素で、私たち人間の活動による影響が大きいといわれています。

私たちが普段使う電気の多くは、石油や石炭を燃やして作られ、その際にたくさんの二酸化炭素を排出します。また、二酸化炭素は、服やプラスチック製品を作るとき、ごみを燃やすときにも大量に排出されます。

さらに、二酸化炭素を吸収する森林が破壊されたり、大規模な山火事で失われたりすることで、世界中から少なくなってきたこともあり、大気中の二酸化炭素が、これまでとは比べものにならないほど増えているのです。

関連記事;世界中で深刻な自然災害が頻発。史上最も暑い2023年の異常気象は、地球温暖化が原因?(別タブで開く)

●このまま地球温暖化が進むとどうなる?

世界中の科学者が協力して100年先の未来を予想したところ、このまま地球温暖化を防ぐ努力をしなければ、21世紀末には世界の気温が今よりも3.3~5.7度も高くなると考えられています。

もし、そうなった場合、私たちの暮らしに以下のような影響が予想されています。

・大雨の増加や台風の大型化
水害で命を失ったり、家を失ったりする人が増える

大雨で水没する都市

・高温や干ばつによる被害の拡大
農作物や水産物の減少による食料不足や、熱中症や感染症などによる健康被害を受ける人が増える

イラスト:
干ばつで枯れた木、ひび割れた大地

・海面の上昇
陸地が少なくなることで農地を失ったり、その土地に住めなくなったりする人が増える

・熱帯・亜熱帯の範囲が広がる
多くの生き物たちの住む場所がなくなったり、食べ物が減ったりすることで、絶滅の危機にさらされる生き物が増える

こうしたことが起こらないようにするためには、今すぐにでも、世界中の人々が力を合わせて地球温暖化を防ぐために取り組まなければなりません。

関連記事:地球温暖化(ちきゅうおんだんか)が進めば、いまの場所に住めなくなる人がたくさんいる?(別タブで開く)

「地球温暖化」を防ぐには?

●「地球温暖化」を抑える2つの方法

「地球温暖化」による気候変動対策には、大きく「緩和(かんわ)」と「適応(てきおう)」という2つの方法があり、同時に進めることが重要になります。

[緩和策]
「地球温暖化」の原因となる温室効果ガスの排出を減らし、その進行を抑えること。

  • 節電・省エネや、省エネ機器を使うことで、エネルギーの使用量を減らす
  • 人びとの意識や生活を通じてできるだけ温室効果ガスの排出を少なくする(例えば、車ではなく自転車や徒歩で移動する、エコカーを普及させる)
  • 再生可能エネルギーを活用する
  • 森林を増やす(植物は二酸化炭素を吸収してくれるため) など

[適応策]
「地球温暖化」の影響に備えて、できるだけ被害を少なくすること。

  • 熱中症や感染症による患者増加、健康被害を防ぐため、予防策や対処策を強化する
  • 豪雨による河川氾濫、土砂災害などによる被害を防ぐため、インフラを整備する
  • 干ばつや洪水による水不足、水質の悪化に備え、ダムや浄水施設を整備する
  • 高温に強い農作物の品種開発や、農業施設の整備を行う など

●気候変動対策に挑戦する企業

「地球温暖化」への危機感が高まる中、テクノロジーの力で対策に挑む企業が増えています。温室効果ガスの排出量の削減や「地球温暖化」の影響への対応に焦点を当てた「気候テック」と呼ばれる最新の技術について、「緩和」「適応」それぞれの事例を紹介しましょう。

緩和策の事例:大気から二酸化炭素を回収する技術開発に成功(東京都立大学)

これまでの緩和策は、地球温暖化の原因となる「二酸化炭素の排出を減らす」ことが中心でしたが、最近では、発想を変えて「排出された二酸化炭素を回収する」技術が注目されています。

この技術は、DAC(ダイレクトエアキャプチャー=直接、空気からつかまえる)と呼ばれ、世界中で多くの企業が挑戦。日本でも国が主導する研究プロジェクトが進められています。

大気中に含まれる二酸化炭素の濃度は0.04パーセントに過ぎませんが、このわずかな量でも地球温暖化に大きな影響を及ぼすといわれています。しかし、微量のため効率的な回収が難しく、多くの技術者を悩ませていました。

こうした最中、東京都立大学の研究グループが驚くような成果を上げました。化学反応を利用し、二酸化炭素を固体にして効率よく回収する技術で、資源として再利用する仕組みも開発中。その実用化が期待されています。

参考:東京都立大学「【研究発表】既存技術を凌駕!世界最速級!空気中のCO2高速回収技術の開発」(外部リンク)

東京都立大学が開発した世界最速級のDACシステム。試験管の底に沈殿している白い粒が、固体化された二酸化炭素を含む化合物。画像提供:東京都立大学
 

適応策の事例:30年、50年先の気候変動リスクを詳細に分析(株式会社ウェザーニューズ)

気候変動に「適応」するためには、まずは気候についての情報をしっかりと収集して分析することが第一歩です。

そこで、企業や自治体に天気情報を提供する株式会社ウェザーニューズでは、これまでに蓄積した、たくさんの気候データをもとに、気候変動の影響を30年、50年といった長期的な視点で“見える化”する気候変動リスク分析サービスを提供しています。

企業や自治体は、このサービスを利用することで、防災対策を強化したり、災害リスクが少ない土地を選んで工場を建てたりするなど、計画的に取り組むことができます。

参考:株式会社ウェザーニューズ気候リスク分析と気候リスクモニタリング」(外部リンク)

画像:
気候変動リスク分析サービスで使う「気候リスク分析と気候リスクモニタリング」の画面
気候変動リスク分析サービスを活用すれば、対象地域の2080年の気象状況をシミュレーションすることも可能。画像提供:株式会社ウェザーニューズ

私たちに何ができるかを考えよう!

●今日できることから始めよう

現在、世界中の国や自治体、企業などが対策に努めていますが、それでも「地球温暖化」による気候変動を食い止めることは難しく、みなさんが日頃から意識して緩和策や適応策に取り組むことが大切です。

ここでは、今日からすぐにできることを紹介しましょう。

一人一人ができる緩和策

・家で節電を心がける
私たちが使う電気の多くは、石油や石炭を燃やして作られています。使用するエアコンの温度を控えめにしたり、使わない部屋の電気を消したり、日頃から省エネを心がけましょう。

イラスト:
スイッチを押す指

・食品ロスを減らす
食料を捨てると、食料を生産したり、加工したりするために使ったエネルギーが無駄になるほか、埋立地による廃棄で食品が腐ると温室効果ガスの1つであるメタンガスが発生します。食べ残しはなくすよう一人一人が心がけましょう。

イラスト:
ごみ箱に頭った食事を捨てる、NG例

・物を大切に使う
私たちが着る服や、普段使うプラスチック製品を作ったり、ごみとして焼却したりする際に使用する電力は、大量の石油や石炭を必要とします。できるだけ物は大切に使い、使い捨て製品はできるだけ使用しないよう心がけましょう。

イラスト:
マイバック、詰め替え商品

一人一人ができる適応策

・熱中症に備える
「のどが渇いたな」と感じる前に、こまめに水分を取ったり、暑さに応じて衣服を調整したり、熱中症にならないよう心がけることが大切です。

イラスト:
日傘、帽子、ネックタオル、Tシャツ、木陰にあるベンチ

・災害に備える
家族で水害が起こった場合の避難場所や避難するタイミングを話し合っておけば、いざというときに安心です。その際、住んでいる地域のハザードマップを確認する、防災グッズを用意・点検するなどの対策も行いましょう。

イラスト:
防災バック、ペットボトルに入った水、ラジオ、救急箱、懐中電灯、包帯、缶詰

・「緑のカーテン」を作る
窓の外側にゴーヤやきゅうりなど、つる性の植物を育てて太陽の光をさえぎる「緑のカーテン」は、室温を下げて熱中症のリスクを減らせると同時に、クーラーの使用を抑えることで省エネにもつながります。また植物が二酸化炭素を吸収する効果もあり、まさに“一石三鳥”といえるでしょう。

イラスト:
窓の外にかかったゴーヤ

●楽しく学んで解決方法を見つけよう

地球温暖化は、地球に生きる一人一人の課題であり、みんなで取り組むことが大切です。まずは、以下に紹介するサイトで、「地球温暖化」や、その気候変動対策について調べてみましょう。さらに、自分が得た知識を周囲にも発信することで、対策の輪を広げていきましょう。

気候変動適応情報プラットフォーム「A-PLAT」

国立環境研究所が運営する、気候変動による影響や取り組みをまとめたウェブサイトです。メニュー「個人の適応」では、自分たちにできることを学べる学習プログラムや、小中高生に対応したクイズ教材(外部リンク)なども。また「かるた」「すごろく」など、遊んで学べる素材をダウンロードすることもできます。

気候変動適応情報プラットフォーム「A-PLAT」 公式サイト(外部リンク)

「ようこそ気候変動適応クイズ」
こんにちは。気候変動適応クイズへようこそ。
「適応」ってなんだろう?!
オンラインで簡単にできるクイズです!
さあ、やってみよう!
3つの中から選んでね。
・小学校高学年向け
・中学生向け
・高校生向け
気候変動適応クイズ。「小学校高学年向け」「中学生向け」「高校生向け」が用意され、最後まで回答すると修了証ももらえる

体験の機会の場

環境省が運営する、環境問題を考えるためのウェブサイトです。森林や里山などで自然環境にふれる「自然体験」、環境に気を配りながら運営している工場や施設などの「社会体験」ができる全国の体験プログラムを紹介しています。

体験の機会の場 公式サイト(外部リンク)

「体験の機会の場」公式サイトトップページ

「地球温暖化」や「気候変動」について自身で調べるとともに、学校での勉強も大切にしましょう。やがてみなさんが大人になって社会に出たとき、学校で学んだ知識を生かして、新たな「気候テック」を開発したり、普及させたりといった仕事ができれば、豊かな未来社会をつくるための大きな力になっていくでしょう。

参考記事:

福岡県「福岡県地球温暖化対策ワークブック中学生用『持続可能な社会を目指して』」(外部リンク)

すみだ環境学習ツール「中学生向け『地球温暖化対策』」(外部リンク)

気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)「気候変動適応とは」(外部リンク)

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