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NPO法人の経費処理とは? 削減の方法や安定的に運営するためのコツを解説

 イメージ:請求書を確認する人
NPO法人の経費の処理方法とコストを抑えるためのヒントを紹介
この記事のPOINT!
  • NPO法人の経費の中でも「人件費」にかかる割合が多い
  • 人件費を削減するためにはITツールの導入やフローの見直しなど業務の効率化が重要
  • 安定した組織運営のためには、経費削減だけでなく資金調達にも力を入れることが大切

執筆:日本財団ジャーナル編集部

「NPO法人の経費は会社とは異なる?」「経費に関する課題は?」

このような疑問を持つ人もいるだろう。

NPO法人は会計の方法や情報公開の義務といった点で営利企業(株式会社等)と対応の仕方が異なる。また「人件費」に関わるコストが課題といえるため、ITツールを取り入れたり、業務フローを見直すなど業務の効率化も重要だ。

この記事では、NPO法人の経費について、営利企業と異なる点や、運営する上で抱えやすい問題と改善策について紹介する。

1. NPO法人の経費とは

NPO法人が発生する費用は大まかに「経常費用」と「経常外費用」の2種類に分けられる。これは「NPO法人会計基準」の分類に則ったものだ。

このうち「経常費用」がいわゆる経費と呼ばれるもので、営利企業とは異なるのは経費が事業費(事業を遂行するための費用)と管理費(事業を管理するために支出した費用)に分類される点だ。事業費と管理費はそれぞれ「人件費」と「その他経費」に分類される。

またNPO法人は、会計の透明性と信頼性を確保するため、活動計算書といった財務状況を開示する義務がある。所轄庁のサイトやNPO法人の事務所で誰でも閲覧できるのも大きな特徴だ。

「経常外費用」とは、NPO法人の事業活動以外で発生した臨時的な費用をいう。「固定資産売却損益」や「災害損失」などが該当する。

関連記事:NPO法人の会計とは? 会計基準や処理方法、勘定科目を具体的に解説(別タブで開く)

1-1. 「人件費」とは?

「人件費」は法人の運営や事業活動に関わる人材に発生する費用。項目は営利企業と同様、次の通りだ。

  • 給与、通勤手当
  • 役員報酬
  • アルバイト賃金
  • 法定福利費(社会保険)
  • 退職給付費用(退職金)
  • 福利厚生費 など

営利企業と異なる点は、認定NPO法人になると給与規程や役員報酬規程を開示する義務があることが挙げられる。

関連記事:認定NPO法人とは? NPO法人との違いや申請するメリットを解説(別タブで開く)

1-2. 「その他経費」とは?

「その他経費」は人件費以外の全てが該当する。営利企業と共通している項目は、次の通りだ。

  • 売上原価
  • 地代家賃
  • 水道光熱費
  • 通信運搬費
  • 消耗品費
  • 雑費 など

ここでは、営利企業と項目自体は共通しているが内容が異なる点、営利企業にはない項目について解説する。

1-2-1. 旅費交通費

自団体の関連機関や税務署への相談、他団体や講師との打ち合わせなどで発生する移動費、出張にかかる宿泊費などが該当する。営利企業とは異なる点として、旅費・交通費規程を開示している団体もあること。

例えば、認定NPO法人キッズドアの「旅費・交通費規程」(外部リンク/PDF) では、鉄道、船舶、航空機、バスなどは実費の支給だ。宿泊費は地域によって8,000〜1万円の上限を定めている。

認定NPO法人ふーどばんくOSAKAの「職員旅費規程」(外部リンク/PDF)は、交通費は実費だが、宿泊費を1万2,000円、出張手当は3,000円の定額としている。

1-2-2. 租税公課

租税公課とは、いわゆる税金のこと。NPO法人を設立すると、営利企業と同様にさまざまな税金が課税される。具体的には、法人住民税、消費税、源泉所得税、都市計画税、固定資産税、法人事業税などだ。土地建物を所有しているか、収益事業を行うかなどによって発生する税金もある。

ただし、営利企業とは異なり、法人税法施行令で定める34の収益業以外は法人税がかからない。

関連記事:NPO法人と一般社団法人の法人税はどうなる? 計算方法やその他税金を解説(別タブで開く)

1-2-3. ファンドレイジング(資金調達)費

ファンドレイジング費とは、個人や企業から寄付金を集めたり、助成金や補助金を申請したりするために必要な活動にかかる経費だ。

具体的には、資金調達のために作成するパンフレットの制作費やイベント開催費、ホームページなどの広告宣伝費などが挙げられる。

2.NPO法人の経費は年間でどのくらいかかる?

内閣府が実施した「令和5年度 特定非営利活動法人に関する実態調査」(外部リンク/PDF)では、経費の中央値について次のような結果が出ている。

  • NPO法人:604万2,000円
  • 認定NPO法人、特例認定NPO法人:2,667万8,000円

金額別の法人の内訳については次の通りだ。

経費の金額別NPO法人数の内訳を示す横棒グラフ:
NPO法人 n=2,207
0円7.2% 0円超~100万円以下23.9% 100万円超~500万円以下17.1% 500万円超~1,000万円以下9.7% 1,000万円超~5,000万円以下26.8% 5,000万円超~ 1億円以下8.4% 1億円超9%

認定NPO法人·特例認定NPO法人:n=721
0円 0円超~100万円以下2.5%100万円超~500万円以下15.3% 500万円超~1,000万円以下11.8% 1,000万円超~5,000万円以下36.2% 5,000万円超~ 1億円以下15.5% 1億円超18.7%
経費の金額別NPO法人数の内訳

年間の経費が100万円以下のNPO法人は30パーセントほどであり、経費を抑えて運営している団体もいることが分かる。

一方で認定NPO法人・特例認定NPO法人では、年間の経費が1000万円を超える団体が7割ほどだ。認定NPO法人になると税制の優遇措置が受けられることから、寄付金を集めやすく、事業規模が大きくなりやすいことが理由と考えられる。

2-1.人件費の割合が多い

福祉医療機構(WAM)の調査(外部リンク/PDF)では、福祉系NPOの人件費率は約67パーセントと非常に高い数値が出ている。

営利企業(サービス業)の目安は40〜50パーセントと言われるが、NPOは労働集約的な対人支援サービスが中心であるため、どうしても人件費の割合が高くなりがちだ。

一方で、「令和5年度 特定非営利活動法人に関する実態調査」(外部リンク/PDF)では65.6パーセントの法人が「人材の確保・育成」を課題に挙げている。「人件費の割合は高いが、一人一人の給与水準や教育費に十分なコストをかけられていない」という構造的な悩みが浮き彫りになっている。

イメージ:頭を抱える経営者
人材を育てるために十分な費用をかけられないで悩むNPO法人は多い

3.NPO法人が経費削減に成功した事例

ここまで、NPO法人の運営では「人件費」が課題になりやすいということに触れたが、法人によっては削減すべき経費が異なる。

ここからは、NPO法人が経費削減に成功した事例について、「人件費」と「それ以外」に分けて紹介する。

3-1. 残業時間を減らし人件費を削減した事例

NPO法人 Chance For ALLでは、学童保育施設を運営しており、職員により手作りによる紙で「おたより」や「連絡帳」を保護者に配布していた。しかし、作成業務にかかる残業が多いことが問題となっていた

そこで、作成業務をIT化することを検討。アプリケーションで情報を管理し、スマホやパソコンで閲覧できるようにし業務の効率化に成功。作業時間を短縮できただけでなく、印刷にかかる紙代やインク代の削減にもつながった。

また「おたより」の発行ペースも週1回から毎日に変更し保護者とのコミュニケーションを強化。さらに子どもたちと向き合う時間も増えたことで、サービスの向上も実現した。

参考:公益財団法人日本電信電話ユーザ協会「企業ICT導入事例」(外部リンク)

3-2.「よろず支援拠点」に相談し、固定費を削減した例

独立行政法人中小企業基盤整備機構の「よろず支援拠点」に経営相談した「NPO法人ぱるぱる」の例を取り上げる。

NPO法人ぱるぱるは、「就労継続支援B型」「居宅介護」「移動支援」「同行援助」「生活介護」などの事業を展開していたが、慢性的な資金不足に陥っていた。そこで、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する中小企業・小規模事業者向けの経営相談所「よろず支援拠点」に相談したところ、次の4つの課題が上がった。

  • 多様な事業を手がけるも多くが赤字だった
  • 売上に対して経費が過大(特に固定費が大きい)
  • 資金繰りが悪化しているため、運転資金がない
  • 基本的な経営管理ができていない

それに対し、経費の削減面で行った改善策は次の2つ。

  • 事業の絞り込みと事務所の移転を提案。販売管理費を月に約30万円削減できた
  • 会計ソフトの導入により月次試算表の作成が可能に。業務効率化と経費の把握ができるようになった

「よろず支援拠点」では経営に関する相談が無料で行える。各都道府県に支援拠点が設置されているため、経営課題の解決に活用するのもおすすめだ。

参考:よろず支援拠点「全国の支援事例」(外部リンク)

4.NPO法人が安定的に運営するために

NPO法人に必要な経費にはさまざまな項目が存在する。安定した組織運営を行うためには、限られた資金の中でいかにうまくやり繰りできるかが肝心だ。

ここでは、経費を抑える、あるいは資金を増やすのにおすすめの方法について紹介する。

4-1.IT化を積極的に行う

経費削減の成功事例でも紹介したとおり、IT化が人件費の削減に与える影響は大きい。

また、日本財団がNPO法人、一般社団法人、一般財団法人を対象に行なった調査では、事業活動の各局面におけるIT化について、「事務の改善・効率化」を重要と感じる団体が9割強を占めた。

一方で、「デジタルツール/デジタルデバイスを十分に活用できていない」と回答している団体が「わからない」も含めて5割弱であったことから、多くの法人でIT化の導入が課題といえる。

また、活用できていない理由として「費用がかかる」「技術的なサポートや専門的なスキルや知識」「使いこなせる職員がいない」などが障壁となっている。

参考:日本財団「ソーシャルセクターを対象とした『NPO・NGOに係るデジタル支援のニーズ調査』を実施」(外部リンク)

「デジタルツール/デジタルデバイスを十分に活用できていると思う」という質問に対する回答を示す横棒グラフ:
一般社団法人 (85団体)/そう思う15% ややそう思う54% わからない12% あまりそう思わない17% そう思わない2%
一般財団法人 (6団体)/そう思う33% ややそう思う67%
特定非営利活動法人(認定含む289団体)/そう思う13% ややそう思う37% わからない15% あまりそう思わない29% そう思わない6%
全体の傾向/そう思う14% ややそう思う42% わからない14% あまりそう思わない26% そう思わない5%
「デジタルツール/デジタルデバイスを十分に活用できていると思う」という質問に対する回答

ここからは、IT化を実現するための方法をいくつか紹介する。

4-1-1. IT導入補助金の活用

IT導入の障壁が「費用」であるなら、補助金を活用するのがおすすめだ。「IT導入補助金」(外部リンク)は、中小企業・小規模事業者の労働生産性の向上を目的とした、業務効率化やDX(※)等に向けたデジタルツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する制度だ。

  • 「DX」とは、デジタル技術を活用して業務の効率化やビジネスモデル・企業風土の変革を実現すること

例えば、デジタルツールの導入に活用できる「通常枠」では、補助率(費用のうち補助される割合)が1/2以内で、ツールが対応する業務プロセス数に応じて5万円〜450万円の補助額となる。

IT導入補助金の申請から交付までの流れは次の通りだ。

  • 事務局に登録された「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組む
  • 導入するITツールを選定
  • 申請、交付決定
  • ITツールの発注
  • 実績報告
  • 補助金交付

ただし、補助金は審査が必要であり、申請したからといって必ず視急されるわけではない。

4-1-2.支援団体へ相談

専門的なスキルや知識がない場合や、ITを活用できる人材が不足している場合は、支援団体への相談も検討しよう。デジタルツールの導入や運用をサポートしてくれる支援団体は全国にあるが、主な例として特定非営利活動法人NPOサポートセンター(外部リンク)を紹介する。

NPOサポートセンターでは、顧客関係管理(CRM)ソフト「Salesforce」の導入・活用サポートや、会計や支援者・会員管理などのバックオフィス業務効率化のためのデジタルツール導入支援、管理代行などをサポートしてくれる。

業務改善などのセミナーも定期的に実施されており、ITを使いこなす人材の育成にも活用できる。

イメージ:デジタルツールを活用する人
IT化は、非営利企、営利に関わらず全ての企業にとってコストダウンと業務効率を高めるための必須の取り組みだ

4-2.資金調達に力を入れる

経費の削減のみでは捻出できる資金に限界があるため、資金を増やすことも考えよう。

NPO法人においては、会費や寄付金が活動資金源の多くを占めているケースも多い。また、インターネットの進化により、広報活動もずいぶんしやすくなった。

例えばSNSやホームページを利用した積極的な活動報告や、インターネットからでも寄付が可能な環境を整えるなど、資金を募る活動に力を入れてみるのもよいだろう。

待っているだけの状況と、積極的に資金調達活動を行った状況では、結果が大きく異なる。NPO法人の安定的な運営には、経費削減と資金調達、両方の側面での努力が必要だ。

関連記事:NPO法人が抱える収入源の課題とは? 安定した活動資金を確保する方法を解説(別タブで開く)

まとめ

NPO法人の経費においては、人件費が課題になりやすいといえる。人件費削減のためには業務効率化が重要であり、IT化を積極的に行うなどの対策がおすすめだ。実際にIT導入を実現したことで、大幅な作業時間の短縮に成功したNPO法人もいる。

また、経費の削減はしたいが、具体的な対策が分からない場合は、よろず支援拠点や支援団体などに相談することもおすすめだ。安定した組織運営を実現するためのアドバイスを受けられるだろう。

参考文献:

内閣府NPOホームページ「特定非営利活動促進法に係る諸手続の手引き」(外部リンク/PDF)

内閣府NPOホームページ「2023年度(令和5年度)特定非営利活動法人に関する実態調査」(外部リンク/PDF)

独立行政法人福祉医療機構 経営サポートセンター「2021年度 特定非営利活動法人(NPO 法人)の経営状況について」(外部リンク/PDF)

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