おもちゃコンサルタントに聞く、難病児の親子に「遊び」が大切な理由

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写真左から、おもちゃコンサルタントの楠さん、後藤さん、薗頭さん

取材:日本財団ジャーナル編集部

この記事のPOINT!

  • おもちゃは、世代や背景、国境を問わないみんなの「共通言語」である
  • どんな親子も、夢中になって“おもちゃで遊ぶ”ことで絆を深められる
  • おもちゃには、障害や病気という壁を取り除き、子どもの可能性を引き出す力がある

難病の子どもとその家族への支援というと、どうしても医療的な支援をイメージしてしまう。もちろん、それは必要なことだ。しかし、果たしてそれだけで十分なのだろうか。

そんな疑問からスタートした日本財団と東京おもちゃ美術館(別ウィンドウで開く)が協働で行うプロジェクトがある。それが「あそびのむし」だ。これは、「難病児とその家族にこそ“遊び”が必要である」という考えの元、世界中から選りすぐったおもちゃセットを当事者の元に届けるという取り組み。難病児の“療育”ではなく、“夢中になって遊ぶこと”を目的としている。

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専用のおもちゃ箱に描かれた「あそびのむし」たち

クタクタになるまで遊んで、とても楽しかった――。本来、おもちゃは、子どもたちが時間を忘れて遊び、ワクワクやドキドキを育むためのもの。しかし、難病の子どもを育てる家族は、おもちゃにも「子どもが少しでも成長するように」というリハビリ的な想いを込めてしまいがち。結果として、それが子育ての負担やストレスにつながってしまうことも少なくない。

そこで「あそびのむし」は、純粋におもちゃを楽しんでもらうことを提案する。難しいことを意識せず、難病の子どももその家族も、みんなが輪になってひとつの時間を過ごす。それが、医療的ケアへのプレッシャーや、将来への不安に押しつぶされそうになっている当事者たちの心を解放する…。

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色や形状を考慮したおもちゃ
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コミュニケーションを生み出すハンドパペットや木製のおもちゃ

本プロジェクト(別ウィンドウで開く)の仕掛け人は、東京おもちゃ美術館の副館長を務める石井今日子さんと、日本財団職員の中嶋弓子さん。これまで何度も議論を交わし、セットにするおもちゃを選んできた。また、おもちゃの選出に力を貸したのが、東京おもちゃ美術館に在籍する「おもちゃコンサルタント」たちだ。

おもちゃコンサルタントは、認定NPO法人「芸術と遊び創造協会」(別ウィンドウで開く)が実施する日本で唯一の総合的なおもちゃの認定資格。赤ちゃんの成長・発達から、お年寄りのリハビリ、ヒーリングまで、幅広い視点でおもちゃを捉え、良質なおもちゃや遊びをバランスよく与えることができる“心の栄養士”だ。これまでに約6,000人が資格取得し、保育・幼児教育の現場、おもちゃに関する消費者へのアドバイス、おもちゃの製作・販売、小児病棟や高齢者福祉施設での社会貢献など、多方面で活躍している。

そんなおもちゃ使いのプロたちに、おもちゃの魅力とは何か、そして難病の子どもとその家族がおもちゃの力でどう変わっていくのか。おもちゃコンサルタントとして活躍する、薗頭さん、後藤さん、楠さんの3人に話を聞いた。

〈プロフィール〉

薗頭幹雄(そのがしら・みきお)

定年退職後、おもちゃコンサルタントに。活動歴は5年。ラオスでのワークショップに参加し始めるなど、活動の幅を広げている。

後藤直人(ごとう・なおと)

定年退職後、おもちゃコンサルタントに。活動歴は4年。おもちゃを通じ、第2の人生を満喫している。

楠 慎也(くすのき・しんや)

会社員の傍ら、土日を中心におもちゃコンサルタントとして活動中。手作りのおもちゃや工作が好き。活動歴は2年。

「おもちゃ」を介せば、大人も子ども関係なく仲良くなれる

薗頭さん「東京おもちゃ美術館だけでなく、国立成育医療研究センターや日本赤十字社医療センター、そしてラオスなどにも足を運んでいますが、おもちゃって、言葉を超えてつながることができるんですよ。ちなみに僕はラオスの言葉は話せません(笑)」

薗頭さんはおもちゃの魅力をそのように教えてくれた。

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海外でのワークショップのことを話す薗頭さん

病気や障害の有無、あるいは言葉の壁さえも超えて交流できる。おもちゃで遊ぶ「楽しさ」を共有することで、一つになれる。おもちゃは、世代や背景を問わない「共通言語」になるという。

後藤さん「コンサルタント活動の楽しさって、そこ(共通言語)にあるんです。おもちゃ美術館には赤ちゃんから大きなお子さんまで幅広い年齢層の子どもたちが訪れるんですけど、一緒になって遊んでいると年齢なんて関係なくなっちゃうんですよ」

楠さん「最初は、おもちゃを通じてみんなを元気にしてあげられれば、と考えていましたけど、逆に私たちが力をもらっています。おもちゃが介在すると、立場なんて関係なく、元気をあげたりもらったりできるんですよね」

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子どもたちとのエピソードを思い出し、笑顔になる3人。写真左から後藤さん、薗頭さん、楠さん

おもちゃコンサルタントは、おもちゃ美術館に訪れる子どもたちにとって“友達”みたいな存在だという。その中には、コマ名人やけん玉名人などいろんな特技を持った大人たちがいて、彼らがシフトに入っている日を狙って、わざわざ来館する子どももいるそうだ。

おもちゃを前にすると、大人も子どもも関係なくなってしまう。これこそが、おもちゃの持つ不思議な力ではないだろうか。

また、どんな子どもでも、おもちゃを触っているうちに“素顔”を見せてくれるともいう。それは子どもに限ったことではなく、大人も同じだ。

楠さん「中には、恥ずかしがり屋や人見知りの子どももいます。こちらから話しかけても、ぶっきらぼうな態度をとったり。でも、一緒になって遊んでいるうちにだんだんと表情が明るくなって、最後にはお別れのハイタッチをするくらい心を開いてくれます」

薗頭さん「子どもに付き添って気が進まないけど遊びに来たっていうパパさんも、気付けばおもちゃで遊ぶことに夢中になっているんですよ。最初は面倒くさそうにしていても、やがて童心に返ってしまうんです」

難病の子どもだって、子どもは子ども!「遊びたい」という気持ちでいっぱい

人と人とをつなげ、心を解放してくれるおもちゃ。3人がその力を目の当たりにしたのは、東京おもちゃ美術館が主催するイベント「スマイルデー」だった。

スマイルデーとは、東京おもちゃ美術館を貸し切りにし、難病の子どもとその家族だけを招待するというイベント。3年前にスタートし、年に2回ほど開催している。3人はこのイベントにおもちゃコンサルタントとして携わってきた。

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スマイルデーで交流する難病の子どもとその家族たち

薗頭さん「正直、最初は難病の子どもやそのご家族と、どう接したらいいのか分からなかったんです。遠慮がちにした方がいいのか、あるいは積極的に声を掛けていいのか。でも、そう考えること自体、意味がないことだとすぐに気付かされました。障害や病気の種類によっても遊べるおもちゃは限られてしまうんですけど、遊びたいという気持ちはみんな一緒。私たちは、ただそれに寄り添えばいいんです」

スマイルデーに訪れた家族からは、たくさんの喜びの声がおもちゃコンサルタントの元に届くという。

楠さん「難病の子どもにずっと付き添っているママさんたちは、やはり疲れている部分もあって。でも、医療的ケアではなく、おもちゃで遊び、子どもと関わることで、初めて楽しい時間を共有することができたと、喜ぶ人も多くいます。それがかけがえのない時間になるんですよね」

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お気に入りのハンドパペットを抱きながら、スマイルデーに参加した時のことを振り返る楠さん

親が子どもとおもちゃで遊ぶのはごく“普通”のことだと思うだろう。けれど、日々医療的ケアが必要な難病の子どもに寄り添う親たちは、親としての愛情は同じでも、ついつい医療ケアを通じた会話になりがちになる。中には、子どもとおもちゃを通じた遊び方を知らない親もいるという。だからこそ、3人は「ただおもちゃを楽しんでもらいたい」と言葉を強める。

自分の子どもが、どんなおもちゃに反応するのか。どんな遊び方に夢中になり、どんな笑顔を見せてくれるのか。そんなわワクワク感を親御さんにも感じてほしいと…。

「あそびのむし」で、難病児と健常児が一緒に遊ぶ未来を

今の日本では、難病の子どもと健常の子どもとが関わる機会が非常に少ない。しかし、病気や障害の有無で分けずに、もっと関わるチャンスを増やした方が、互いに偏見もなくなるはず。「おもちゃを通して、みんなが一緒に遊んでくれるようになったらいいな」と3人のおもちゃコンサルタントは、「あそびのむし」によって、人の輪が広がっていくことを願っている。

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「積木がハーモニカに…」おもちゃには子どもの想像力を伸ばす力があると話す後藤さん

この記事を読む方の中には「医療的ケアが最優先で、遊んでいる余裕なんてないよ」と感じる人もいるだろう。けれど、遊ぶことの意味に目を向けてもらいたい。「遊び」で得られるものは多くあるからだ。

楠さん「遊びを通じて元気になる、という考えもあると思うんです。楽しい、面白いという感情を親子で共有することで、みんなが笑顔になれる。それは、医療的ケアと同じくらい精神的に豊かな価値ではないかと思います」

後藤さん「子どもの可能性は、無限だと思います。おもちゃに触れることで、これまでに見せたことのない笑顔を見せてくれるかもしれません。おもちゃって子どもの可能性を引き出す力を持っているんです」

誰よりもおもちゃの魅力を知り尽くす、おもちゃコンサルタント。彼らも企画に協力した「あそびのむし」は、難病の子どもとその家族に、きっと大きな笑顔をもたらしてくれるに違いない。

撮影:永西永実

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