日本財団ジャーナル

【「18歳」シャカイ創りのヒント】戦後70年間変わらない高校生の就職活動。未来の選択肢を増やすために必要なのは「主体性」(特集第5回)

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高校生のための合同企業説明会「ジョブドラフトFes ~2019夏~」の会場の様子
この記事のPOINT!
  • 日本財団の調査で、日本の若者が他国に比べて国や社会に対する意識が低いという結果が出た
  • 戦後70年間変わらない高校生の就職活動。「内定を取る」ことが、学校や本人にとってゴールになりがち
  • 子どもや若者が主体的に取り組める教育、個性を尊重する社会づくりが、より良い未来を築く

取材:日本財団ジャーナル編集部

日本財団が、日本を含む9カ国の若者(17〜19歳)を対象に行った 18歳意識調査「国や社会に対する意識」(別ウィンドウで開く) 。その中で、「自分で国や社会を変えられる」という問いに対し、イエスと答えた日本の若者は18パーセントと、約5人に1人しかいなかった。残る8カ国で最も低い韓国の半数以下の数字である。

今特集では、18歳意識調査「国や社会に対する意識」の結果を深掘りし、若者たちが希望の持てる未来社会を築くためのヒントを探る。

第5回のテーマは、高校生の就職活動。高校を卒業して社会に出る場合、多くの高校生が学校あっせんという、学校から推薦を受ける形で就職活動を行っている。

高い内定率の一方で、「一人一社制」(※)といった就職慣行があるなど、大学生の就職活動に比べて格段に自由度が下がる。それが、高卒生と企業のミスマッチや早期離職の一因になっているという。

  • 企業が自社への応募に際して単願を求め、学校側としても応募の推薦を制限し、「応募解禁日」から一定時期の間まで、一人の生徒が応募できる企業を一社とする制度

今回は、高校生の就職活動における選択肢を増やそうと活動している株式会社ジンジブ(別ウィンドウで開く)代表の佐々木満秀(ささき・みつひで)さんに、若者が秘めた可能性や、働きがいを伸ばす就職支援についてお話を聞いた。

情報不足のまま就職先を決めなければいけない高校生たち

「実は私も、高卒で就職しました。少しやんちゃだった私に先生が渡してくださったのは、小さな工場の求人票。他のクラスメイトは、大きな工場を紹介してもらっていましたが、これは普段の私の授業態度が原因だったのかもしれません(笑)」

ジンジブの洗練されたオフィスで取材に応じてくれた佐々木さんは、自身の過去をこう振り返る。

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株式会社ジンジブ代表取締役の佐々木さん

「当時の私は、一方的に学校から決められた就職先で働く気になれず、自分で求人情報誌を買って、『高卒でも御社で働けますか?』と、いろんな会社に電話しました。最初に就職したのは運送会社で、21歳の時にトラックを購入し自分で運送業を始め、23歳の時に求人広告会社に就職。そこでは営業部長を経て役員にもなりました。その会社が倒産してしまったのを機に、自身で会社を立ち上げ、今に至ります」

そんな波乱万丈な人生を送ってきた佐々木さんが、高校で就職活動を行ったのは約35年前のことだが、「その状況は今も変わっていません。戦後から約70年間、学校による職業あっせんの形は何も変わっていないんです。この事実を知り、何とかしなければいけない、これは社会課題だと強く思いました。それがジンジブを創設した背景でもあります」

高校生の就職活動で特徴的なのが、「一人一社制」と呼ばれる国が決めた制度(※)。求人解禁日から一定時期の間まで、1人の生徒が応募できる企業は1社のみとなり、その企業の内定が得られなかったときに初めて生徒は他の企業に応募できるようになる。

  • 都道府県ごとに、行政(厚生労働省、文部科学省)と全国高等学校協会、主要経済団体が毎年話し合いで詳細を決めており、地域によってルールやスケジュールが異なる

「日本の法律上では、職業の選択は自由です。でも実情は、学校関係者、経済団体関係者、行政の三者による協定によってルール化された学校あっせんの仕組みの中、多くの高校生は学校の教師が薦める企業に応募するのが現状です」

「一人一社制」による高校生の就職活動の流れ。高校2年の1月から6月まで学生は三者面談が行われ、その間、企業は採用活動の準備を行う。3年生(卒業年)の6月1日からハローワークによる求人申込書の受付が開始。7月1日より学生に求人票が公開され、企業による学校への求人申込及び学校訪問が開始。9月5日より学校から企業への生徒の応募書類提出が開始され、9月16日から企業による選考が開始及び採用内定が開始される。3月に卒業後、入社に至る。
「一人一社制」による高校生の就職活動の流れ
※2021年卒の選考スケジュールは新型コロナウイルスの影響を考慮し、10月5日応募開始、10月16日選考開始と1カ月後ろ倒しになっている

大学生であれば、インターンや業界研究、OB訪問、大手求人サイトなどいろんな手段を使って、自分で業界や企業について学び、比較してから求人に応募することできるが、高校生の場合は、学校に届く求人票に限定されてしまう。

求人票は、ハローワークで認可を受けた簡潔なものになり、仕事内容や給与、就業場所、就業時間などが文字で羅列されているだけ。そんな情報が不足した中で、就職先を決めなければいけない。

また、業種も限られている。文部科学省の調べによると2019年度は製造業が41.2パーセントを占め、卸売業・小売業が10.4パーセントと続いて多く、成長産業である情報通信業は1.1パーセントと非常に少ない。

「高校生の早期離職率は、3年間で4割と、非常に高いんです。そして特徴的なのが、1年目の早期退職の多さ。1年目の退職は17.4パーセント、入社してから3カ月以内に職場を辞める超早期退職の割合は10パーセントにも上ります(※)。人が会社を辞める理由って、周囲の人間関係とか企業文化によるものが大きいですよね。大学生のようにいろいろ体験する機会がないからこのような現状になっているんです」

  • 「新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)」厚生労働省データに基づく

さらに、高卒生の再就職は難しい。大学生であれば、第二新卒(※)などの制度があり再就職しやすいが、高卒生の場合はそういった制度はなく、その約36パーセント(大卒者は約25パーセント)が非正規雇用となってしまうと、佐々木さんは話す。

  • 一般的には「新卒で入社して3年未満の求職者」を指す

「内定を取る」ことが就職活動のゴールに

1人1社しか応募ができない「一人一社制」という、高校生の就職活動におけるルール。2020年2月、文部科学省、厚生労働省が開催する「高等学校就職問題検討協議会」では、複数社応募も可能にすることも含めた報告書を発表した。

では、高校生自身、この「一人一社制」をどのように感じているのか。ジンジブでは、2019年の3月から4月にかけて、2019年4月から高校3年生になる全国の就職希望者(有効回答数:908名)に対し、アンケート調査(別ウィンドウで開く)を行った。

すると、この制度をそもそも「知っている」と回答した高校生は、全体の17.1パーセント、「聞いたことはある」と回答した高校生は20.5パーセントにとどまり、「知らなかった」と回答した高校生の61.6パーセントを大きく下回る。

また、全体の60パーセント以上が「一社だけの応募で良い」と回答した。

何か他のものと比較できるほどの知識や情報がない高校生は、そのルールに疑問を感じることなく受け入れているのかもしれないと、ジンジブでは見ている。

図表:高校3年制の就職活動に関するアンケート

高校3年制の就職活動に関するアンケートを示す円グラフ。「一人一社制」の仕組みを知っていますか?という質問に対し、知らなかった61.6%、聞いたことはあったが詳しく知らなかった20.5%、知っている17.1%、未回答0.8%。
また、9月からの面接時期には一社ずつしか応募できません。同時に複数社応募したいですか?という質問に対し、1社だけの応募で良い61.3%、複数社応募したい34.1%、未回答4.5%。
「一人一社制」について6割以上の高校生が「知らなかった」と回答。また、就職を希望する6割以上の高校生が「一社だけの応募で良い」と回答した。株式会社ジンジブ「高校3年制の就職活動に関するアンケート」より引用

「まず、教育的背景からみると、諸外国はコーチング(生徒自身が答えを持っていると考え、それを引き出す教育)を実践しているのに対し、日本の多くの学校ではティーチング(先生が答えを持っており、生徒が同じことができるようにすること)をしています。就職活動は自分の幸せな未来や大切な価値観を認識して、そこから就職先を見つけるもの。自分で答えを探さなくてはいけないものなのに、その練習ができていません。また、社会に目を向けると、日本という国はとても豊かです。これは良いことではありますが、若者の『こんな風になりたい』という欲望を削いでしまっているのかもしれません」

学校の先生や生徒の中で、「内定を取ること」がゴールになってしまっているのではないかと、佐々木さんは推測する。

高校生の就職活動における課題を語る佐々木さん

高校生が選べる未来の選択肢を増やす

そんな現状を打破するためには、高校生が「自分の目で見て、決める」ことだと、佐々木さんは語気を強める。

ジンジブでは、高校新卒の求人サイト「ジョブドラフト」(別ウィンドウで開く)の運営や、合同企業説明会イベント「ジョブドラフトFes」(別ウィンドウで開く)などの主催を通じ、高校生への就職情報の提供や高校の進路指導サポート、企業の高校新卒の採用支援や採用後の人材の定着支援を行っている。

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ジョブドラフトNavi。2020年7月末現在、 延べ3,000社の企業が活用。高校生目線を重視した企業の雰囲気・先輩の声などが求人情報と一緒に掲載されている
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「ジョブドラフトFes ~2020夏~」の会場の様子

「私たちの会社では、毎年新入社員の半分を高卒生から採用しています。少し前まで高校生だった彼らの意見を取り入れることで、高校生の皆さんにとって本当に役立つ情報を提供し続けられるように努めています」

ジョブドラフトNaviは、「高校生目線」を重視した求人情報を掲載。企業の雰囲気や先輩インタビューなど、写真や動画を活用しながら、できるだけリアルに伝わるように工夫されている。

また、LINEやTwitterなど、SNSから直接、高校生の進路相談や求人紹介の相談も受け付けている。

「サービスを提供し始めた当初は、『一人一社制』に慣れ親しんでいる多くの教育関係者から批判の声をいただきましたが、全国に生徒がいる通信制高校や、求人企業が少ない地方の高校の先生からは歓迎されました。最近は、高校生にとって選択肢が多い方がいいと賛同してくれる教育関係者の方も増えてきました」

新型コロナウイルスの影響もあり、厚生労働省が発表した2020年7月時点の高校生の求人倍率は全国平均で2.08倍と、前年同期に比べて24.3パーセントも減少している。

そのような状況下で、高校生に向けて多くの就職の選択肢を提供できるジンジブのサービスは、ますます重要性が高まってくるであろう。

「これまで、高校生の就活事情としては、高卒=ブルーカラー(肉体労働者)といったイメージがあり、選択できる職種のバリエーションも豊富ではありませんでした。しかし、考えてみてください。もちろん、人や専攻によって違いはあると思いますが、大学で4年間サークル活動や勉強をしてきた人と、社会で4年間働いてきた人だと22歳時点での能力は大きく違いますよね」

日本には高卒生に対する偏見や固定観念を抱く人も多いが、高校生が持つポテンシャルの高さに着目すべきだと佐々木さんは語る。

「才能の差は小さく、努力の差は大きく、継続の差はさらに大きいという言葉もあります。高校生の皆さん、自分自身のなりたい未来を考えて、そこから何をするべきかぜひ考えてみてください。私たちも、事業を通じて全力で応援します」

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高校生に向けて熱いメッセージを送る佐々木さん

高校生だけでなく、多くの若者が自ら可能性を見出し、より良い未来を築いていく。そのためには、子どもや若者が主体的に取り組める教育、一人一人の個性や才能を尊重する社会づくりが重要なのだと感じた。

〈プロフィール〉

佐々木満秀(ささき・みつひで)

高校卒業後、運送会社に就職。21歳で自分のトラックを購入し、個人事業での運送業を始める。23歳で求人広告会社に就職、営業部長を経て26歳で常務取締役に就任。1998年、30歳の時に経営難であった同社が倒産。そのことをきっかけに起業し、株式会社ピーアンドエフを創業。2014年に株式会社ジンジブを設立。2015年、高卒就職を支援するサイト「ジョブドラフト」を開始する。
株式会社ジンジブ コーポレートサイト(別ウィンドウで開く)
ジョブドラフト 公式サイト(別ウィンドウで開く)

特集【「18歳」シャカイ創りのヒント】