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日本の国際・政治に関する社会課題

複雑化する国際社会の課題は、日本の政治や私たちの暮らしと地続きにつながっている

グローバル化が進み、日本でも国外にルーツを持つ人々との共生が日常となっています。移民や難民の方々の人権を尊重し、多様性を認め合いながら、安全で豊かな社会をいかにつくり上げていくかは、今私たちが向き合うべき大きなテーマです。

さらに、緊迫する安全保障環境や人道支援のあり方、そして民主主義の根幹を支える「政治参加」の停滞など、日本を取り巻く課題は国内外で多層的に広がっています。

誰もが尊厳を持って共生し、次世代に確かな未来を引き継ぐために、今どのような現状があり、どのような視点が求められているのでしょうか。

目次

●移民・難民

●戦争・紛争

●児童労働・人身取引(人身売買)

●投票率の低さ(政治への不参加)

移民・難民

「移民」とは、「出生国や国籍国を離れ、法的地位や移動理由を問わず他国へ移り住む人々」を指す総称です。国際移住機関(IOM)は、これには自発的な意思だけでなく、やむを得ない事情による移動も含まれるとしています。

「難民」とは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、「人種や宗教、政治的意見などを理由とした迫害の恐れから逃れ、国際的保護を必要とする人々」と定義されています。

シリアとアフガニスタンからEUへ向かう難民の集団(2015年)

どこまでを移民とし、どこからを難民として扱うか。この定義の解釈の違いが、各国の受け入れ態勢や支援の判断に大きく影響しています。

日本における難民問題は極めて深刻です。日本は難民条約加盟国でありながら、2024年の各国の難民認定数比較によれば、難民認定率はわずか2.2パーセントと、諸外国に比べて著しく低い水準にあります。認定を求める人々は極めて厳しい状況に置かれており、出入国在留管理庁(入管)の対応についても、収容の長期化や不透明な手続きなど、人権保護の観点から多くの課題が山積しています。

特に懸念されるのは、認定が降りないまま強制送還の対象となるケースです。自国に戻れば弾圧や紛争によって命の危険にさらされることが明白であっても、公的な保護を受けられない人々が少なくありません。

現在は「難民・移民フェス」のような草の根の支援活動が広がっていますが、今後は制度の透明性を高め、排除するのではなく、共に生きる隣人として受け入れる社会の仕組みづくりが求められています。

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戦争・紛争

日本は戦後一貫して「戦争をしていない国」ですが、世界各地での衝突や日本周辺の軍事的緊張は、私たちの安全や暮らしに直結する深刻な社会課題となっています。

外務省の「外交青書 2025」(外部リンク)「令和7年版 防衛白書」(外部リンク/PDF)においても、日本を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しく複雑な状況にあると警鐘を鳴らしています。これは、近隣諸国における核・ミサイル開発の進展や、力による一方的な現状変更の試みといった軍事的な圧力に加え、サイバー攻撃や偽情報の拡散といった、大規模な武力衝突には至らない「グレーゾーン」の脅威が複合的に高まっているためです。

こうした多様な事態の常態化により、かつてのように「有事」と「平時」を明確に分けることが難しく、その境界が極めて曖昧になっているのが現状です。

現代の戦争のイメージ画像
現代における戦争は武力の衝突のみではない

これに対し、日本政府は「国家安全保障戦略」に基づき、防衛力の抜本的強化と外交努力の両立を進めています。具体的な数値目標として、2027年度には防衛関係予算を国内総生産(GDP)比で2パーセントに到達させる方針を掲げており、2023年度からの5年間で約43兆円に上る防衛力整備計画を推進しています。

軍事的な枠組みにとどまらず、経済や技術、サイバー空間といった広範な領域において、国としてのレジリエンス(回復力・強靭性)を高め、予測困難な事態に対して切れ目のない備えを講じていくことが求められています。

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児童労働・人身取引(人身売買)

児童労働の中でも、子どもの成長や教育を妨げ、身体的、精神的に有害な影響を及ぼす労働は「最悪の形態の児童労働」と定義されています。日本ユニセフ協会(外部リンク)によれば、2024年時点で5歳から17歳の子ども約1億3,800万人が児童労働に従事しており、そのうち約5,400万人は、「最悪の形態の児童労働」を強いられています。

これに密接に関わる深刻な課題が「人身取引(人身売買)」です。これは暴力や脅迫、詐欺などの手段を用いて、性的搾取や強制労働を目的に人が売買される行為を指します。

こうした事態を招く要因の1つに貧困があります。経済的に困窮した親や親族が「良い仕事がある」という誘いに乗り、結果として子どもたちが過酷な環境へと送り出されてしまう構図が数多く存在します。

この問題は海外に限った話ではなく、日本国内でも発生しています。政府広報によれば、巧妙な勧誘や不当な債務によって、風俗店や建設現場、農場などで自由を奪われ働かされる事例が報告されています。被害者は外部との接触を制限されることが多く、実態が表面化しにくいのがこの問題の恐ろしさです。

本における人身取引事犯の被害者数推移(2001年〜2024年)のグラフ。全体の被害者数は2005年の117人をピークに減少したが、近年は横ばい。特筆すべきは日本人被害者の急増で、2024年には全体の約88%にあたる58人が日本人となっている。
日本における人身取引事犯の被害者数の推移。データ引用:政府広報オンライン「人身取引」は日本でも発生しています。あなたの周りで被害を受けている人はいませんか?」(外部リンク)

今後は、国際的な監視体制の強化はもちろん、消費者が製品の背景にある労働環境に関心を持つなど、社会全体で不当な搾取を許さない仕組みづくりが求められています。

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投票率の低さ(政治への不参加)

2026年2月に行われた衆議院議員総選挙の投票率は56.26パーセントと、戦後で5番目の低さでした。投票率の低さは、国民の意思が十分に反映されない状況を招き、政治の正当性を揺るがせます。政策の偏りを生む要因にもなるため、政治への不参加は深刻な社会課題といえます

衆議院議員総選挙の年代別投票率推移(1967年〜2024年)のグラフ。全体の投票率は73.99%から53.85%へと長期的な下落傾向にある。年代別では60歳代が常に高く、20歳代が最も低いという世代間格差が顕著に表れている。
衆議院選における年代別投票率の推移(直近の2026年2月分は集計中につき含まず)。データ引用:総務省「国政選挙の年代別投票率の推移について」(外部リンク)

総務省のデータでは、衆議院選挙の投票率は平成初期まで70パーセント前後でしたが、以降は下落傾向にあります。特に若年層の低さが顕著で、60〜70代が高い水準を維持する一方、20代は30パーセント台に留まり、倍近い世代間格差が生じています。

日本学術会議の提言(外部リンク/PDF)によると、背景には複数の要因があり、相次ぐ不祥事による政治不信や、自分の票で政治を変えられるという「政治的有効性感覚」の欠如が投票意欲を削いでいます。また、戸別訪問の禁止などの厳しい選挙規制や、投票所の再編による物理的制約、制度解説に偏った主権者教育の不足も若者の意識低下を招いています。

政治が一部の層の意見だけに偏らないためには、主権者教育の充実や利便性の向上を通じて、全ての世代が「自分たちの未来を自ら選ぶ」感覚を取り戻せる社会の仕組みづくりが急務と言えます。

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日本若者協議会に聞く、若者が主体的に政治と関わる方法(外部リンク)

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面倒な国民が政治を変える? 議員の「男女平等」を実現するヒントを専門家に聞いた(別タブで開く)

若者が選挙へ行くべき理由とは。NYNJ能條桃子さんに問う(外部リンク)

[参考資料]

国連広報センター「難民と移民の定義」(外部リンク)

IOM Japan(国際移住機関 日本)「移住(人の移動)について」(外部リンク)

UNHCR 日本「難民とは?」(外部リンク)

認定NPO法人 難民支援協会「日本の難民認定はなぜ少ないか?-制度面の課題から」(外部リンク)

外務省「外交青書 2025 | 1 安全保障に関する取組」(外部リンク)

防衛省「令和7年版 防衛白書」(外部リンク/PDF)

国家安全保障局令和4年12月「国家安全保障戦略(概要)」(外部リンク/PDF)

政府広報オンライン「人身取引」は日本でも発生しています。あなたの周りで被害を受けている人はいませんか?」(外部リンク)

日本ユニセフ協会「ユニセフの主な活動分野|子どもの保護|児童労働 」(外部リンク)

総務省「国政選挙の年代別投票率の推移について」(外部リンク)

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