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日本の災害・防災・復興に関する社会課題

イメージイラスト:揺れる家と避難する家族
四方を海に囲まれた日本において、自然災害との共生は避けて通れない大きなテーマです

近年、地球温暖化に伴う災害の激甚化や、能登半島地震で見られたような震災と水害の「複合災害」の発生により、従来の想定を上回る備えが求められています。

誰もが安心して暮らせる社会を次世代に引き継ぐためには、ハード面の整備だけでなく、防災教育による意識改革や、高齢者や障害者といった「避難行動要支援者」を誰一人取り残さないための個別計画の策定、そして官民が連携したボランティア支援の強化など、多層的なアプローチが不可欠です。

命を守り、速やかな復興を実現するために、今どのような現状があり、解決に向けてどのような視点が求められているのでしょうか。

目次

●災害の激甚化

●防災教育

●高齢者・障害者の防災

●災害ボランティア(被災地ボランティア)

災害の激甚化

地球温暖化によって、世界的に自然災害が甚大な被害をもたらすようになってきています。気温上昇により大気中の水蒸気量が増加し、線状降水帯による猛烈な雨や非常に強い台風が頻発するようになったためです。

実際に日本でも、2024年に発生した能登半島地震では、最大震度7を観測するほどの地震が起きた後、同年9月に被災地を「奥能登豪雨」が襲い、仮設住宅が浸水するなど深刻な複合被害を受けました。また、同年8月には「南海トラフ地震臨時情報」が発表されるなど、広域的な巨大災害のリスクも一段と高まっています。

能登半島地震の被災現場

これに対し政府は、司令塔機能を強化するため、令和8年度中の「防災庁」設置に向けた準備を進めています。対策としては、堤防整備だけでなく流域のあらゆる関係者が協働する「流域治水」の推進や、AIによる浸水予測といった「防災DX」の導入が不可欠です。

今後は、行政による公助のみならず、クリエイティブな視点を取り入れた防災教育や遊びを交えた訓練を通じて、全ての世代が災害を「自分ごと」として捉え、共に備えをアップデートしていく社会の仕組みづくりが急務となっています。

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防災教育

「防災教育」とは、災害時に的確な判断で自らの安全を確保する「自助」の能力を養い、周囲と助け合う「共助」の精神を育むことで、究極的には「命を守る」ことを目的とした教育活動です。文部科学省の定義では、自然災害のメカニズムを正しく理解する基礎知識の習得に加え、日常的な備えを実践できる態度を養うことが重視されています。

全国の教育機関ではそれらを踏まえた防災教育の指導要領が定められており、避難訓練や道徳など限られた時間だけでなく、全ての教科で防災を意識した「教科横断的」な防災教育を進めています。

避難訓練のイラスト
避難訓練以外の防災教育が求められている

しかし、文部科学省は防災教育の推進において、「人材」「内容」「方法」の3つの側面に課題があると指摘しています。人材面では、学校と地域を繋ぐ「担い手」の不足や、教員の異動による継続性の欠如が深刻です。内容面では、発達段階に応じた教え方の基準があいまいで、教材の共有が不十分である点。方法面では、訓練が画一的で家庭や地域への波及効果が薄い点が課題となっています。

今後は、教職員の研修充実やデジタル技術を活用した能動的な学習を取り入れ、学校、家庭、地域が一体となって「自分たちの命は自分たちで守る」文化を醸成する仕組みづくりが急務です。

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高齢者・障害者の防災

高齢者や障害者は、災害が発生した際に自力での避難が困難で、周囲の支援が必要となる「避難行動要支援者」にあたります。近年の大規模水害では犠牲者の多くがこの層に集中しており、令和2年7月豪雨では、死者のうち65歳以上が約79パーセントを占めるなど、「逃げ遅れ」による被害は依然として深刻です。

避難所のような室内で、青いシートと段ボールの上に座る高齢男性と、その肩に手を添えて話しかける女性スタッフの写
超高齢社会かつ災害大国である日本において、避難行動要支援者への防災対策は喫緊の課題といえる

政府は対策として災害対策基本法を改正し、以前から義務化されていた「避難行動要支援者名簿(対象者のリスト)」の作成に加え、一人一人に合わせた具体的な逃げ方を決める「個別避難計画」の策定を市町村の努力義務としました。

しかし、実効性には大きな課題が残っており、2023年10月の時点で対象者の特定(名簿整備)はほぼ完了しているものの、計画を「全部策定済」とした自治体はわずか8.7パーセントに留まります。また、福祉避難所全体(24,935カ所)のうち、法律に基づき正式に指定、公示された「指定福祉避難所」は31.2パーセントに過ぎません。

背景には受け入れ態勢への不安や、防災部局と福祉部局の連携不足、現場の支援者不足といった構造的な問題があります。

こうした状況の改善に向け、現在はデジタル技術を活用した「クラウド型被災者支援システム」による情報の高度化や、福祉施設へのBCP(業務継続計画)策定の義務化が進められています。

誰も取り残さない防災を実現するためには、制度の整備に加え、地域社会全体で要支援者の存在を把握し、平時から福祉と防災が手を取り合う「顔の見える関係づくり」が求められています。

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災害ボランティア(被災地ボランティア)

災害ボランティア(被災地ボランティア)は、発災時に被災地に駆けつけ、きめ細やかな被災者支援を行う重要な存在です。一般ボランティアの役割は、被災家屋の清掃や片付け、家屋内・水路の土砂搬出、災害ごみの運び出しから、避難所での物品配布や引越し支援まで多岐にわたります。

手を差し伸べるイメージ画像

能登半島地震では、避難所運営やがれき撤去などを専門とする300を超えるNPO等の専門ボランティア団体が被災地に入りました。一般ボランティアは、5月6日までの累計で石川・富山・新潟の3県合わせて延べ約9万人が活動しました。

しかし、現場には大きな課題も残っています。それは「連携」の壁です。行政、社会福祉協議会、NPO等の民間団体の三者間での情報共有や役割分担が十分ではなく、支援のハブ機能が不足している地域が少なくありません。令和6年能登半島地震では、発災当初に道路の渋滞や宿泊場所の不足により、一般ボランティアの被災地入りが制限されたほか、多くの被災者が広域避難したことでボランティアニーズの把握が困難になるということもありました。

こうした課題に対し、現在は行政、社会福祉協議会、NPO等が平時から顔の見える関係を築くための研修会や、多様な担い手間の調整や情報共有を担う「災害中間支援組織」の育成が進められています。

誰も取り残さない防災を実現するためには、SNSを活用したニーズ把握や戸別訪問(アウトリーチ)を強化し、公助の手が届きにくい個別ニーズに寄り添う、柔軟で継続的な支援体制づくりが急がれます。

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[参考資料]

内閣府 防災情報のページ「令和6年能登半島地震を踏まえた防災体制の見直し」(外部リンク/PDF)

内閣官房「防災立国の推進に向けた基本方針」(外部リンク/PDF)

文部科学省「学校防災のための参考資料『生きる力』を育む防災教育の展開」(外部リンク/PDF)

内閣府 防災情報のページ「特集 防災教育 」(外部リンク)

文部科学省「現在の防災教育における課題」(外部リンク)

内閣府 防災情報のページ「避難行動要支援者の避難行動支援に関すること 」(外部リンク)

厚生労働省「高齢者・障害者等の要配慮者に関する防災と福祉の連携について」(外部リンク/PDF)

内閣府 防災情報のページ「災害対策基本法等の一部を改正する法律の概要」(外部リンク/PDF)

内閣府 防災情報のページ「個別避難計画の策定等に係る進捗状況の把握について(フォローアップの結果)」(外部リンク/PDF)

内閣府 防災情報のページ「指定避難所等の指定状況等の調査結果」(外部リンク/PDF)

内閣府 防災情報のページ「防災に関してとった措置の概況令和6年度の防災に関する計画」(外部リンク/PDF)

内閣府 防災情報のページ「令和6年能登半島地震を踏まえた災害対応の在り方について(報告書)」(外部リンク/PDF)

内閣府 防災情報のページ「令和2年度 被災者支援主体の連携体制に関する現状調査」(外部リンク/PDF)

内閣府 防災情報のページ「災害中間支援組織による支援調整について」(外部リンク/PDF)

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