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日本の環境・まちづくりに関する社会課題

「環境・まちづくりに関する社会課題」というタイトルのもと、汗をかく地球や工場の排水、空き家などが描かれたイラスト
産業の発展と引き換えに、地球環境の負荷が加速している

私たちが暮らすまちや環境は、気候変動、環境汚染、インフラの老朽化、地方の過疎化といったさまざまな問題を抱えています。豊かな自然や安心できる暮らしを次世代に引き継ぐために、解決すべき課題は多岐にわたります。それぞれどのような現状があり、どのような解決策が求められているのでしょうか。

目次

●環境汚染(海洋・大気・水質・土壌)

●森林破壊

●生物多様性の減少

●地球温暖化・気候変動

●インフラ老朽化

●再生可能エネルギーの普及

●過疎化

環境汚染(海洋・大気・水質・土壌)

環境汚染とは、人間の活動により海洋、大気、水質、土壌などの自然環境が汚染されることです。産業の発展は豊かな暮らしをもたらした反面、排出される廃棄物や有害物質の蓄積により、地球規模での環境悪化が深刻な問題となっています。

海洋汚染については、毎年約800万トンのプラスチックごみや、分解されにくい化学物質「PFAS」が流入しており、また、海水の二酸化炭素吸収による「海洋酸性化」で、pH(水素イオン濃度指数)が約0.1低下しました。これによってサンゴや貝類が骨格をつくれず死滅すれば、生態系が崩壊し、食卓から魚が消える可能性があります。

イメージ
海に流れ着くごみ

大気汚染では、微小粒子状物質であるPM2.5(大気中に浮遊している2.5マイクロメートル以下の小さな粒子)が深刻です。国内のPM2.5の環境基準は「1立方メートルあたり年平均15マイクログラム以下」ですが、現在も基準を超える地域があります。わずか10マイクログラムの濃度上昇でも循環器疾患等の死亡リスクが高まるため、警戒が必要です。

水質面では、公共用水域の環境基準達成率が99.1パーセントに達する一方、特定の地域で指針値を超えるPFASが検出されるなど、飲み水の安全性への影響が懸念されています。

土壌においても、工場の跡地などで有害物質が地下水を通じて広がり、農作物を介して体内に蓄積されるリスクがあります。

今後は資源を再利用する循環型社会への転換を進め、豊かな自然を次世代に引き継ぐための行動が強く求められています。

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森林破壊

森林破壊とは、過度な伐採や土地の開発、火災などで森林が失われ、森林が本来持っている働きが大きく損なわれてしまうことです。

世界的に森林減少が進むなか、日本の森林面積は約2,500万ヘクタールと、国土の約3分の2を占める規模を60年以上にわたって維持しています。この森林率は、フィンランド、スウェーデンに次いでOECD加盟国で3番目の高さを誇ります。

現在の日本における森林の課題は、面積の減少よりも、手入れが行き届かない「管理放棄」や資源の循環が滞っている点です。例えば里山では、人口減少などで人の働きかけが減る「アンダーユース(過少利用)」により、竹の侵入やナラ枯れといった問題が発生し、生物多様性に影響を与えています。

カシノナガキクイムシ(カシナガ)が媒介するナラ菌により、ミズナラ等が集団的に枯れる「ナラ枯れ」

森林の公益的な機能を保つためには、「伐(き)って、使って、植える」という資源の循環を確立し、伐採後に再び木を植える「再造林」を確実に行う仕組み作りが強く求められています。

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生物多様性の減少

生物多様性とは、地球上のあらゆる生き物たちが互いにつながり合い、豊かな生態系を形成している状態のことです。私たちは食料や水の供給、気候の安定など、自然がもたらす多くの恩恵(生態系サービス)を受けて暮らしており、この絶妙なバランスは生存に欠かせない基盤となっています。

地球を中心に、ライオンやシカなどの野生動物と環境・エネルギーに関するアイコンが並ぶイメージ画像

しかし、人間の活動によって、この生命のネットワークがかつてない速度で損われています。地球上にいるとされる約3,000万種類の生き物のうち、4万8,646種が絶滅の危機に瀕しています。絶滅速度は過去の100倍から1,000倍ともいわれ「6度目の大量絶滅」と呼ばれる異常事態です。

日本でも環境省のレッドリスト(種の絶滅の危険度を客観的に評価してリストにまとめたもの)に3,700種以上が掲載され、絶滅危惧種が急速に増加しています。一度崩れてしまった生態系は、単に木を植えたり種を放したりするだけでは元に戻りません。

今後は損失を止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」への転換が必要です。2030年までに陸と海の少なくとも30パーセントを保全する「30 by 30(サーティ・バイ・サーティ)」の実現に向け、自然と共生する未来を目指す行動が強く求められています。

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地球温暖化・気候変動

地球温暖化とは、人間の経済活動によって排出された温室効果ガスが大気中に増加し、地球全体の平均気温が上昇する現象です。特に化石燃料の大量消費が、本来熱を宇宙に逃がす自然のバランスを崩し、世界規模で異常気象や海面上昇といった「気候変動」を引き起こしています。

燃える火の上に置かれた地球と温度計、氷山の上で困るペンギンなどを描いた地球温暖化のイメージイラスト

「気候変動」は世界各地で起こっており、2022年7月にはイギリスで40.3度まで気温が上昇し、国内最高気温を記録。2023年6月にはインドのベラーバルの降水量が平均比311パーセントとなるほど雨が降り、カナダでは約1,850万ヘクタールが消失する森林火災が発生するなど、さまざまな地域で極端な気象現象が頻発しています。

日本でも「温室効果ガスを2030年度までに2013年度比で46パーセント削減する」という高い目標を掲げ、対策を急いでいます。気温の上昇は、猛暑による熱中症の増加や農作物の品質低下、さらには大雨や台風の激甚化など、私たちの命や生活を脅かす被害をもたらしています。一度始まった温暖化を止めるのは容易ではありません。

今後は再生可能エネルギーへの転換を進める「脱炭素社会」への移行とともに、一人一人がエネルギーの使い方を見直し、未来のために行動を積み重ねることが強く求められています。

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インフラ老朽化

インフラとは、道路、橋、水道、電気など、私たちの生活や経済活動を支える土台となる公共施設のことです。インフラは、産業の発展を支え、人々の生活と安全を守るために欠かせない存在です。

しかし現在の日本では、高度経済成長期に一斉に作られた施設の老朽化が深刻な社会課題となっています。国土交通省の推計によれば、全国に約73万ある道路橋のうち、作られてから50年以上経過したものの割合は、2023年に約37パーセント。今後15年ほどで急増し、2040年には約75パーセントにまで上昇する見込みです。また、トンネルについても2023年には約25パーセントだったのが、2040年には約52パーセントまで上昇すると見込まれています。

これらを放置すれば、崩壊や重大な事故、災害時の被害拡大につながる恐れがあります。しかし、多くの地方公共団体では体制面・予算面に課題を抱えており、限られた資源で社会の安全を維持する新しい仕組み作りが急務となっています。

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再生可能エネルギーの普及

再生可能エネルギーとは、太陽光や風力、地熱など、自然界に常に存在し、繰り返し利用できるエネルギーのことです。発電時に二酸化炭素を排出しないため、地球温暖化対策の切り札として期待されています。

再生可能エネルギーの代表、太陽光発電

現在、世界では約6億7,500万人が電気を使えない環境に置かれており、誰もが安価でクリーンなエネルギーを利用できる社会の実現が求められています。日本でも2030年度の発電量に占める再エネ比率を36〜38パーセントに引き上げる目標を掲げており、2022年度の実績は約21.7パーセントまで拡大しました。

さらなる普及には高い発電コストや、天候による発電量の変動といった課題が残ります。また、発電に適した土地が偏っているため、送電網の整備や地域環境との調和も不可欠です。

今後は技術革新によるコスト低減に加え、消費者一人一人が環境に配慮した電力を選択できる仕組みを広げ、持続可能な社会を築くための行動が強く求められています。

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過疎化

過疎化とは、急激な人口減少と高齢化により、医療、交通、財政など生活基盤の維持が難しくなっている状態を指します。総務省の「令和5年度版 過疎対策の現況」(外部リンク/PDF)によると、全国の市町村の約51.5パーセント(885市町村)が過疎地域に指定されています。このエリアは国土の約6割を占める広大さにもかかわらず、居住人口は全体の約9.3パーセントに過ぎず、極端な人口偏在が発生しています。

過疎化により消滅可能性都市に分類される自治体も増加

こうした地域では、採算悪化による路線の廃止が相次ぎ、移動手段の有無が生活の質を左右する「移動格差」が深刻化しています。実際に公共交通機関の撤退が進む地域では、免許を持たない高齢者らが通院や買い物などの手段を失う「交通難民(移動弱者)」が増加し問題となっています。

現在は、AIを活用し予約に応じて柔軟に運行するオンデマンド交通など、テクノロジーで移動の壁を取り払う試みも始まっています。誰もが自由に移動できる権利を守るため、地域の実情に即した持続可能な交通網の再構築が強く求められています。

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豊かな未来の鍵は地方の余白?「ポスト資本主義社会」を探る(別タブで開く)

[参考資料]

WWFジャパン「海洋プラスチック問題について」(外部リンク)

気象庁「日本の気候変動2025」(外部リンク)

環境省「大気環境・自動車対策|微小粒子状物質(PM2.5)に関する情報」(外部リンク)

環境省「令和4年度公共用水域水質測定結果及び地下水質測定結果について」(外部リンク)

環境局「令和6年度 東京都地下水概況調査」(外部リンク/PDF)

環境省・(公財)日本環境協会「土壌汚染対策法のしくみ」(外部リンク/PDF)

WWFジャパン「森林破壊の現状・原因・影響と私たちにできること」(外部リンク)

林野庁「森林資源の現況」について」(外部リンク)

林野庁「ナラ枯れ被害」(外部リンク)

環境省「ecojin(エコジン)|生物多様性とはなにか?」(外部リンク)

WWFジャパン「【2025更新】レッドリストとは?」(外部リンク)

環境省「環境省レッドリスト2020の公表について」(外部リンク)

環境省「30by30」(外部リンク)

環境省「地球温暖化対策計画(令和3年10月22日閣議決定)」(外部リンク)

国土交通省「インフラメンテナンス情報|社会資本の老朽化の現状と将来」(外部リンク)

国土交通白書2024「第4節社会資本の老朽化対策等」(外部リンク)

経済産業省 資源エネルギー庁「なっとく!再生可能エネルギー|総論 再生可能エネルギーとは」(外部リンク)

経済産業省資源エネルギー庁「第6次エネルギー基本計画」(外部リンク/PDF)

環境省「2022年度(令和4年度)温室効果ガス排出・吸収量について」(外部リンク/PDF)

総務省 地域力創造グループ過疎対策室「令和5年度版過疎対策の現況(概要版)」(外部リンク/PDF)

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