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日本の子ども・若者に関する社会課題

教育格差・体験格差、いじめ・不登校・自殺、児童虐待、教育現場の疲弊、インクルーシブ教育、ヤングケアラーの場面を表すイラスト
いじめやヤングケアラー、教師の働き過ぎなど、日本の子どもたちや、彼らと向き合う大人たちは、どのような問題を抱えているのか

日本で暮らす子どもや、学校や保育園で彼らと向き合う先生・保育士は日々、さまざまな問題に直面しています。それぞれどのような課題があるのか、問題を解決するにはどうすればよいのか。

まずは日本のこども・教育にまつわる社会課題について知るところから始めましょう。

目次

●教育格差・体験格差

●いじめ・不登校・自殺

●児童虐待

●教育現場の疲弊

●インクルーシブ教育

●ヤングケアラー

教育格差・体験格差

「教育格差・体験格差」とは、貧困や家庭環境、言語背景などが重なって起こる複合的な社会課題で、子ども・若者の将来の進路や成長に影響を与えています。

格差の原因として主に挙げられるのは、家庭の経済的要因。内閣府が2021年に調査した「令和3年子供の生活状況調査の分析報告書」(外部リンク)によると、世帯の収入が低いほど、学校がある日に授業以外の勉強を「全くしない」と回答した割合や、クラスの中での成績について「下のほう」と回答した割合、学校の授業について「分からない」と回答した割合が高いということが分かっています。

世帯収入別のクラスの中での成績(横棒グラフ)
等価世帯収入(世帯の年間収入を世帯の人数の平方根で割ったもの)の水準別、クラスの中での成績。世帯収入を3段階(中央値以上・中央値の2分の1以上中央値未満・中央値の2分の1未満)に分けた場合の、クラスの中での成績を示す積み上げ横棒グラフ。収入が低い層ほど『下の方』と回答する割合が高く、中央値の2分の1未満の層では33.0%が『下の方』と回答。一方、中央値以上の層では『上の方』と『やや上の方』の合計が41.4%を占める。
等価世帯収入(世帯の年間収入を世帯の人数の平方根で割ったもの)の水準別、クラスの中での成績。出典:令和3年12月『令和3年 子供の生活状況調査の分析 報告書』内閣府政策統括官

また、日本語指導が必要な外国ルーツの子どもは、日本語や学校文化に不慣れなまま通常学級に入ると、授業理解や友人関係で不利になりやすく、そうした支援の薄さも問題視されています。

このような格差は各々の努力だけでは解消しにくく、含む公的・民間の連携施策が不可欠とされています。

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いじめ・不登校・自殺

いじめや不登校は、子どもたちの学校生活において深刻な問題となっており、精神的に追い詰められた結果、最悪の場合、自殺という選択をしてしまうことも。

「いじめ防止対策推進法(※)」施行後も、令和6年度の文部科学省の調査では、小・中学校におけるいじめの認知件数は約75万件、不登校の生徒数は約35万人と、いずれも過去最多となりました。

いじめの認知件数の推移(折れ線グラフ)
「平成25年度から令和6年度にかけての学校種別いじめ認知件数の推移を示す折れ線グラフ。全校種合計は約19万件から769,022件へと大幅に増加。内訳は小学校610,612件、中学校135,865件、高等学校18,891件。特に小学校での増加が顕著で、全体の約8割を占める。」
2024年の小・中・高校生のいじめ認知件数は76万9,022件と過去最多に。データ引用元:文部科学省「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」(外部リンク/PDF)

さらに、最近の小・中・高校生の年間自殺者数は500人を超えており、年々増加し続けています。こうした状況が続くのは、子どもが相談しにくく、周囲がその変化に気づきにくい環境が一因とされています。また、深刻化する前に支援につなげる体制づくりも十分とはいえません。

「昭和55年から令和6年にかけての小学生・中学生・高校生の自殺者数の推移を示す折れ線グラフ(警察庁データ、厚生労働省作成)。合計は近年急増し、令和6年には529人と過去最多水準。高校生351人、中学生163人、小学生15人。昭和61年の401人というピーク後に減少したが、令和以降に再び増加傾向が顕著。」
小・中・高校生の年間自殺者数は新型コロナが拡大した2020年以降、急激に増えている。データ引用元:厚生労働省自殺対策推進室警察庁生活安全局生活安全企画課「令和6年中における自殺の状況」(外部リンク/PDF)

これから求められるのは、子どもが安心して気持ちを打ち明けられる場を広げること。学校や家庭、地域が協力し、気づいた人がすぐに声をかけられる環境整備が重要といえるでしょう。

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児童虐待

「児童虐待」とは、親や親に代わる保護者、養育者、そのほか子どもに関わる大人が子どもの心身を傷つけ、健全な成長や発達を妨げる行為を指します。例えば、暴力をふるう、怒鳴る、食事を与えず放置する(ネグレクト)などが児童虐待にあたります。

全国の児童相談所への虐待相談件数は年々増加し、2023年度には過去最多の約22万件が報告されました。

「平成2年度から令和5年度にかけての児童虐待相談対応件数の推移を示す折れ線グラフ。平成2年度の1,101件から令和5年度の225,509件へと約205倍に増加。特に平成20年代後半から急増が著しい。なお平成22年度は東日本大震災の影響により福島県を除いた集計値。」
2023年度の児童虐待相談対応件数は22万5,509件と過去最多に。データ引用元:こども家庭庁「令和5年度 児童相談所における児童虐待相談対応件数」(外部リンク/PDF)

その背景には家庭内だけの問題ではなく「貧困」や「孤立」といった社会的要因が深く関わっていると考えられています。また、家庭内の問題は表面化しづらく、子ども自身もなかなか助けを求めることができません。

そのような状況を改善するためには、身近な大人が子どもの小さな変化に気づき、必要に応じて専門機関へつなげることが重要。さらに、子どもが安心して相談できる環境づくりや、地域社会全体で子どもたちを見守り、支援する体制をつくることが求められています。

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教育現場の疲弊

「教育現場の疲弊」とは、学校の先生が過度な業務負担によって、心と体のゆとりを失ってしまう状態です。先生たちは授業の準備はもちろん、行事の計画や部活動の指導、保護者対応、事務作業など、多くの業務を担当しています。

その結果として残業が増え、長時間労働が日常化し、過重労働という深刻な問題を引き起こしています。文部科学省の調査では、1カ月に45時間以上の残業がある教師は20パーセントを超えています。

悩む教師

このような環境が続くと授業の質を保てなくなり、生徒一人一人に向き合う時間も減ってしまうでしょう。また、労働環境が悪いと教員不足や若い先生の離職につながり、学校運営自体が危うくなる可能性もあります。

今後は労働環境や待遇の改善とともに、業務の見直しや多様な人材の活用を進め、持続可能な教育現場を築いていくことが求められます。

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インクルーシブ教育

「インクルーシブ教育」とは、障害の有無や国籍、性的マイノリティー(※)などさまざまな違いを超えて、全ての子どもが同じ場で共に学ぶ環境を指します。幼い頃から多様な仲間と過ごすことで自分とは異なる個性や価値観を受け入れる心が育まれ、将来みんなで支え合い、誰もが活躍できる共生社会につながると期待されています。

さまざまな人々
インクルーシブ教育は、共生社会の実現に向けた基盤となる教育の考え方

ですが、日本では実践事例が少なく、インクルーシブ教育がまだ十分に進んでいるとはいえません。その要因には、周囲や保護者の理解をはじめ、専門の支援員や教員研修の不足、バリアフリー環境の未整備といった学校施設の問題などが挙げられます。

誰もが安心して学べる環境を整え、一人一人に応じた柔軟な支援を充実させるべく、今後は、教育現場だけでなく、自治体、医療・福祉機関などとも連携し、社会全体で取り組む必要があるでしょう。

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ヤングケアラー

「ヤングケアラー」とは、本来大人が担うべき家事、介護、家族の世話などを日常的に行っている子ども・若者のことです。晩婚化、核家族化、高齢化といった社会背景から、家族のケアを担う子ども・若者が増加しており、厚生労働省と文部科学省の調査では、中高生のおよそ17人に1人がヤングケアラー状態にあるとされています。

「ヤングケアラーの実態を紹介するインフォグラフィック。見出しは『意外と多い?中高生の約17人に1人がヤングケアラー』。
ヤングケアラーとは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこども・若者のこと。『お手伝い』との違いはその負担や責任の重さで、自分の時間を持てずに友人関係や学校生活、進路などに影響が出る場合がある。
イラストでは制服姿の中高生が17人並び、そのうち1人がピンク色でハイライトされることで『約17人に1人』という割合を視覚的に表現。下部には『クラスに1〜2人はいるかもしれないってことだね』という補足メッセージが添えられている。」
子どもへの過度な負担は、学校生活や進路選択に深刻な影響を及ぼす可能性がある。引用:こども家庭庁「ヤングケアラーって、実はけっこう身近なのかも」(外部リンク/PDF

こうした子どもたちは、自分の時間や学習機会が制限され、進路選択や人間関係にも影響が出ることがあります。しかし、家庭内の問題として捉えられがちで、周囲の理解不足も相まって、その実態は表面化しにくい状況です。2022年の法改正により、ヤングケアラー支援が法律に明記され、自治体やNPOなどによる実態調査や相談体制の整備といった支援の取り組みは進みつつありますが、必要な支援が全ての子どもに行き届いているとはいえません。

今後、社会全体でヤングケアラーを早期に発見し、適切な支援を行うとともに、子ども・若者たちが自分らしく生活できるよう、周囲の理解と協力体制を強化していくことが求められています。

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精神疾患の親を持つ子どもたちに本当に必要な支援とは?(別タブで開く)

子どもの権利を守る第三者機関「子どもオンブズマン」が目指す、子どもが声を上げやすい地域づくりとは?(別タブで開く)

連載【家族を看る10代】(別タブで開く)

[参考資料]

内閣府「令和3年 子供の生活状況調査の分析 報告書」(8ページ)(外部リンク/PDF)

文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」(8ページ)(外部リンク/PDF)

厚生労働省自殺対策推進室警察庁生活安全局生活安全企画課「令和6年中における自殺の状況」(16ページ)(外部リンク/PDF)

こども家庭庁「令和5年度 児童相談所における児童虐待相談対応件数」(2ページ)(外部リンク/PDF)

文部科学省「令和6年度 教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査【結果概要】」(4〜6ページ)(外部リンク/PDF)

こども家庭庁「ヤングケアラーって、実はけっこう身近なのかも」(外部リンク/PDF)

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